観察三日目/プリズン・ブレイク! …バイ・マネー
「…すみません。高等部の赤石燐先輩ですか」
「…」
今日も、ダメ…。
◆
「はあぁ、どうしよう…」
「迂闊だったっすね。まさか、私達が身を潜めていた図書館横の茂みにまで警備員が目を光らせていたなんて」
この世に生を受けて早二十一年、警察のお世話になるなんて初めてだ…。というか牢屋の中って、結構清潔に保たれていたんだなぁ…刑務所じゃなくて留置所だからっていうのもあるんだろうけど。
「…私達、どうなるんすかね」
「…わかりません。勝手に学園の敷地内に入った罪が、どれくらいのものなのか、僕にはそのテの知識に疎いので…」
「そうっすよね…」
「こちらへどうぞ」
ん?
檻の中から通路に向かって左側。その奥から監視員と共にこちらへ近づいてくる、一つの影。
真っ白なスーツに、茶色のウエスタンハット。そして、右手で杖をつくこの姿…そんな人間は、僕らの知っている中でただ一人。
「やあ諸君、お迎えだよ」
◆
僕達は、解放された。運転席でハンドルを握る僕らの上司「Mr.サンクスマン」に、後部座席から顔の覗かせてその訳を聞いた。
「カネには、人を救う力があるんだよ」
物凄く分かりやすい返答だった。
「そうだ。君達二人に、ガイア君からメッセージを預かっているよ」
「み、Ms.ガイアさんからっすか!?」
「なんか、嫌な予感…」
Mr.サンクスマンは右手で運転しながら左手でスーツのポケットからカセットテープ式のボイスレコーダーを取り出すと、後部座席に座っている僕達にも聞こえやすいようにダッシュボードの上に置き、再生ボタンを押した。雑音混じりに、クールで落ち着いた声が聞こえてきた。
『…お前ら、馬鹿か』
「「す、すみません…」っす…」
録音された音声なのに、なぜか謝ってしまう僕達。
あぁ、やっぱり怒られるよね…。
『あとお前ら、ずいぶんと仲良くしているらしいな』
「仲良く…まぁ、確かに」
「結構交流深いっすよね」
『そんなお前らに、頼みがある』
「「た、頼み!?」っすか!?」
『お前らがよかったら、仲間に入れてやって欲しいメンバーがいるんだ』
仲間…
『コードネームは「Ms.フォッグ」。…お前らのすぐ近くにいるから、自分達で探せ』
そこで、録音は停止されていた。
どうも、壊れ始めたラジオです。
いつになったら、燐と響のパートが進展するのでしょうか? というか本来はそっちがメインのはずなのに…。
それでは。






