購買部サバイバー
作成中のノベルゲームのシナリオを公開しています。
購買部。それは飢えた学生たちを受け入れてくれるいわばオアシス。
しかし人々を癒す水は無限にあるわけではなく、すべての人を癒せるわけではない。
古代から人々は心を満たしてくれるものを求め奪い合い、戦ってきたのだ。
殴る蹴るは当たり前のルール無用な戦場でもあるのだ。
生徒達「うおぉぉぉぉぉぉ!!!!」
弘人「おーおー。やってるやってる。」
お金を片手に持ち、もう片方の手で人を押し退ける。足を踏まれるなんてことは日常茶飯事。
床には小銭が散乱しており、一説ではこのお金を拾い続けて海外旅行に行った先輩がいたとかいないとか。もちろん今もそういった外道行為を行う者もおり、そいつらは「床を舐める者」と呼ばれ忌み嫌われている。戦場で戦う意志のないものは邪魔でしかないからね。
生徒A「焼きそばパン完売!!繰り返す!焼きそばパン完売!!」
生徒B「ちっ!やはり1番人気はなくなるのが早い!」
生徒C「いやしかし、普段であればもっと早くになくなっているはずだ。今日はいけるぞ!」
戦場に一人で赴くのは危険行為だ。あの人たちのように「友達同盟」を組んで購入目標に限りなく近づけようという者もいる。
でも僕は、焦らない。言っとくが僕はソロだ。ソロで戦場を確実に生き残るには、2つ方法がある。
1つめは、最強になること。それには向かい来る敵をすべて凪ぎ払い確実にお金を握りしめられる腕力と握力、何者からの押し込みにも耐えられる脚力が必要だ。
2つめは、競争を避けること。人気のない食料には人はあまり集まらない。
僕は常に2つめを選択している。しかし決してこれは弱者の選択ではない。
何故なら僕はそれが1番好きだからだ。いや人気ナンバー1の焼きそばパンよりもおいしいと自負している。
皆がそのネーミングとパッケージから敬遠しているだけだ。
さて、そろそろ僕も戦場に向かうか。人気がないとはいえ、数には限りがあるのだ。
130円ぴったりを右手に握り混み、僕は激戦区より少し左に逸れたいつもの場所へ足を運んだ。
弘人「いつものください。」
スッと右手を開き130円を差し出す。僕ぐらいになると”いつもの”で通じてしまうのだ。
さぁ。あとはゆっくり教室に戻っていつもの味を楽しもうじゃないか。
”おばあちゃんのこんにゃくサンド”を!!!
購買のおばさん「あーごめんねー。今日はもう売り切れちゃったのよ。」
弘人「えぇぇぇぇぇぇぇ!?あのおばあちゃんのこんにゃくサンドだよ!?パッケージで笑ってるこのおばあちゃん誰だよで有名なあれだよ!?」
購買のおばさん「そうなのよー。はい次の人ー。」
嘘だろ……。
売り切れだなんてありえない。放課後になっても売れ残っているような商品なのに何故……。
もしやおばあちゃんの身になにか不幸でもあったのか?
毎日パッケージで会っていただけあって目を閉じるだけでおばあちゃんの笑顔が浮かんでくる。
そうか、昨日袋を開けるときに顔を裂いてしまったのがいけなかったのか……。
ごめんよおばあちゃん……。僕は失意のまま腹を空かせて教室に戻ることにした。




