観察二日目/国家権力にご注意を
今回より、夜ノ森響視点の場面があります。
「…すみません。高等部の赤石燐先輩ですか」
「…」
あれ、もしかしてアタシ声小さかった?
「…すみません。高等部の赤石燐先輩ですか」
「…」
…イヤホンしてる訳でも…ない。
「…すみません。高等部の赤石燐先輩ですか」
「…」
もしかして、無視されてる?
「…すみません。高等部の赤石燐先輩ですかっ」
「うるさい。邪魔」
「え…」
な、なによ、もう…。
星花学園中等部一年、夜ノ森響。
アタシには今…気になる人がいる。高等部二年の、赤石燐先輩。
今日、積もり積もった感情を抑えきれなくなって話しかけてみたはいいけれど…仲良くなるキッカケを作るどころか、邪魔と言って弾かれた。
あのときはちょっとショックで、思わずムキになっちゃったけど、明日こそ、必ず…!
◇
「…すみません。高等部の赤石燐先輩ですよね」
「…」
今日も、返事をしてくれない。
先輩は毎日放課後、学園内に建つこの図書館の壁際の席で何かしらの本を読んでいることはわかっていたから会うのは簡単。でも、そこから先に進む気配が全く感じられない。
◆
「…どうやら赤石燐は、超の付く文学少女らしい。僕の予想では、明後日にはしびれを切らして夜ノ森響に対して何らかのリアクションを起こすはず!」
「今のところ、全く動かないっすね。シーカーさんが貸してくれたこのイヤホンも、要らない子と化してるっすよ。まあ私は下着が堪能できれば、シーカーさんほど百合シチュにはこだわらないんすけどねぇ。すー…はぁー…」
「あれ、それもしかして…」
「ふっふっふっ…。夜ノ森響の第一ブラジャー、ゲットっすよ!」
「うわぁそれ僕にも触らせてもらってもいいですか!?」
「いいっすよ。昨日の晩に盗んできた物っすから、残り香が芳醇なモノへと昇華してるっすよぉー!」
「…君達、この学園の人間じゃないね? ちょっとあっちで話をしようか」
「「…あ」」
こうして、僕達不審者は紺色の制服に身を包んだ正義の警備員のオジサンに連行されていった。
あああまだ夜ノ森響と赤石燐が視界に収まっているのにぃぃぃ!
カムバック僕ぅぅぅっ!
どうも、壊れ始めたラジオです。
美少女でなければ、シーカーとブラックアウトは盗撮魔と下着泥のアブナイ二人。美少女だから許されます。
それでは。