観察五日目其の四/レッツサーチ!メッチャサーチ!ムッチャサーチ!ワッチャネーム?アイムア博多人!……その答え、はなまる!
博多はなまる!
……今回のサブタイトル、権利的な意味でアブナイかもしれません。
どこかの廊下へ続く非常口、その鉄製の重い扉をゆっくりと開けて、周囲を確認。
……うん、あの人はいないみたい。
「ふぅ……」
ひどい目に遭った……。
……そうだ、途中ではぐれちゃったあの二人を探さないと。
私は強さを少しずつ変えながら近くの壁を何度かノックし、本格的にエコーロケーションを開始する。
捜索範囲は、この学園全体。
途端に押し寄せる音の情報から、必要なものだけを吟味していく。
目を閉じて視覚をシャットダウン。聴覚に意識を集中させていると。
「そんなところで壁叩いて、何やっとうと?」
「えっ!?」
しまった。存在はわかっていたけど、まさか声をかけられるなんて思っていなかったから油断してた。
あとなんか訛ってるように聞こえるけど……。
「え、えっと……」
「もしかして、道に迷っとうと? 黄色の校章ってことは、中等部?」
誰かに見つかった時のために、この学園の制服を着ていてよかった……。ダクト内を這ったせいで、ちょっと埃ついてるけど。
「そ、そうなんですよ! まだ、この敷地の広さに慣れてなくて……」
そうか、ここは高等部と中等部の間にある共用の校舎だ。
……あまり、部外者と関わるわけにはいかない。早いとこ話を切り上げて、二人と合流しないと。
「じゃ、じゃあ私はこれで……」
「待って!」
「っ!?」
うわ、手を掴まれた……。誘拐犯としての本能が、この人を滅茶苦茶にしたいと叫び始めている……!
「よかったら、ウチが案内するけん。どこ行きたいと?」
どうしよう……。
「えっと……そ、そう! 茶道部! 茶道部の部室に行きたいんですよ!」
これだけ規模が大きいのだから、茶道部くらいあるだろう。
「茶道部やね? よかった。ちょうどウチが行こうとしていた漫画研究部の部室とも近いし、最後まで案内できるけんね」
◆
「ここやよ」
結局、茶道部の前まで来てしまった……。
「入らんと?」
「い、いえ。入ります!」
「じゃあ、ウチはもう行くけん」
「あ、ありがとうございました」
……よし。あの人も行ったし、ここは入るフリをして……。
「入部希望ですか?」
……無理だった。
◆
「……はぁ。お抹茶美味しい……!」
「そ、そうですか……」
……迂闊だった。いつもなら扉の向こうにいる人なんてすぐに察知できたのに……!
「ごめんなさい。他の部員、まだ来ないみたいで、私しかいなくて……」
「いえいえ、おかまいなく……」
なんとかして、この状況を脱しないと……。
……そういえば、今着ているこの制服、ブラックアウトさんがこの学園の生徒の私物から盗んできた物らしいけど、あの人下着以外の服も盗るんだなぁ……。
……あれ?
「あの……どうしてジャージ姿なんですか?」
「これですか? ……実は、昨日制服をどこかになくしたみたいで。めったになくすようなものではないと思うのですが……」
ものすごい確率で持ち主が見つかった。この人の制服か……。なんか急にムラムラしてきたのだけど。
「……そういえば、私が使っているのと同じ柔軟剤の香りがしますね」
……こうなったら先手必勝。実力行使!
「……すみません。ちょっと目にゴミが入ったみたいで……目、見てもらえますか?」
「?」
目の前の彼女と視線が合ったことを確認し、即座に意識を集中させる。
「私の目、どうですか?」
「真っ白で、もやもやして、霧が、かかって……マッシロデモヤモヤシテ、キリガカカッテ……ふわふわ、フワフワ、ふわふわフワフワ……」
やがて、彼女はあらゆる思考を停止させて、固まった。抹茶が入った茶碗を持った状態で、まるで彫刻のように。
これで、正座お茶飲み美少女フィギュアの完成。これが、私の手口。生まれ持ったこの力を使って、私は今まで数多の女性をさらってきた。プロの誘拐犯をなめると恐ろしいことになる。もちろん、依頼主はいつも私自身。
さらにもう一度目線を合わせ、思考停止から五分後に脳が復帰するように暗示のタイマーセットをかけた。
……さて。名残惜しいけど、ここを出よう。
……あ。
さっきの人にも、この方法を使えばよかった。
どうも、壊れ始めたラジオです。
今回は、らんシェさんの藤宮恋葉・城咲紅葉ペアが登場。博多弁(?)苦戦しました。紅葉さんは登美司つかささんの作品も参考にして、茶道部設定を使わせていただきました。……口調は、もう少し丁寧にした方がよかったかも。
次回はどなたでしょうか?(実はもう決めてる)
それでは。