着せ替えアプリ:FuliR
作成中のノベルゲームのシナリオを公開中です。
今日はもうすぐ開催されるリア充御用達学校イベント"文化祭"の出し物を決めるため、貴重な勉学の時間を削ってクラス会が開かれている。まぁ別に存分に削ってもらってかまわないんだけどね。
いつも教師が偉そうにふんぞり返っている教壇には文化祭実行委員のクラスメイトがふんぞり返っている。
教壇には人を偉くなった気にさせる魔力でもあるのだろうか。
陽キャが突飛な意見を繰り出しては実行委員がそれを却下しひと笑い。以下無限ループ。
陰のものはその無意味な議論を黙って見届ける。決まった出し物を主に運営するのはこちら側なので実行委員にすべてを委ねている。
僕はもちろんそんな無意味な話し合いには参加せず、窓の外の雲を見つめながら心でツバサちゃんの「空へ・・・・・・」のサビの部分をリピートさせていた。
実行委員「他に意見ありませんか?」
黒板には、喫茶店やおばけ屋敷などド定番なものだけが残っている。
まぁこんなものでしょ。アイドル喫茶なんて口が裂けても言えないもんね。
周りを見渡しても、もうそれのどれかでいいだろうと話し合いに飽きている奴や、そもそも寝ている奴までいる。
そんな中、ふと視線を感じて目をやると前の方の席で村越がこちらに熱いアイコンタクトを送っていた。
嫌な予感がする。
予感はすぐに的中しスッと村越が立ち上がった。
村越「あまぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!
急な奇声に静まりかえる教室。こいつの心臓はまじで雑木林並に毛が生い茂っていると思う。
村越「あまい!甘すぎますぞ!級友の皆々様!そうは思いませぬか?ね?近澤くん!」
あ、こいつ殺す。
村越「よく考えてください。喫茶店やお化け屋敷。文化祭の鉄板で非常に良いと思います。しかし!それでは他クラスとの差別化ができておらずお客様はひとっこひとり入って来やしませんぞ!メイド喫茶やお見合い喫茶などアニメやゲームでさえひとひねり入れてきているのです。我々だってひとひねりを加えましょうぞ!」
みんなが勢いに押されて演説に耳を傾けている。こいつ政治家の才能でもあるんじゃないか?
実行委員「じゃ、じゃあ何を加えればいいの?」
村越「よくぞ聞いてくださいました。今は2035年。我々にはテクノロジーという翼があります。パイン様!ちょっと立ってください!」
心優「は、はい!!」
呼ばれると思っていなかった心優は、急に名前を呼ばれて反射的に立ってしまった。
てかパイン様でいいのかお前は・・・・・・。
村越「メイド喫茶やコスプレ喫茶。定番ではございますが、現実ではあまり見ることはありません。な・ぜ・な・ら!衣装代や制作費用などの壁が高く学生の身分では手が届かないからです!」
気がつくと村越は、スティーブジョブズのように教壇の前で行ったり来たりを繰り返し身振り手振りでスピーチをしていた。
村越「しかし!私が独自に開発したこのFuliRというアプリを使うと壁などなくなるのです!皆様、ナーブフォンの読み取り機能の準備を!」
そういって村越は、心優を見つめ指を鳴らす。
僕を含めクラスメイトは、ナーブフォンを操作しQRコードなどを読み取るモードへと切り替えた。
その瞬間、心優がまとっていた制服が一瞬でメイド服へと姿を変えた。
クラスメイト「おぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
村越「このアプリは、半径5メートルの範囲で物質に情報QRコードを埋め込み共有できる。これを使えば、衣装の心配などありません。お客様に読み取りモードにしてもらうだけです!いかがですか!これぞ"バーチャル喫茶"!!」
クラスメイト「うぉぉぉぉぉぉ!!むっらこし!!むっらこし!!」
クラス全員がスタンディングオベーション。
無論クラスの出し物はバーチャル喫茶に決定した。
ただ心優は何が起きたのかまったく分かっておらず、おどおどしていた。
パソコンには強いとは思っていたがここまでできるとは。村越恐ろしい子。




