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大岡裁き

作成中のノベルゲームのシナリオを公開中です。

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・


心優「ひどいよ弘人くん!あんな変の見せるなんて!」

弘人「ごめんごめん。なんか機械がバグっちゃったみたいでさ。」


人通りの少ない帰り道に心優の悲痛な叫びが響く。


心優「もぉー。でもあんなことになるなんて最新技術も趣味が悪いよ。」

村越「趣味が・・・・・・悪い・・・・・・。」

弘人「まぁーまぁー。気を取り直してまた明日から張り切っていこうよ。」


あからさまに落ち込む村越の肩を押して三人で下校した。



弘人「ただいまー。」


ピコン


弘人「ピーチくんか。」

ピーチくん「ひどいよひろぽん。未読スルーはマナー違反だよ?」

弘人「ごめんごめん。でもスクショ爆撃するとか言われたら誰も見れなくない?」

ピーチくん「たしかにそうだけどさー。ってかもう買った?すごく良くなかった?」

弘人「記事は読んだけど、まだ買ってないんだ。晩ご飯食べたらコンビニに買いに行くよ。また連絡する。」


そう言って僕は、リビングに降りて母が作ってくれている晩ご飯を貪った。毎日本当に感謝です。


弘人「さて、行くか。」


後輪止めを足で蹴り上げ、自転車に跨がる。

最寄りのコンビニには歩いてでも行けるけど、コンビニには少しこだわりがある。


弘人「よし。着いた。」


現在都市部のコンビニでは無人化が進んでいる。

ブレインフォンで専用アプリを起動して店内に入り、商品を持って店を出るだけで決算が終了する、とてもハイテクなコンビニである。

東京では70%のコンビニが無人化されているが、ここ柏崎ではここの一店舗だけである。

地域格差とはまさにこのことだと体現しているようなものだ。


弘人「アプリ起動」


颯爽と入店し僕は一目散に書籍売り場の方へ向かった。

ソライロツバサちゃんが載っている「アイドル・ザ・ベスト」の表紙はすでに予習済みだ。


弘人「(あった!)」


週刊誌さえもデータで販売されている時代に製本版の在庫は、あまり置いていない。

最後の1個となっている「アイドル・ザ・ベスト」に照準を定め、獲物を捕らえる鷹のスピードのごとく本へと手を伸ばした。


ガシッ

弘人「え?」

見知らぬ女性「え?」


まったく同じタイミングで二人の手が「アイドル・ザ・ベスト」を掴んだ。

いつもであればお譲りするところではあるが、これはソライロツバサちゃんが載っている本。否、ソライロツバサちゃんだと言っても過言ではない。絶対に渡すわけにはいかない。

無言のまま少し自分の方に本を寄せてみる。


弘人「・・・。」グイッ

見知らぬ女性「!?」


女性は一瞬驚いた顔を見せたが、負けじと自分の方に本を引っ張る。


グイッ

弘人「ちょっ!」

グイッ

グイッ

グイッ


それからはシーソーゲーム。一進一退の攻防戦。僕は分かる。これは退いた方が負けだ。

ちょうど二人の中間の位置に本が静止した頃、お互いに口を開き始めた。


見知らぬ女性「本が破れちゃうんで、手を離してもらえませんかぁ?」

弘人「それならそっちが離したらどうですかぁ?」

見知らぬ女性「私の方が早かったですよね?」

弘人「いーや僕の方だね。」

二人「むむむむむ・・・・・・。」


こっちは男で向こうは女。

無理矢理力尽くでやれば奪えるのだけれど、それはなんか自分のルールに反する気がした。

そもそも力で立場が上だってことを誇示する人種は大っ嫌いだしそんな人間になりたくない。

でも・・・・・・。ルールは破るためにあるんだもんね!!


見知らぬ女性「!!」


見知らぬ女性は、一瞬にして僕の本を持つ手に力が入ったことに気がついた。その時、


見知らぬ女性「大岡裁き!!!」

弘人「・・・・・・へ?」

見知らぬ女性「大岡裁きって知ってますか?」

弘人「あの子供を奪い合って手を引っ張り合ったってやつ?」

見知らぬ女性「そう。本当の母親なら子供が痛がる素振りを見て手を離すはずだって。ツバサのファンですよね?ツバサを離してあげてください。泣いてますよ?」

弘人「!?」


動揺して手の力が一瞬緩んだところを見逃さなかった女性は、そのまま一気に本を引き抜いた。


弘人「しまった!!」


本を確保した女性は一気に出口まで走り出した。


弘人「待て!!そんなのずるいぞ!!」


本を抱えた女性を必死に追いかける。ラグビー選手ってこんな気持ちなのかな?

出口から出さえしなければまだ逆転の手はあるはずだ。

しかし出口まで数メートル。僕の方が足が速くたってそう距離が縮まるはずもなく、手を伸ばしたがあと一歩のところで女性は出口を出てしまった。無機質な ありがとうございました が店内に響き渡る。

そして女性は振り返り一言。


見知らぬ女性「ばーーか。」


僕は、出口で膝をつき悔しさのあまりうずくまる。

店内に響き渡るエンドレス ありがとうございました が悲惨さを倍増させていた・・・・・・。


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