第二話:キンパツ!
熱ぐるしくなる夏休み真っ只中
俺は親父の勝手な都合のおかげで
新しい家と新しい家族が出来た。
「朝か・・・」
何処からか聞こえる蝉の声が
あぁ新しい地へと来たんだなということを実感させた。
「それにしてもすごい汗だな・・・」
寝る前に付けたはずだがいつの間にか扇風機が消えていた。
あーそういえばタイマーにしたんだっけ・・。
遠慮がちに30分設定にしたのが悪かったな。
俺は体にべったりついた汗に気持ち悪さを感じた。
「シャワー浴びるか・・・」
俺の部屋の隣がみつきさんとゆうさんの共同部屋らしく
シャワーすることを一応報告しようと
そちらへと向かったが・・・
なにやら会話が聞こえノックする手が止まる。
「ゆうちゃん今日からはスパッツはいてね」
「・・・・いやだ」
「おパンツ男の子に見られたら恥ずかしいでしょ?」
「・・・・いい。でもカワイイの買ってくれるならはいてもイイよ」
「うん、じゃあ可愛いの買ってあげるからはこうね」
それは殆どみつきさんの声だった。ゆうさんに話しかけてると思われる。
昨日ゆうさんパンツ見えてたもんな・・・・
いやそれはいいんだが・・・!いや良くないが!
今は入らない方が良さそうだな。
ま俺もこのうちの家族になったんだし・・・シャワー自由に使ってもいいよな。
軋む階段を降り俺は風呂場へと向かった。
昨日入浴したがこれがまた和のある風呂場なんだよなー
などと考えつつ
脱衣所にてべったりした服を脱ぎ捨ていざシャワーを浴び・・・・
いざ浴場へ出陣!
しようとしたが
「えっ・・・・」
この日俺の目の前に現れたのはたんなる風呂場の光景じゃなかった
思わず足を止めて光景を凝視
そこには何故だか金髪美少女がまさしくいまシャワーを浴びようと
していたところだった。
シャワーの水が出てないおかげで裸体がはっきりと・・・・
っぅてええええええっっっっっ冷静になってる場合じゃない・・・・!!!
これはかなりやばいっっっっっっ!!
まずこういう場合たらいが飛んでくる・・・
俺は覚悟してしゃがみ頭を抑え身構えたが
意外なことにたらいはとんでこなかった。
代わりに静かな空気が数秒続く、逆になにか怖い・・・・!
「いいよ、見ても」
「えっ!?」
「見たいんでしょ、はると君」
それはまさしく悪魔の囁きであった。
くっ・・・・思春期男子になんていことを言うんだ!
そして金髪美少女はあらぬ行動を仕掛けてきた
俺をその場に押し倒し腕を掴んできた。
恐る恐る視界を開けるとやはり美少女はいた
もちろん服などはきてない・・・・タオルもしてない!
うっ・・・罪深いぱいが2つっっ!!
身体の動きが取れない中で慌てるように顔を横に向けるという無駄な抵抗に出た
「なんてことだ・・・」
「うれしくない?こういうの?」
「くっ・・・・」
俺はこのままでは理性を保てなくなる
ダレカタスケテクレ
「そういえばお洗濯もの取り込んでなかった」
祈りが通じたのかみつきさんが洗面所の扉を開けたらしい。
(状況的に音と声のみで判断)
た、たすかった・・・・・!
「えっ、はると君と・・・・七月お姉ちゃん!?な、なにしてるの?」
「えっちなことだよ〜」
あー・・・もう俺の新生活終わったなあはは。
ていうかなんだその軽いノリは。いろいろやばいぞ?
色々の部分は察してくれ。
ー
居間で麦茶を飲みながら
おれ、みつきさん、金髪美少女の裁判が始まる。
朝あったシャワー事件について全て打ち明けた。
「ごめん。俺が勝手な行動をしたばっかりに」
「ちょっとびっくりしたけど、はると君は悪くないよ〜。
七月お姉ちゃんもはると君をその・・・せ、性的にからかうことはしないで」
別に性的の部分はいらなかったんじゃ
いやラッキーボイスとして心にとめておこう。
「いやだなぁ~からかってなんかいないよ!状況的に正しい行動をしたのに~」
どこがだよ。まーたらいが飛んでくるよりはましだったのかな。
完全に金髪美少女の空気に呑みこまれそうになったところでふと疑問が浮かぶ。
「七月さん・・・?はみつきさんのお姉さんなのか?」
「そう。18歳になるお姉ちゃんだよ〜」
自分よりも5歳年上なのかちょっと意外。というのもこのお姉さん身長はみつきさんよりだいぶ低く
簡単に言うと中学生の俺と同じくらいだ。
「もう自分で自己紹介できるよっ!なんなら性的なプロフィールも」
「いいです」
「もう、そんなはっきり言わないでよ」
七月さんはふくれつらになってみせる。
これはさすがにちょっとはっきり言いすぎたかな。
「でもこれから楽しみ〜!もっとはると君にいいことしてあげたい!性的な意味で!!」
あ全然気にしてない。ついでに反省もしてない。
「それはそうとお腹すいたんだけど朝ごはんまだー?」
「今つくるね」
七月さんどちからというと妹の方があってないか?
ー
朝食が出来上がりいざ食べようとしたところで
再び疑問が浮かぶ。今度は七月さんのことではない。
「そういえばゆうさんは?」
「ゆうちゃんは一回起きたんだけど寝ちゃった」
「ゆうはいつも2度寝してお昼まで起きないタイプだから気にしないで」
なるほどそうなのか。
しかしせっかくなら一緒にご飯食べたいよなー
それにしてもみつきさんの作ったご飯めちゃくちゃうまい!
俺は味噌汁をすすりながら
感激の嵐に襲われる。
良いお嫁さんになるよ・・・・って俺は誰だよ
「そういえばはると君今日は予定ある?」
「うーん特にないけどどうかしたのか?」
「はると君にこの街案内したいなとおもって」
俺が返事するよりはやく
みつきさんの隣に座っていたお姉さんが素早く反応
「なにそれ!わたしも行きたい!」
「七月さんはこの街わかってますよね」
「はると君と一緒に回りたいという乙女心がわからないかな!」
本日2度目のふくれっつら
どうやらまた怒らせてしまったようだ・・・・
このお姉さんおれにはよくわからん。
「折角だからみんなで一緒に行こうか?」
「さんせいーい、さんせーいっ!!」
もちろん俺も同意だが言葉にする間もなく遮られた!
・・・本日2回目
ー
自宅周辺は全く見て回るところが無いというので
バスで行った先にある隣りの街を案内してもらえることになった。
みつきさんがゆうさんを起こしてくるあいだ
玄関先で待つことにした。隣には七月さん。
この人とふたりきりというのは危ない気がする・・・。
「ねぇ、前の街で好きな人とかいたの?」
ほらね
小悪魔顔でささやいてくる楽しそうな悪魔
なんだよ・・・なんだよ
「いねえよ」
「ふーんそうなんだ。小さいもんね」
「見たのかよっ!」
俺は今朝の裸体事件を思い返し
じわり身体が熱くなるのがわかった!
「何慌ててんのーーー!身長の事だよ!あーほんとはるとっておもしろいーー!」
「七月さんだって18歳のくせに小さいだろう!」
「お、おっぱいのことはほっといてよ!」
おい・・・仕掛けておいて今度は七月さんが引っかかんのかよ。
「お待たせ・・・どうかした?」
やがて眠たそうなゆうさんの手を優しくつなぎ連れてきたみつきさん。
熱い討論を察したのか不安げに尋ねる。
だめだ冷静にならないとみつきさんにご迷惑が。
「いやちょっとな。大丈夫だ」
「どうせえーかっぷだよ」
本気でいじけてる・・・俺だって身長の事言ったんだよ。
というかえーかっぷか・・・。
確かにちょっと小さかった・・・・ってなに思い出してんだよおれっ!
「ま、まとりあえずいきましょうか案内よろしくお願いします」
「う、うん?そうだねじゃあ行こうか」
えーかっぷ発言をした途端?マークだったが
やがて何かを察したように安堵の表情に戻るみつきさん。
多分このお姉さんは日常的に性的な会話をしてるんだろうな。
長い坂を降りると海が見えた。来た時も窓からも見えた海だ。
夏休みということもあるからにぎわっているのだろうか。
「みつきさんもあの海行くんですか?」
「うん、夏は良くいくかな~。あ、そうだ今度はると君も一緒に行こうか!」
「みつきさんが良かったらぜひ!」
「わかった。約束ね!」
「わたしも行きたい!すごい可愛いくてエッチな水着買っちゃうから」
ゆ、誘惑の目で俺を見るな・・・・。
「そうだね。みなんで行こう!」
話し込んでいるうちに
道路の途中にあり簡素な待合室しかないバス停へと到着した・・・。
そうして待つこと10分ほどようやくバスがお目見え。
「バスがら空きだな・・・」
はっきり言うとだれも乗ってない!
「いつもこんなもんだよ。あ、はるとは私の隣ね」
「うん、まぁいいけど」
俺たちは一番前、みつきさんとゆうさんは2列目の席を陣取った。
窓側に座った七月さんは出来るお姉さん風に語り始める。
「はるとの隣が良いのはもちろんあるけど、あの二人
一緒にするのがベストだと思ったの。私気が利くな〜」
「へーみつきさんとゆうさん仲の良いご姉妹なんだな?」
「まぁね・・・だからいつも私はのけ者・・・はは」
これが本当の事なのかはわからないがちょっと可哀想。
「だからねはると君・・・」
名前を呼ぶなり
窓辺を見ながいじけていた七月さんは
俺の方へと顔を向けて真剣な眼差しを見せた。
「お、おう」
「私たちもすごい仲の良いお姉ちゃんと弟になろうね!
それ以上の関係でも大歓迎だけど!むしろそれの方が」
あ、さっきまでの淫乱な方の七月さんだ。
「仲の良いお姉ちゃんと弟でお願いします」
「もう~!」
七月さんは良く話しかけてくるので
相変わらず淫乱なことが多かったが・・・
普段は喫茶店でバイトしているとか衣装が可愛いやら
成績があがらなくて悩んでいるなんて
いうプチ情報まで知ってしまった!
おかげで退屈しないうちに目的地へと到着
「は〜やっと着いたね。30分は長いよ」
「そんなにかかってたのか?」
「私との会話が楽しくて全然気にならなかったでしょー?」
少し悔しいけど・・・おー認めざる得なーい!
バスから降りてみつきさんを見るとうとうとしていた。
「みつきさんは眠そうだな・・・」
「へへ・・・実はちょっと眠っちゃった。ゆうちゃんが寝ちゃったから」
みつきさんと手を繋いでいるゆうさんをみると目が空いていない。
お、起きてるのか?まだ寝てるのか?
そこから田んぼが広がる道をあるいて
ようやく1軒の建物が見えてくる。
木造の小さな建物・・・なんの店なんだろう?
「これは・・・・」
外から見ると
店の中にはお菓子がびっしり並んでいて奥の方におばあさんが座っていた。
あっ、いわゆる駄菓子屋というやつか!?
「おやぁ、久しぶりだねぇ。良く来たね」
俺たちの気配に気づいたおばあさんが店の外に出てきて優しそうな声であいさつを交わし
ゆうさんを撫でてあげた。
「ゆうちゃんも元気そうでなにより」
「おばあちゃんも元気そうでよかった」
そう言ったのはみつきさんだった。
良く来てるのかな。
「おやぁ、この男の子は?」
「はると君。新しい家族」
「・・・・・なんと、みつきは結婚したのかね」
「あ、そういうわけじゃ」
「ふぇっふぇっへへ、冗談じゃよ。事情は聞いておるからのぉ」
複雑な事情を説明しようか悩んで答を出す前に
おばあさんがわかりきった様子で笑い出した。
知らないおばあさんに俺の複雑な事情を話してるのか?
「はると君。この人は私たちのおばあちゃん。お母さんの方の」
「えっっ、あーなるほどそうなのか。あ、よろしくお願いします」
「あーよろしくのぉ。立ち話もなんだから中へ入んなさい」
おばあさんに誘導されるままに店内へとはいる俺たち。
おーすげぇな!!
店の中には昔ながらのお菓子やおもちゃがびっしりと並んでいた。
俺は漫画やドラマの中でしか見たことが無かったので少し感動してしまった。
「はるとはどれが好き?」
「うわっびっくりした」
「もーっ!何ぼーっとしてんの〜?私は当然これが好き」
いつの間にかとなりにいた七月さんは
ふいに並んでいた商品から簡単な容器に入ったコーラジュースを俺に見せた。
「なんだそれ?」
「知らないの?ポリジュース。はい、はるとはオレンジ味ね」
いやまだ買うと決めてないがしかし思わず受け取ってしまった・・・。
「だいじょうぶ、お姉さんが買ってあげるから!」
「いや、悪いわよ」
「遠慮しないで遠慮する値段じゃないから」
うんそうは言ってもな・・・・さ、三十円?
随分と安いっ・・・!
「欲しいものどんどん選んだらいいよ。全部お姉さんが買ってあげる!」
「あ、ありがとう」
な、なんだかお姉さんを通り越して
メガミ様に見える。神対応すげぇ。
このお姉さんなかなかいいところもあるな
俺はポリジュースのオレンジ味を握りしめながら感慨深く実感する。
ー
買い物を終え店の外を出るとおばあさんがお出迎えしてくれ
ゆうさんを優しく撫でた。
「お姉ちゃんとまたおいでね、2人もまたおいで」
「・・・・・うん」
「はいおれもまた来ます」
「じゃあまたねおばあちゃん」
「わたしもまたくるよ」
俺たちはおばあさんに約束し駄菓子屋を後にする。
「ゆうちゃん、食べ歩きはだめだよ」
歩きながら我慢できないように買ったばかりのふくろから
お菓子を取り出そうとするゆうさんをみつきさんが制止した。
「・・・・・・お菓子食べたい」
「そうだ、近くの公園に行こうか。はると君もお姉ちゃんも
大丈夫?」
「もちろん」
「わたしもおっけー」
少し歩き広い庭と木製のテーブルとベンチのある公園へと到着した。
田舎だからか広さに対して哀しみを覚えるほど人気が無い。
俺たちはテーブルに座り一息つく。
ここでも七月さんのとなりか。いいのだが。
ゆうさんはテーブルに着くなり
袋からパンのようなものをだしお口にくわえる。
「ゆうちゃんミルクパン好きだもんね」
ミルクパンっていうのかあれ。
「へーおばあちゃんのところ・・・駄菓子屋には良くいくのか?」
「うん、最近はあんまり行けてなかったんだけど・・」
「そうなのか」
・・・何やら静かだなあと考えつつ
ふと隣を見ると七月さんは七月さんでポリジュースを加えていた。
「いやだ、はるとなんか卑猥な事考えてるでしょ」
「か、考えてねぇよっ!」
あ、そういえば俺もポリジュース買ってもらったな。
「あの俺のは・・・」
「はいこの袋のなかにはいってるよ」
渡された袋を見るとポリジュースと俺が選んだお菓子と
大量のうまい○たこやき味が入っていた。
数えただけでも10本はある。
「大丈夫だよ心配しなくてもはると君にも5個ぐらいあげるから」
何も心配はしてないが
というか具体的だな
突っ込みきれない・・・・!
「ゆうちゃん遊びたいの?」
いつの間にかミルクパンを食べ終えた
ゆうさんはみつきさんの袖をつかんでおねだりするように見つめていた。
「・・・・虫が見たい」
「お姉ちゃん虫はちょっと・・・」
「・・・・遊びたい」
「じゃあちょっと行ってくるね」
「あぁ」
「行ってらしゃーい!」
みつきさんはゆうさんの手を握り広い芝生の方へと行ってしまった。
「みつきさんとゆうさん仲良いよなぁ」
「あれはもう仲が良いなんてもんじゃないよ」
やばこれは今朝の繰り返しになってしまう。
「お、俺たちも仲良くしような」
「えへへへーいいよーー」
場を和ますために放った一言で七月さんは予想以上の笑顔をみせる。
もちろん仲良くしたいのは本心だが。
悔しいが嬉しいそうな七月さんがちょっと可愛い。
「それにしてもゆうが外に出るの珍しいなー」
「普段はあんまりでないのか?」
「まぁね。いわゆる引きこもりに近いかも」
ゆうさんが?ちょっと意外だな・・・・。
「その辺りはいろいろ事情があるから」
「そうか・・・・」
あまり探らない方がいいのかな。
家族としては知っておきたいという気持ちは今の俺には贅沢かな。
これから俺はちゃんとお姉ちゃんたちの家族になれるのだろうか。
いやなっていきたいな。