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燐火の響き  作者: 壊れ始めたラジオ
百一回目で叶う前に心が踊る……じゃなくて折れる
17/30

購読参日目/消滅したbike

 ◇◆◇


「ねぇねぇこの写真の(しょう)くんチョーかっこよくない?」


 ……うるさい。


「えー。私は、こっちの名津純(なづじゅん)の方がいいなー」


 ……うるさい。


「ふたりとも何もわかってない。相馬(そうま)ちゃんが一番キュートでしょ」


 ……うるさい。


「……なんの話かと思えば。さてはシノの魅力に気づいていないね? あの弾き語り、あの演技力。全てにおいてシノこそがパーフェクト・ヒューマン」

「……あの、河野(こうの)くんのことも評価してあげて」


 ……うるさい。


「そう彼の名はシノ。フフフ、怖いでしょ、この完璧っぷりが!」

「シノ? いえ、知らない子ですね」

名津純(なづじゅん)の本気を見るのです!」

相馬(そうま)ちゃんのために、ここは譲れません」

(しょう)くんのインテリパワーには、誰も追いつけないよー!」


 ……うるさいうるさいうるさい!


 なんなのさっきから。推しメンを戦艦に例えて戦争でもしてるの?

 別にそういうので盛り上がってもいいけどさ、時間と場所をわきまえなよー、まったく。……というかあの人達、途中から口調が変わってる。……私もか。


 イライラが募り、思わずこの間買った伝記を持つ手に力が入る。


「はっ!」


 いけないいけない。大切な本になんてことを。人類の遺産にシワをつけるところだった。


 今、わたしは新居と転入先の学校の両方から程近い距離にある市営図書館に来ている。引っ越しの作業も一通り終了し、その間に溜まってしまった未読本を消化するには、ここが静かで最適だ……と思ってここに来たのに。先ほどから雑誌を広げてアイドルの話をして騒いでいる同年代の女子グループがうるさくてあまり集中できていない。


 ……ただ、わたしが集中力を欠いている理由はこれだけではない。

 一週間前、伝記を買った本屋で働いていた少女。

 ……なぜか、あれからわたしの頭から離れない彼女。


 あれから、わたしは妙な、むず痒い感覚に悩まされている。彼女のことを思い出す度に体の中身を侵食されていく気がして。そのせいで、他にも気になる本があったのに、あれからあの店に行っていない。


「よーしじゃあいつも通り『番長クラクション』で決着つけよう!」

「「「「おー!!」」」」


 結局、全員仲良しのアーケードゲーマーかい。


 いい加減女子グループの喧騒に嫌気がさしたため、図書館を出て駐輪場へ向かった。


 ◇◆◇


「……」


 無い。

 わたしが乗ってきた自転車が。

 柵に回していたチェーンロックだけを残して。




 ……あれ、もしかして乗られちゃった?

 このあと、近くの交番に盗難届を出したのは言うまでもない。

どうも、壊れ始めたラジオです。


ギャグパートは終わったはずなのに、一向に消えないギャグ要素。

図書館ではお静かに。

自転車は英語でbicycle。


それでは。

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