スコッパーは原点を思い出す
今回はちょっと箸休め的な話。
私のスコップ歴は半年程度であるが、その原点は大学時代に遡ることができる。私は大学時代に、商業作品の方でたった一人、今の底辺作家さんのような境遇の作家さんを見つけてしまった。
その人はデビュー作こそ一定の評価を受けていたものの、その後の作品は鳴かず飛ばず。そのせいでデビュー作も入手困難となり、ミステリ小説のカルトなファンからはそれを激賞したミステリ作家の綾辻行人先生にならって幻のデビュー作などと呼ばれていた。しかし、私の知り合いにミステリ小説マニアが居てその小説を所有していたこと、そしてその幻のデビュー作というフレーズに興味をもったことが重なって、その作品を読むことになったのである。
その作品は、新潮社のファンタジーノベル大賞の最終選考まで残っていたという事実が示すように、ミステリというジャンルからはいささか外れていたように思う。ファンタジーぽさの残る青春小説というところか。しかし、私はその鮮烈な描写に深く感動した。この人の作品をもっと読みたい!そんな衝動が私の心の奥底から湧き上がり、想いだけにとどまらず、当時通っていた大学が京都だったため、市内の大型書店、あるいはお隣の大阪の大型書店にまで足を伸ばして探し歩くハメになった。今思えばもっと賢いやり方もあったような気がするが、当時の私にはそれが最良に思えたのである。まぁいずれにせよその結果として、どうにかデビュー作以降の作品もほぼ入手することができた。
そしてあるとき、デビュー作の復刊が決まったこと、ミステリ畑の新作を発表したこともあって、その人の作品をそんな探し回らずとも読む環境が整ったのである。
そこで私は、当時の文芸系のサークルの仲間に、この人がいかに素晴らしいかをレジュメを作って解説した。そのおかげで何人かはその人の作品に興味をもってくれるようになり、一定の評価を仲間内では確立することができた。
だが。
私にできたことはその程度で、以降もその作家さんは、ミステリファンからの評価を少しずつ獲得しながら地道に新作を発表するという状況が続くのであった。
デビュー作からその人の作品ほぼ全てに目を通していた私には、本当に残念でならなかった。しかし、「いつかもっと多くの人に評価されてほしい」そう思いながらも、社会人になったこともあって、私の中では次第にその作者さんに対する想いは薄れていくのだった。
そして月日は流れ。
ある年の本屋大賞に、その人の作品が選ばれたのである。その作品はミステリファンのために書いた作品ではなく、デビュー作の雰囲気を思い出させてるような青春小説だった。
その時の私は全く自分の手柄でも無いというのに「やったぜ!」という気持ちで一杯になった。自分のことのように嬉しいとは、正にこういう時に使う言葉であるに違いない。
なおその人は、その後も多くの賞を獲得し、今では日本を代表する人気作家になっている。
これが、私のスコッパーとしての原点である。
ちなみに、先ほどネットで検索してみると、10年以上ファンをやってるという人が、その作家さんの直木賞受賞を喜びオススメ作品を紹介するという記事が出てきた。そしてその人の推している1位は、私の中でも1位の作品だった。初期の売れなかった頃の作品であるにも関わらず。そう考えるとやはり、良作を書けば読んでもらえる、売れるなんてのは幻想ということなのだろう。
最後に。もし、このエッセイを読んでその作家さんに興味を持ったというのであれば、ネットで来歴やインタビュー記事を読んでみると良いかもしれない。私は読み手に過ぎないものの、それでもこの人の作品に向き合う姿勢は、とても共感を抱けるものだったからである。
本文では書いてなかったけど。その作家さんは恩田陸先生です。ということで、また次回からは、スコッパーとしての活動に焦点を当てた話に戻ります。ネタ切れになった訳じゃないです(汗)




