早朝の襲撃者
作成中のノベルゲームのシナリオを公開しています。
ピコン。
弘人「ん・・・・・・。なんだ?」
目覚まし時計よりも早くメッセージの通知音で目が覚めた。
時計は朝の6時半をちょうど示していた。ふつうにまだ眠い。
弘人「誰だよ・・・・・・。こんな朝早くから・・・・・・。」
ベットから目覚めたばかりの体を起こしブレインフォンを頭につける。
メッセージアプリのアイコンを見ると通知が12件も溜まっていた。
弘人「メッセージ起動」
アプリが起動し、心優のトーク画面に12の文字が貼り付いていた。
楽しみすぎて熱でも出したか?心優は遠足前に楽しみすぎて寝付けず熱を出して遠足に参加できなかったことが多々あった。心優はそういう子なのだ。今回も熱が出てしまったのか、可哀想にと思いながらメッセージを開いた。
心優「おはよー( ´ ▽ ` )楽しみすぎてもう起きちゃったー!(4時25分)」
弘人(なんとか寝付けたようだな。てか起きるのはえーよ。おばあちゃんかよ)
心優「お米ラテって名前だけで、もう幸せな気持ちになっちゃうよー( ´ ▽ ` )(4時30分)」
心優「楽しみだねー( ´ ▽ ` )人気で売り切れとかになっちゃわないかな!?(4時45分)」
心優「売り切れとか絶対悲しいよ!そわそわするー( ´ ▽ ` )(4時47分)」
心優「早く集合時間にならないかなー( ´ ▽ ` )(5時04分)」
心優「柏崎だけ時間がゆっくり流れてるとかじゃないよね!?(5時07分)」
心優はときどき一方的にメッセージを送ってくるときがある。
ちょっと前までは電話しかできなかったのにメッセージを送る方法を教えたら嬉しそう使い始めた。
やっぱりおばあちゃんだ・・・・・・。
心優「待っててもそわそわしちゃうから、おにぎり作ろっと!(5時10分)」
心優「おいしかったー( ´ ▽ ` )やっぱり塩おむすびは最高だねー。(5時30分)」
顔文字はもう少し教えてあげた方がいいかな。
( ´ ▽ ` )←こいつよく見たらすごいむかつく顔してるし。
心優「よーし!ちょっと早いけど弘人くんの家に向かうね!( ´ ▽ ` )(5時38分)」
弘人「え!?集合時間10時だよ!?」
現在の時刻は、午前6時36分。僕は慌てて残りのメッセージを確認する。
心優「ついたー!散歩してるサチコおばあちゃんにあって、おみかん貰っちゃった( ´ ▽ ` )(6時03分)」
心優「おみかんすっぱーい。旬までもうちょっとだねー( ´ ▽ ` )(6時12分)」
心優「弘人くん起きないかなー。まだちょっとだけ早かったかな?( ´ ▽ ` )(6時30分)」
僕は、メッセージを確認するや否や部屋のカーテンを開けた。
眩しい朝日が部屋に入り込み、それと同時に家の前で自転車に跨がっている少女が目に入った。
眠気が吹っ飛び、勢いよく窓を開けた。
弘人「いやはえーーよ!!」
その声に気づいた心優は、顔を上げ尻尾をぶんぶん振る子犬のように嬉しそうな表情をみせた。
心優「あ、弘人くんおはよー。来ちゃったー。」
弘人「来ちゃったのレベルがすごいよ。外寒いでしょ?中入りなよ。鍵開けるからさ。」
心優「え?いいの?えへへ。じゃあお邪魔します。」
そういって心優は自転車から降り家の中に入ってきた。
弘人の母「あらー。心優ちゃんおはよう。」
心優「おはようございます。朝早くからお邪魔しちゃってごめんなさい。」
弘人の母「いいのよー。こうでもしないと弘人起きないんだから。ねー?」
母親がニヤニヤしながらこちらに話を振ってくる。実家なのに居心地が悪い。
曖昧な返事をして心優を部屋に連れて行こうとしたが、女同士の会話はこれくらいじゃ止まらない。
弘人の母「心優ちゃん朝ご飯食べた?よかったら食べていかない?」
心優「え?いいんですか?でも悪いですよー。」
弘人の母「いいのよいいのよ。大勢で食べた方が楽しいじゃない。」
心優「じゃあお言葉に甘えて・・・・・・。あ、私お手伝いしますね!」
弘人の母「本当?助かるわー。」
僕の意見など介入する余地もない会話のキャッチボールに、ただただ見ていることしかできなかった。
抵抗するのも体力がいるので大人しく顔を洗って着替えることにした。
心優「おいしかったー。」
心優は塩おむすびとみかんを食べたことなど忘れたかのような食べっぷりで朝ご飯を平らげた。
弘人の母「心優ちゃんは本当においしそうに食べてくれるわねー。もうおばちゃん心優ちゃんのこと大好き。」
心優「ありがとうございます。だって弘人くんのお母さんのご飯本当においしいんだもん。」
弘人の母「あらまぁ!心優ちゃんはいい子ね-。弘人のお嫁さんになってくれないから。ねー?」
弘人「うるさいなー。」
味噌汁をズズズと飲みながら心優の顔を伺う。
心優は黙って髪を触っている。どっちなんだ!その反応はどっちなんだ!
心優「あ、私お皿洗いますね!」
そういうと心優はそそくさと食器を流し台に運んだ。
弘人の母「そんな気を使わなくていいからね。」
心優「はい!大丈夫です。家でいつもやっているので。」
そう言って心優は黙って自分のご飯が盛られていたお皿を黙々と洗い始めた。
シンクに流れる水の音を聞きながら僕は朝ご飯を平らげた。
心優の背中は心なしか嬉しそうな表情をしていたように僕は思えた。




