ボンボル品評会Ⅲ③
作成中のノベルゲームのシナリオを公開しています。
心優「The お米 だよ!!!」
弘人&村越「The お米ぇぇぇぇぇぇぇ!?」
とうとうボンボルの野郎やりやがった!
お米を使ったお菓子とかじゃなくて、本物のお米を販売しやがった!
もうここまできたら本格的なお米農家の乗っ取り疑惑が浮上する。
村越よ、いますぐ会社を確認しに行ったほうがいいぞ。
まぁもう既に本社ビルの3階くらいまで田んぼになってるだろうけど。
村越「あぁぁ……、お、おこめ……。」
心優「お米じゃなくてTheお米だよ! レジでチンしてもらっちゃったー。ホカホカー。」
心優は、村越の動揺などお構いなしにこれでもかとお茶碗を持ってはしゃいでいる。
晩御飯前にお菓子ではなく、お米を買い食いする女子高生がこの世に存在するとは。
まぁ満足そうなので良しとしよう。
村越「ふふ……お米……。ホカホカ……、チン……チン……。」
それよりも今回ばかりは村越のフォローに回らないと本格的にまずそうだ。
村越は、虚ろな目で口をパクパクさせながらゾンビのようにのそのそと動き回っている。
このまま放置していたら禁止用語を何度も繰り返しかねない。
弘人「そうだ!村越!ツバサちゃんの新曲最高によかったよね!」
村越「ツバサチン……?ホカホカ……?」
弘人「そうそう!ツバサちゃん!」
村越「ツバサチンのお米……?ホカホカなり……?ドゥフフ……。」
弘人「だめだ。頭おかしくなりそう。」
心優「んん~~~~~♡」
弘人「!?」
セクハラゾンビの相手をしていたら、うしろから心優の悶絶声が響き渡る。
なんちゅう声出してんだよ!ここ野外ですが!?
弘人「ちょっと心優!なんて声出してんのさ!」
心優「え?だってこのお米、すごく美味しいんだもん!!」
心優家の食卓が心配になってきた。
両親ともに食事中は悶絶声が響き渡っているのか?
実家がお米農家だから、新米が食卓に並ぶ時期もあるんじゃないのか?
まぁでも学校のお昼休みでは出ていないから、美味しさに一定の水準があるのだろう。
その水準を超えると悶絶声がでる仕組みになっているのかもしれない。
って冷静に分析している場合じゃない。
心優「弘人くんも食べてみて。はい。」
弘人「え!?あ、あーん。うま!!」
新婚さんのような掛け合いに最初はドギマギしていたが、お米を口に入れた瞬間にそんな浮ついた気持ちがどこかへ飛んで行ってしまった。
うまい。うますぎる。
これは心優が唸るの頷ける。
大地のすべて吸い込んだ、まさにジャパニーズお米!
旨味甘味はもちろんのこと、噛むごとにじわりじわりと溶けだすお米のスープ。
このお米をおかずに何杯でもご飯が食べられる勢い。
食べずに批判していた自分を殴ってやりたい気分だ。
村越「ホカホカ……。」
お米の良い匂いと湯気に誘われたセクハラゾンビがこちらへ向かってくる。
もしやこの美味しさがあれば、目覚めさせることができるかもしれない。
弘人「心優!ちょっと借りるよ!」
心優「あぁー。ちょっとだけだよー。」
弘人「村越!くらえ!」
心優からTheお米を受け取り、村越の口へと放り込む。
ゾンビは基本敵に口を開けたままなので、簡単に口の中へエントリーすることができた。
村越「むむ!?」
弘人「どうだ!これがボンボルのTheお米だ!」
村越「むむむむ!?こ、これは!?」
村越の目から徐々に正気が戻ってくるのがわかった。
それどころか、目がどんどん潤いを帯びていく。今にもその水は目からこぼれ落ちそうだ。
村越「うぅぅぅ……。おいしい……。おいしいですぞ……。」
弘人「まじかよ……。」
おいしさのあまり村越は泣いてしまった。
確かに僕も食べる前と後のギャップの激しさに自分の頬を殴りそうにはなったけど、泣くほどではなかった。
僕の周りには、美味しいものを食べた時のリアクションが激しい奴が多すぎる。
それとも僕が異端児なのか?
気が付くと心優は僕からTheお米を取り返して一人でもくもくと食事をしていた。
いや、そこまでいくと怖いから。
村越「うぅ……。この美味しさを父上へ報告してまいります……。」
弘人「いや、まだ仕事中でしょ?」
村越「関係ござらんでしょーが!!感動は人に伝えてなんぼでしょうが!?」
弘人「あ、さいですか。」
村越「うぉぉぉぉん!!父上ぇぇぇ!!僕が悪かったよぉぉぉぉん!!」
流星のように、しかし信号はしっかりと守って走り去る友達を、僕はただただ無言で見送った。
見えなくなったころに心優の方を確認すると、ちょうど完食したところだった。
心優「えへへー。完食!」
弘人「えらいねー。」
お茶碗を両手で持って中身を印籠のように見せつけてくれた。
さすがお米農家の娘、米粒ひとつ残さずの完璧なフィニッシュです。
心優からお茶碗とお箸を受け取り、コンビニのゴミ箱に捨てる。
色々なことがあったからかなんだか疲れてしまった。
でもそのおかげで、朝のぎこちない空気はすっかり消え去っていた。
このままいつも通りに過ごせればそれでいい。
心優「弘人くん。ありがとうね。」
弘人「え?なにが?」
心優「私がお店から出てきたときに、受け止めてくれて。」
弘人「あ、あー。全然いいんだよ。そんなこと。」
心優を抱きしめたときの感触が身体に蘇ってくる。
心優「えへへ。弘人くんは優しいね。」
僕の目を見て少し照れくさそうに、でも笑顔で心優は感謝を述べた。
ドキッという音が僕の身体の奥から鳴ったのが分かった。
心優に聞こえていなかっただろうか?
聞かれてたら恥ずかしすぎる。
心優もあんな顔するのか。
心優を意識し始めてから、僕の知らない心優の顔がどんどん出てくる。
いや、僕が気付かなかっただけかもしれない。近くにいすぎていたから。
心優「弘人くん。またね。」
家まで心優を送って、自分の家へと帰って行った。




