第5話 3匹の猫と妹の想い②
スーパーマーケットでの買い物を済ませ、再び帰路についた。
家は学校からかなり離れており、自転車で1時間ほどかかってしまう。
父親が住宅地から離れたなるべく自然がある場所と駄々をこねたからだ。
しかも、距離があるだけならまだましだが小さな丘の上にあるため、けっこうな傾斜の山道を永遠と登らなければならない。
スズにとっては大変であるので電動自転車を買い与えている。
また、この山道には民家がなく夜間は暗く危ないため、スズの帰りが遅くなる際は俺がふもとまで迎えに行く事にしている。
バドミントン部に所属しているスズは県大会が近いとのことで最近は遅くまで部活に励んでおり、夕飯を作り終わったらスズを迎えに行く事が日課になっていた。
気づけば、ロードレーサーのクライマー並みの立派な筋肉が足についていた。
山道はスーパーマーケットの目の前から始まっている。
夕飯と明日の朝食分の食料を自転車のカゴに入れたら、俺は気合を入れて山道を登り始めた。
しばらく自転車を漕ぐと、見慣れた公園が見えてくる。
山道の中間地点には公園がぽつりとあり、大抵だれもいない。
ふもとにも公園があるため、だれもここまで登ってきて遊ぼうとは思わないのだ。
遊具も特に珍しいものは無く、ブランコと滑り台ぐらいである。
引越してから当初はこの山道に苦戦していたため、この公園でよく休んでいた。
1ヶ月もしたら足が鍛えられたようで、一度も休まず家まで辿り着けるようになっていた。
しかし、今日はフルーツポンチの材料を買い込みすぎたのか自転車のペダルが重く、無理せず公園で休むことにした。
久しぶりだが、公園は以前と変わった様子はなく、やはり誰も遊んではいない。
「誰もこんなところに遊びにこないよな。」
だが、それが好ましくも思っている。
人気のない静かな公園というのは、なんだか癒されるのだ。
公園のベンチに腰掛け空を眺めながら1日を振り返り、今朝の件を思い出す。
「柳原さんに悪いことしちゃってたな。」
友達になりたい。
他人からそんなことを言われたのはマサ以外で初めてだった。
だが、学校が始まって1ヶ月たつが、彼女の好意に気づけなかった自分が情けない。
「明日はちゃんと挨拶しよう。まずはそこからだ!」
誰もいない公園で1人気合を入れて、明日の目標を口にした。
「にゃ〜」
「ひっ!!」
そんな無防備な状態の中で、どこからか猫の鳴き声が聞こえてきた。