第4話 3匹の猫と妹の想い①
『キーンコーンカーンコーン』
チャイムの音色が学校の終了を生徒たちに知らせ、帰路につく者、部活のためにグラウンドへ移動する者が校舎から各々の目的地へと散っていく。
俺は前者であり帰宅部だ。
いつものようにスーパーマーケットで夕食と明日の朝食を買い込み帰路につく。
この時間が1日で最も楽しい時間なのだ。
自分が作った料理を食べるスズの顔を想像しながら、あれやこれやと食材を選ぶのが楽しくて仕方がない。
そう、俺はシスコンなのだ。
何とでも言うといいさ。
ただし、いくらシスコンであるからといってスズの好き嫌いは許すつもりはない。
そこは俺も親代わりという意識があるのだろう。
心を鬼にしてピーマンをカゴに入れる。
だが、俺は決してピーマンを食べる食べないで喧嘩して鬼と化したスズの顔を見たいわけではなくスズの笑顔が見たいのだ。
必ず嫌いな食材だけではなくスズの大好きな食材も一緒に買うことを忘れない。
「今日はピーマンだから、これかな?」
苦味のあるピーマンに対し、頑張って食べたご褒美として甘いフルーツポンチの缶詰を選んだ。
食材ではなくデザートなのだが。
最近は食べる人も減ってきているフルーツポンチだが、スズはフルーツポンチが大好物だ。
引っ越してから間もなく、俺がフルーツポンチを作ってスズにご馳走した事がきっかけらしい。
祖父母が俺とスズを元気づけようと一緒にフルーツポンチを作ろうと誘ってくれた。
しかし、両親を失った直後のスズは俺以上に塞ぎ込んでいたため、部屋から出てきてはくれなかった。
結局、フルーツポンチは俺が作り、夕飯で部屋から出てきたスズにご馳走する事となった。
だが、そのフルーツポンチを食べたスズは急に泣き出し、俺の胸に飛び込んできた。
その時に聞いた「おいしい」が忘れられず、今でも俺はスズに料理を作り続けているのだ。
「缶詰なんて無粋だよな、材料買っていちから作ろう。」
俺は一度手に取ったフルーツポンチの缶詰を棚に戻し、せっせと材料をカゴに詰めていく。
しかし、いちから作るとなると材料費が思ったよりかかってしまい、会計時に缶詰にすればよかったかなとちょっと後悔したのであった。