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決戦日②

作成中のノベルゲームのシナリオを公開しています。

弘人「ごめんね。いま忙しいからまた今度話してよ。」


僕は呼び止められていた入口付近からスナック売場へと足を向かわせようとした。


ギュッ


弘人「ん!!?」


彼女は、そそくさと行ってしまおうとした僕の裾をギュっと握ってきた。


弘人「ちょ、ちょ、ちょっとこれはどういう状況!?」


裾を掴まれたことなんて心優にすらなかったから少し、いやかなり動揺してしまう。

裾を掴むってこれ、カップル同士がやるイチャコラなやつじゃないの!?

いや、まだ僕たち出会って何回しか会ったことないし、ていうか僕には心優が!


未可「たすけて……。」

弘人「へ?」

未可「ストーカーに追われてるの……。たすけて……。」


そういうと彼女はキレイな瞳からポツポツと涙を流した。

目の前で女の子が泣くのを見るのは心にくる。

さっきまで惚けていた自分を殴ってやりたい。


弘人「わかった。だから泣かないで。ゆっくりでいいから状況を教えて。」


店内には僕たち二人以外に客がいなかったのがよかった。

あの泣いている人をみる奇異の目は耐えられない。

ゆっくりと彼女をなだめて状況を説明してもらう。

彼女は少し前から外に出ると人の視線を感じることがあったそらしい。

最近はその頻度が高くなり、今日ついに尾行してくる人を目視したそうだ。

そして、そいつは今もなおこっちを見ている。

書籍コーナーのガラスから覗くと、確かに電信柱の影からトレンチコートを着た人物がこちらを伺っている。

ニット帽にサングラスとトレンチコートという怪しい三種の神器を身に纏ったあきらかに怪しい輩。


弘人「警察に連絡した方がいいよ。」

未可「それは嫌……。あまり目立ちたくないの……。」

弘人「それじゃあ、親に連絡するとかさ。」

未可「親は離婚してていない……。」

弘人「そうなんだ。ごめん……。」


他に頼ることができないこの状況。

監視カメラがあるここで襲う行為は証拠を残すことになるので奴はしないだろう。

しかし、いつまでもここに居るわけにはいかない。

こうしている間にも彼女の精神は少しずつ磨耗していっている。

奴はこの状況を楽しいでいるのか?絶対に許せない。

僕は彼女の肩に手をやる。


弘人「よし。家まで走れる?」

未可「え!?」

弘人「大丈夫。途中で追い付かれそうになったら僕が囮になるから。」

未可「で、でも家は……。」

弘人「こういうのは勢いだよ。合図したら走って。いくよ。3。2。1。」

未可「ちょ、ちょっと!家はマズくて……、」

弘人「Go!!!」


彼女が何かを言いかけていたが、問答無用に作戦を開始する。

諦めたのか、彼女は勢いよく店の外へと飛び出した。

僕は、ホット飲料什器から缶コーヒーを数個手に取り自動会計を済ませ後を追う。

電信柱の奴は、彼女を追うように動き始めた。


弘人「これでもくらえ!!」


缶コーヒーの封を切り、それを奴めがけて投げつける。

回転運動をしながら飛ぶ缶と、それに連動して円形に飛び散るあつあつのコーヒー。


ストーカー「!?」


トレンチコートには熱々のコーヒーがかかり、顔面には缶が炸裂する。

ストーカーは、思わぬ攻撃にたじろぎ、転倒する。

彼女は僕の叫び声に驚きこちらを気にして振り向く。


弘人「気にせず走れ!!」


ストーカーが倒れたのを確認し、僕も彼女を後を追う。

何度か後ろを確認しながら走っていたが、ストーカーの姿は見られなかった。

どうやら諦めたようだ。


……

………


未可「はぁ……はぁ……。」

弘人「はぁ……はぁ……、なんとかまいたみたいだね。」


彼女の案内でマンションの前までなんとか到着できた。

ここまで来ればもう大丈夫だろう。それにしても柏崎にこんな高いマンションがあったんだな。

あきらかにここ一体で一番家賃の高そうなマンションだ。

オートロックになっており、エントランスまであるじゃないか。

広さに驚いていたらふとエントランスの壁についている時計に目がいった。

18時50分!?やばいじゃん!


弘人「それじゃあ、僕帰るね。」

未可「え……?」

弘人「だって家はまずいんでしょ?そこまで厚かましくないから安心して。」

未可「んーー……。」

弘人「いやいやほんと大丈夫だって!お構いなく!はやく帰らないとツバサちゃんの生放送が始まっちゃうので!逆に帰らせてください!」

未可「え!!?」


彼女も同じようにエントランスの時計を見て、驚愕する。

彼女もNEXTsにうつつを抜かしていない同士であることがわかって少しホッとする。


未可「やばっ!!もう時間ないじゃん!!」

弘人「でしょ!?だから僕も速攻で帰りますんで!!それでは!!」


ガシッ


この感触はさっきと同じであって同じでない。

1日に裾を2回も掴まれたオタクがいたでしょうか?

でもさっきの弱々しい掴み方とはまったく違い、力強い意思を持った掴み方だ。


未可「1番いい場所で見せてあげるわよ。」


彼女は覚悟を決めたような不適な笑みを僕に向けて、より一層裾を掴む力を強めた。

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