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死が二人を繋ぐまで

作者: まよ

それはいつもの帰り道。私は幼馴染みの悠と一緒に帰っていた。幼稚園の頃からいつも一緒。同じ小学校、同じ中学校に進学し、雨の日も風の日もいつも一緒に過ごしてきた。双子の姉妹かと間違われたこともあるくらいだ。そう、その日もいつもと同じ。私と悠は今日の学校での出来事を話しながら帰っていた。

「悠、また明日ね」

私がそう言うと、悠は笑顔で手を振った。その日の夜、悠は自殺をした。

私は救急車のサイレンの音で目が覚めた。悠の家の前に救急車が停まっている。悠に何かあったに違いない。パジャマのまま悠の家まで走った。しかし救急車は私が着く前に出発してしまった。

これは後で悠のお母さんから聞いたことだが、朝、お母さんが起こしに行ったら、そこには悠の変わり果てた姿があったそうだ。救急車を呼び、到着するまでの間、見様見真似の心肺蘇生法を試みたが、時すでに遅し。病院に到着するや、死亡が確認された。

何故、悠は自殺をしたのだろうか。悠の変化はどんなに小さくても見逃したことはなかった。宿題ができていない時も。家で親子喧嘩をしてきた時も。初めて好きな人ができたときも。どんな時も気づくことができた。それなのに何故今回は気づくことができなかったのだろうか。原因も何も分からない。いつもと様子も変わらなかったはずだ。

私は声をかけてあげられなかった罪悪感に苛まれた。悠がこれほど苦しんでいたのに、私は気づいてあげることができなかった。声をかけてあげることができなかった。私も死のう。そしたら天国で一緒に過ごせる。

手首を切る、首を吊る、川に飛び込む、マンションから飛び降りる、硫化水素。色々な方法が思い浮かんだが、怖くてあと一歩が踏み出せない。思い悩んでいるうちに、悠の通夜を迎えた。

布団に寝かされた悠は綺麗だった。白い肌に白い装束がよく似合っている。薄化粧をしていて普段よりも大人びて見える。そして今にも動き出しそうなくらい綺麗だった。本当は生きていてみんなをからかっているんじゃないか。そんな風に思い、何度も話しかけたり、呼吸を確認したりしたが、悠は口を開くことはない。

その日の夜、私は大人たちには内緒で、悠と一緒に寝ることにした。夜中にこっそりと忍び込んで手を繋いで寝るんだ。悠と一緒に寝れるのもこれが最後なんだ。もしもバレても、さほど怒られることはないだろう。

大人たちも寝静まった夜中に私は悠の寝ている部屋に忍び込み、布団に入り添い寝をする形になった。布団の中で悠の手を探したが見つからない。そうだ、胸の前で組んでいるんだった。紐でくくられているのか手がほどけなかったので、仕方なく組み合わされた両手の上に、私の手を重ねることにした。悠の手は冷たかった。

「一緒に寝るの久しぶりだね」

悠は黙ったまま静かに目を閉じている。

「どうして相談してくれなかったの。力になってあげられたかもしれないのに」

目に涙が溢れ出した。私のせいだ。私が気づいてあげられなかったから、悠は死んでしまったんだ。

「ごめんね」

「愛衣のせいじゃないよ。私が弱かったんだ」

聞こえてくるはずのない声に私は驚いた。そんなはずはない。けれどこれはどう考えても悠の声だ。

「生きていたのね、悠。どうして死んだふりなんてしてたの」

「いいえ。私は死んだの。これは愛衣の見ている夢。私は最後のお別れを言いにきたの」

「お別れなんて嫌。私たちはずっと一緒よ。今までもそしてこれからも」

「じゃあ愛衣ちゃんは死んでくれるのかな。そうすれば悠ちゃんと一緒になれる」

「うん。悠と一緒なら大丈夫。一緒に連れて行ってちょうだい」

「そう、分かったわ。あなたと一緒なら悠ちゃんも悲しくないわね。ありがとう」

「ずっと一緒だね、愛衣」

「そうだね、悠」



「速報です。今朝、通夜の行われていたM市の民家で、一人の少女の遺体が発見されました。首には手で締められたような痕があり、警察は殺人事件とみて捜査を進めています。犯人は

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