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進路ー僕たちの歩む道ー

作成中のノベルゲームのシナリオを公開しています。

担任「お前らも、もうすぐ3年だ。今週の文化祭が終わったら進路について面談を行う。しっかりと考えておくように。以上。」


進路という言葉の武器を装備した教師は、ここまで強く見えるものなのだろうか?

別に担任の先生が僕たちの進路を握っているわけではないのに、どうにも脅されているようにしか感じない。


ツバサちゃんについて語り合おうと言っていた矢先、親と語りつくさなければならない議題を叩きつけられてしまった。


村越は会社を継ぐためにレベルの高い大学に行って拍をつけるように言われているらしい。

あいつの学力であればそこそこの大学へはいけると思うのだが、まだまだ勉強が足りないと言っていた。


僕だってなにもきまっていない。

漠然と東京の大学に行きたい、と思っているだけで親にもまだ話していない。

これで本当に大丈夫なのだろうか?


村越「きょ、きょうのところは帰りますか?」

弘人「そうだね。ツバサちゃん談義はひとまず延期で。」

心優「じゃあ一緒に帰ろー。」


村越は、ツバサちゃんに集中するために親と話し合ってくると寄り道せずに帰って行った。

家の方向が同じ僕と心優は2人で帰ることとなった。



……

………


心優「金曜日は文化祭だねー。バーチャル喫茶うまくいくといいね。」


先を歩く心優が振り返る。

夕陽に暮れる田んぼ道に心優の笑顔だけが咲いている。

あんな話を先生からされたばかりなのに、こんな笑顔が出来る心優はやっぱりすごい。


弘人「心優は将来のこととか不安じゃないの?」

心優「将来のこと?そうだねー。」


心優は少し考えてさっきよりも一段階明るい笑顔を見せた。


心優「私はお米を作るんだ!みんながおいしいって言ってくれるすごいお米!」

弘人「ははは。やっぱりね。」


そういえば心優の実家はお米農家をしていた。

よく休日は親の手伝いで田んぼの中に入っていたと話していたな。

おそらく家業を継ぐということだろう。


弘人「大学とかはいかないの?」

心優「大学かー。あまり考えてないかなー?弘人くんは?」

弘人「僕は……。」


心優とは将来のことについて話したことなんて一度もなかった。

小さい頃からずっと一緒で家族のような存在だったから、そういう話をするのが妙に照れくさかったのかもしれない。


弘人「僕は……、東京の大学に行こうと思ってる。」

心優「え……?東京の大学……?」

弘人「うん……。」


そう言ってから僕も心優も黙ってしまった。

心優は新潟で実家の家業を継ぎ、僕は東京の大学へ行く。

そうなれば二人は離れ離れになってしまう。


前に進む二人の足音だけが夕暮れに響いている。


いつかは言わなければいけないと思っていた。

幼馴染だからずっと一緒にいたし、これからもずっと一緒にいるような気がしていた。

でも二人が目指している場所は、あまりにも別々で遠くにあったのだ。


出来ることなら心優と離れたくない。


そんな気持ちが段々と大きくなっていくのを感じた。

離れたくない気持ちがどんどん胸の中で膨らみ、今にも口から零れてしまいそうになる。

口を閉じて、その気持ちを飲みこむため歯を食いしばる。


でも一度膨らみ出した気持ちは、萎むことはない。


この気持ちを吐き出してしまったらどうなるんだろう。

心優にぶつけたらどうなるんだろう。

楽になるのかな?困らせてしまうのかな?答えてくれるのかな?


考えを巡らせながら歩いていると、とうとう沈黙のまま心優の家の前についてしまった。

僕たちは、お互いに伏し目がちでばつが悪くその場で立ち止まってしまった。

このままの空気を明日に引きずりたくない。


弘人「あのさ、実は僕――。」

心優「すごいね!」


言葉と同時に突風が吹き通る。

心優は驚き、髪の毛とスカートを必死に抑えていた。

その仕草に気持ちがあふれ出しそうになる。


心優「弘人くんはすごいよ!夢があって!私は応援するよ?」

弘人「う、うん。ありがとう。」

心優「それじゃあまた明日。おやすみ!」


心優はそう言い残すと、急いで玄関へと逃げていった。

その後姿は少し寂しそうに見えた。


僕は、さっきなんて言おうとしていたんだろう。

実は僕……。

急に口から出てきた言葉に呆然としてしまった。

明日は今日のことを引っ張らないで普通に接しよう。

そう決心し、僕は一人で家に帰った。

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