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未解決部!  作者: 遠藤鍵
9/10

全てを賭けた勝負

次の日建前美乃里(たてまえ みのり)の生徒会選挙に当選したいという依頼に応えるために俺は中羽裕登(なかば ひろと)と話してみることにした。

イケメンで女子から大人気のリア充野郎はあまり好きではないががまんしてみよう。

とは言っても中羽は休憩時間は他の女子や友達と話してるし昼休みも中羽は男女の友達を5、6人連れて学食へとむかってしまった。

どうしよう…話す機会がない。

「どうした?水有月」

俺に話しかけてきたのは苑本翼(そのもと つばさ)だ。

数少ない俺の友達の1人である。

「あ、そういえばお前ってサッカー部だったよな?」

「ああ、そうだけど」

「中羽裕登と話したりするか?」

「そこまで話さねぇけど少しくらいなら話したことあるなぁ」

「じゃあ放課後俺が話したいってことで呼んできてくれねぇか?」

「いや、でもあいつサッカー部のエースだからみんなが集まる前にはもう練習はじめちまってるんだよな」

「そこをなんとか無理かな?」

「部活の間の休憩に呼ぶことくらいは出来そうだけど時間を取ってくれるかどうかはわかんねぇぞ」

「ああ、それだけやってくれたら十分だ」

そして放課後…

俺はグラウンドをながめていた。

というか中羽裕登をながめていた。

スゲェ、ドリブルで6人抜きかよ。

実を言うと俺は中学の時サッカー部だったのだ。

それはモテるためとかではなく、単にその頃はサッカーが好きだった。

小学校2年の時からサッカーをやっていたから中学のサッカー部では一応エースナンバーの10番を背負っていた。

でも高校に入ってからサッカーはやめた。

単におもしろくなくなったからだ。

俺よりも上手い奴が出てきた訳ではない。

むしろ逆だ。

もともと中学のサッカー部のレベルは高くなかったからそこそこの練習しかしない。

俺は朝から起きて近くの公園で練習し、部活が終わった後もその公園でさらに練習していた。

なので俺とほかの奴らとの差はどんどん開き最終的には11人でするサッカーではなくなってしまっていた。

試合に負けたとしても悔しがっているのは俺だけだったりする。

試合の相手も俺より上手い奴なんて見たことがない。

生まれながらにサッカーの才能が俺にはあったことは自負している。

だが周りが強くない。

もう少し強い奴に会うことができれば俺は…

俺の人生は変わっていたのだろうか。

人生までいくと大袈裟かもしれない。

更なる高みに挑もうとも思ったが生まれて此の方自分よりも上のやつに会ったことがないので本当に俺より上がいるのか信じられなかった。

でもあの中羽って奴は俺より上かもしれない。

もうちょっと早く中羽のサッカーを見たかったな。

そして中羽裕登がこっちに向かって走ってきた。

「えっと水有月君だっけ?俺になんか用かな?」

「あ、ああ」

苑本がうまく言ってくれたらしい。

「えーとな、生徒会選挙に出るらしいな」

「うん、そうだけど」

「狙うは生徒会長だよな?」

「そうだよ」

建前美乃里も生徒会長に立候補する。

この学校は二学期から任期がはじまる。

なので一学期のうちに選挙をして役員をきめてしまうのだ。

だが中羽裕登がいると殆どの確率で選挙に負けてしまう。

「で、でも生徒会長になったら部活とか今までより出れなくなるんじゃねぇのか?」

「そうなるね。でも俺はそこまで部活に専念してるわけじゃないし」

みんな集まる前には練習始めてるくせにかよ。

「でも、エースなんだろ?じゃあ周りに迷惑がかからないか?」

「俺1人いなくなったところで何も変わらないよ。それにしょっちゅう抜けるわけじゃないし。」

「いや、エースがたまにでも抜けちゃまずいだろ」

「立候補をやめろって言うのか?」

「あ、いや…どうだろうな」

「さっきから水有月君が言ってることは立候補をやめさせようとしているようにしか聞こえないんだけど」

「あ、悪い。実は1年にも生徒会選挙に立候補する奴がいてだな、そいつに当選させてやりたくて」

「なら、正々堂々と選挙で俺に勝てばいい話だ。俺を戦場から離脱させるのは違うんじゃないか」

「あ、そうだな…えっと…悪い」

「じゃあそろそろ練習再開だから行くよ」

俺は再びグラウンドに戻ろうとする中羽の背中をみてふいにこんな言葉が飛び出た。

「俺と勝負しねぇか?」

「勝負?」

「ああ。サッカーの1対1だ」

「なんでそんなことを?」

「もし、俺が勝ったら立候補をやめてくれないか?」

「君何言って────」

「サッカー部のエースなら俺ごときに勝つのは簡単だろ?この勝負は中羽に部があると思うが」

俺は何を言っているのか自分でも理解が追いつかない。

「嫌だよ。俺にはデメリットしかない」

そのとおりだ。

この勝負は俺にメリットがあるが中羽にはデメリットしかない。

なら中羽にもメリットを与えなければならない。

とっさに考えて出した答えがこれだった。

「お前が勝ったら1年の建前には立候補をさせない」

自分勝手なことを言っているのは自覚している。

そもそも建前に何の相談もなく勝手に立候補をやめさせる約束をしてしまっている。

これで俺が負けると建前にも迷惑がかかっちまう。

というか依頼の全く逆のことをしてしまうことになるんだから俺は責任を取っても取り切れないだろうし、

いくつもの罵倒が飛んでくることだろう。

そのリスクを背負い俺は勝負を仕掛けようとしているのだ。

これは俺の願いなのかもしれない。

自分よりも強い奴を望んだ俺の願いなのかもしれなかった。

でも俺は負ける気はない。

「そんなことして平気なのか?

その建前って人の承諾を得てそんなことを言ってるのか?」

「承諾なんて取る必要はねぇよ。どうせお前と選挙で戦ったら負けちまうんだ。だったらお前を下ろすしか方法はないんだよ」

「勝手なことを言うなよ。もしお前が負けたら────」

「負ける気はねぇよ」

「何?」

「サッカー部のエースであるお前をこの俺が負かしてやる」

「ならいい、受けてやる。そのかわり君が負けたら約束は守ってもらうぞ。負けて後悔するなよ」

そう言って中羽はグラウンドに戻った。

勝手な勝負を仕掛け建前まで勝手に犠牲にしようとしている今の俺が大嫌いだ。

だが、今はそんなことを考えてる場合じゃない。

勝てばいいだけの話なのだから。

9話で再び後書きを書かせていただきます。

遠藤 鍵と申します。

さて、物語は結構真剣なムードに入っていきました。

中羽裕登が話したのはこの話がはじめてですね。

そして久々に出てきました、水有月の友達。

苑本翼!

出そう出そうと4話目から思っていて出たのが9話になってしまいました。

セリフは結構少ないけど…

次回は水有月と中羽のサッカー対決となります。

お楽しみにしていただければ幸いです。

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