3話 大黒篤志
ガチャ
重い扉が開いたとたん、ざわめいていたのは嘘だったかのように静かになった。
時間をかけて、1人1人の顔を見定めるように見ていったあとに、その先生はようやく口を開いた。
「先程も挨拶しましたが、吹奏楽部の顧問をすることになった大黒篤志です。
まず、ここにいる部員に1つ。いままではだいぶゆるかったようですが、先生はやるからにはきちんとやります。
勿論、サボリは禁止。土日の練習もやります。
本気でやる気がない生徒は今すぐ音楽室を出ていくように」
出ていく生徒は、いなかった。
それもそのはず、 もともとやる気のない生徒はここには来てないのだから。
私が最初に吹奏楽部に入部した時はもう少し、人数がいた。
初めての本番の時も。
それがだんだんとリハーサルにも、本番にも来なくなり減っていった結果がこれだ。
「全員、残る、ということでいいんだな。
では、それぞれ今年の目標を端から順に言っていくように。
コンクールにも参加する。望むのなら上の大会に進めるように力を尽すと約束しよう。じゃあ、そこの君から」
「え、えっと……。きょ、去年より難しい曲が吹けるようになりたい……です」
指名された2年生がつっかえながらもなんとか答えた。
周りの2年生たちは、次は誰に来るのかと、ビクビクしながら、先生の顔を伺っている。
「ん。次、どんどん隣に」
「は、はい。あの、一度ホールで吹いてみたいです」
───みんなそれぞれ、なんとか答え終わり一番端にいた、私達の順番が回ってきた。
「私は、コンクールで金賞をとって、昔この中学校が出ていたという全国大会に出たいです」