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燐火の響き  作者: 壊れ始めたラジオ
僕らは(社会的に)死にたくありましぇん!
6/30

観察四日目/霧中で夢中な誘拐少女

「うーん…」


「Ms.フォッグのことっすか?」


「うん。一体どうやって探せば…」


 食堂で夕食を食べ終えた僕らは、Ms.フォッグの所在について話し合っていた。


「あの、すみません…。そろそろ食堂閉めてしまいたいので、続きはラウンジでお願いします…」


「え、もうそんな時間? すみません、今、どけますから。…そうだ。Ms.フォッグっていう人知っていますか?」


 ふと僕が聞いてみたのは、前も声をかけられたモップを手にした生活部の女の子。年齢は、中学生くらいだろうか。三角巾を身につけたその姿は、さながらトイレ掃除のおばちゃんのようだ。


「え…私ですよ?」


「「…ホントに近くにいた」っすね…」



 ◇



 …クラスメイトが、変だ。

 何が変かって、もう…変なの。


「ふふ、えへへ…」


 四六時中ヘラヘラしてるし、両手を頬に当ててるし。何より変なのが、その言動をついこの間までギャルっぽかった子がしているってこと。


 大人が揉み潰したらしくて噂程度にしか過ぎないけど、彼女は一週間前に行方不明になっていたらしい。私達生徒には、あくまで「体調不良による欠席」と伝えられていた。けれどそれは嘘で、本当は誘拐されて「女性にしか恋愛感情を抱けないようにする再教育」を施された、というのが生徒間に流れている推測。

 その犯人としてささやかれているのが、少し前からこの辺りの地域で都市伝説となっている「白霧少女」。霧のように現れて、ノンケの女性に再教育を施し、同性愛者として世に放したあと、霧のように消える所業からこの名がついた。アタシみたいな元からそうだった人にとっては「同じ体質の人」だから全く害はない。むしろ会ってみたい。大変なのは、彼氏持ちの女とその彼氏。女の方は自分の性的指向を強制的に変えられる恐怖から、男の方は自分の彼女を取られる恐怖から、それぞれ怯えている。彼ら彼女らにとっては、脅威の対象でしかない。

 そしてそれは同性愛に理解がない親や警察にとっても同じ。ここを管轄にしている県警の内部では、「白霧少女対策室」通称「アンチフォッグ隊」も発足されたらしい。これは噂なんかじゃなくて、本当のこと。これ全部、百合っ娘会員限定の掲示板「モモアワセ」からの情報。ちょっと名前が卑猥な気がするけど、ドコドコの都市でパートナーシップ制度が整備されそうだとか、ドコドコの地域に百合専用のラブホテルができたとか、ドコドコの闇市でどうゆうクスリがいくらで売ってるだとか、そこでの特売がいつ始まるかとか、百合に関する情報の早さと正確さは本物。赤石先輩への恋心を自覚した時、この掲示板からのメールが届いて、最初は怪しく思ったけど、いざURLをクリックして会員登録をしてみたら、アタシと同じような人が他にもたくさんいるっていうことがわかって、スポンサーもいくつもあって、アタシも頑張らなきゃって励まされて、今では重宝している。



 さて、今日の授業も終わったし。

 図書室へ行こう。

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