表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
憑依  作者: xitang
1/4

1

 三四郎は看病をやめて、庭へ出た。家の方を見廻すと、両側に細い路がある。そのうちの右側の路を選び、孟宗藪のすぐ横を通り家の裏手へまわると、土手上の路へと出た。


 下には汽車路があり、土手沿いに左右へと延びている。左へ曲がると先ほどの大久保の停車場へ着く。三四郎はもう一つの孟宗藪の路を選び、汽車道沿いに路を歩く。まだ宵の口で、空に浮いている雲が赤い。その時近くで誰か、


「ああああ、もう少しの間だ」


と云う声がした。方角は少し先の土手下の様であり、視線を向けると若い女が汽車道上に座っている。三四郎は気味が悪くなった。


 ところへ又汽車が遠くから響いて来た。三四郎はその女に声をかけたが、一向に返事はない。聞こえていないだけなのか、聞こえていても返事をしないだけなのか、三四郎にはわからなかった。女と汽車までの距離はまだある。三四郎は急いで土手下の女のもとへ坂を下り向かう。


 然し、思いのほかに急な坂であったため足が滑り転がり、そのまま鉄軌へ落ちる。その先にちょうど女がいたため勢いよくぶつかり、女は鉄軌の外に投げ出された。三四郎は女の無事を確認するために起き上がろうとしたが、身体に力が入らない。


 次の瞬間には体に激しい痛みを感じ、宙へと飛んだ。下の方を見ると女と汽車、それと血に染まった見慣れた服装がある。それが何かを思い出そうとするが、急に寒さを感じ意識が遠くなる。そして、着地する前に深い眠りについた。三四郎は死んだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ