観察五日目其の六/にっこにっこになりたい。みんなも一緒にシャンシャンしてほしい。
下着泥棒ブラックアウト、誘拐洗脳少女フォッグに続き、今回は盗撮魔シーカーのターンです。
「……と、いう訳で用務員に追われているんですけど、応援にきてもらえませんか?」
なんとか倉田用務員からダクト内を逃げている僕は、迷惑がかかるとはわかっていても、サンクスマンに助けを求めずにはいられなかった。
『すまないシーカー君。ちょっと立て込んでいてね。もう少し待ってくれないかい?』
ん? なんか、サンクスマンの声の向こうでバシンバシンって音がする……。
「わかりました。……ところでサンクスマンさんは何やっているんですか?」
『剣道対決だが?』
「本当に何やっているんですか!?」
『……おっと、そろそろ通信を切るよ』
「え、ちょっと……ふぅ」
もう、なんでこんなことに……。
「ピロリ♪」
「うわっ!?」
メールだ。
僕は迷彩柄のツナギの胸ポケットからスマホを取り出し、内容を確認する。
「えーと、『モモアワセの今週分の更新当番忘れてる』ってああっ!」
しまった、こっちに気がいっていてすっかり怠っていた。
モモアワセというのは、僕らの組織の事務部が日々管理・運営しているレズビアン専用、男子禁制の掲示板。現在事務部に所属している僕には、当然定期的に更新するローテーションが回ってくるわけで……不覚。
「どうしよう記事のアイデアなんてないしこんな状況でどうしたら……ん? 『追伸。だいたい他のメンバーが代わりに入力してくれたからアップロードだけしておいて』か……助かります」
早速モモアワセのサイトに向かい、管理者パスワードを使ってログイン。
「お、ここの隣町の闇市場で手提げポーチに偽装したハイビジョンカメラが近々30台限定で販売されるんだ……これは盗撮が捗りそうだって10万円!? 高っ!」
さすがにちょっと手が出せない……。しかも決して法外な値段じゃないところが後ろ髪を引かれる……。
おっとそうじゃない。
「更新更新っと……よし」
さて、悲劇というものは突然襲ってくるものだ。
今、僕はダクト内に潜伏している。そしてちょうど僕が這っていた場所が、奇しくも換気用の鉄格子の上だった。
「ギシッ……ガシャン!」
「……」
さらに……その鉄格子に肘をついていた僕は、重心の急速な移動についていけず、バランスを崩して……。
「ドサッ!」
「あぁ、なんかデジャヴ……」
ダクトから落ちた。
回りから、ザワザワと多人数のざわめきが聞こえてくる。
僕は趣味の盗撮をする際、いつも迷彩柄のコーディネートで臨む。森などの自然溢れる場所では、気配を消すのにうってつけなのだ。
けれど、今僕がいる、というか落ちたのは……周囲を窺う限り、この学園の図書館。当然、そんな場所においてこの服装は……。
「あの、急に何……? というか落ちて……?」
めちゃくちゃ目立つ。
という事で、次回へ続く。
僕の人生も、取り敢えずまだ続けられる。
どうも、壊れ始めたラジオです。
すみません、まだ登美司つかささんの水藤叶美さんしか出ていないのですが、区切りが良いのでここで切ります。
この学園の鉄格子、弱すぎ……。
それでは。