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霧島万音編“悪魔のオーケストラ”

私の名前は霧島万音きりしまはんね。魔法学園フライクーゲルに通う高校二年生。身長は170センチと高め、髪は鬱陶しいので、いつもポニーテールにしている。部活は管弦楽部に所属、バイオリンを担当している。小さい頃から華奢で運動が苦手な私は音楽こそが自分の居場所であり、将来もこの世界に関係する仕事がしたい。そう思っていた。そんな私の運命が狂ったのは、修学旅行での出来事だった。


修学旅行まで一カ月を切った。私は早く行きたい反面、時間が足りない焦燥感に駆られていた。理由は、今年の修学旅行はイタリアで、ローマでの催しで、オペラ歌手と一緒に私達管弦楽部が演奏するという何とも大役を任せられたからだ。しかもオペラ歌手は現役のスカラ座の歌手で、わざわざミラノから来てくれるみたいだ。凄く緊張する。私は余り心臓が強くない。どちらかと言えば上がり症である。この間も全国コンクールでミスを連発して部長に大目玉をくらったばかり。しかも今回はバイオリンの独奏があり、今でも心臓がバクバクしている。はぁ…。不安で一杯…。

「霧島?」

ボーっとしていた私に部長が声をかけてきた。

「あ、あぁ。部長。」

「大丈夫かお前?あまり思い詰めるなよ。練習では完璧なんだから、問題ないさ。」

「すみません。私…頑張ります!」

「今日は終わりだし、早く帰れよ。」

部長はそう言って部室から出て行った。私も暫くして片付け、部室を後にした。

「ハンネちゃーん!」

帰り道、幼馴染みで同級生のカナちゃんと出会った。

「カナちゃん!帰り道に会うのは久しぶりだね!」

「ハンネちゃん、大丈夫?バイオリンの独奏やるんでしょ?」

「えぇ。すっごく緊張してるの。」

「だよねー。私なら逃げちゃう。」

「ふふ、私も逃げちゃおうか?」

二人して笑いながら帰った。笑ったのも久しぶり。やっぱり友達の存在はありがたい。気持ちが安らいだ。

次の日も次の日も休みの日でさえ、練習は続き、あっと言う間に修学旅行の日になってしまった。大丈夫。問題ない…はず。

親に見送られ、私は学校のバスに乗り込んだ。羽田空港までの道のりは同級生とトランプをしたり、談笑したりして楽しんだ。空港に着き、飛行機に乗ると暫し友達と談笑し、スヤスヤと眠った。私達の出番は三日目最終日なので、緊張感は最終日まで続く。眠れる内に眠っておきたかった。


気圧で耳が圧迫され、目が覚めた。飛行機はちょうど着陸するところだった。イタリアには毎年家族で旅行に来ているけど、毎回飽きない楽しさと美しさがこの国にはあった。着陸後すぐバスに乗り込み、ローマのホテルへ皆で向かう。スペイン広場近くのホテルに到着し、私の気分は更に高くなった。スペイン広場…。ローマの休日を思い出した。あぁ…あのベンチでジェラートを一緒に食べる彼氏が欲しいなぁ。なんて思いながらホテルに荷物を運んだ。

「ねぇ、ハンネちゃん。あれ見てアレ。」

カナちゃんが指差す先には、真っ白の美しい馬車がいた。

「わぁ。凄いねぇ。中世にでも来たみたい!乗ってみたいな。」

「ねぇ、後で見に行こうよ!ご飯前は自由時間だし!」

「うん!行こうね!」

私はバイオリンの事など、もうすっかり忘れていた。点呼をとり、部屋割りを確認した。ラッキーな事にカナちゃんと二人部屋だ!部屋の鍵を受け取り部屋に向かった。鍵といっても必要なのは最初だけで、後は扉が掌紋を記憶してくれる。ドアノブを握るだけでロックが解除されるのだ。仕組みは分からないけど、便利な世の中だと改めて感じた。荷物を置き、一通り部屋を探検した後、カナちゃんと馬車を見に行った。

「うわぁ。」

スペイン広場に佇む白馬は、本当に背景と相まって中世にでも来た気分になった。どうやらこれは、そのような趣旨のイベントで、他にも甲冑を着た兵士がローマの街を闊歩してたりもした。カナちゃんとジェラートを購入してスペイン広場のベンチに座り二人で食べた。ローマの街は人が多く賑やかだ。暫く二人で街をブラブラした。

「aiuto!aiuto!」

テルミニ駅付近の路地裏から男の子が叫びながら駆け寄ってきた。わたしはイタリア語はさっぱり分からなかったが、学校から配られた世界言語変換器を胸に付けた。ブローチ型というのか、胸に装着すると世界中の言語を理解する事が出来るドラえもんもびっくりの魔法機器だ。

「助けて!」

小学低学年生位だろうか。路地裏から軍服を着た兵士が数人走ってくるのが見えた。

「大変!こっちへいらっしゃい!」

「え?え?ちょ、ちょっと!ハンネちゃん!」

私は男の子を連れてダッシュで走った。カナちゃんは驚きながらも付いて来た。駅から協会の通りを抜け、広間まで一キロはあっただろうか、一度も休まずに走り続けた。誰かに追いかけられた事なんて私の人生には無かった。そもそも体力に人一倍自信が無い私はヘトヘトになり、広間にしゃがみ込んだ。

「ちょっと、ハンネちゃん。大丈夫?」

「はぁはぁ。え、ええ…。だ、大丈夫。…じゃ無いかも…。」

男の子に背中をさすられ、追っ手を振り切った事を確認した。

「キミ、も、もう大丈夫よ。悪い人たちは振り切ったみたい。」

「ふふ。ハンネちゃんが走ったの初めて見たよ!結構速いじゃん。」

私たちは嬉しくなり笑った。

「お姉ちゃん、ありがとう!」

「いいのよ。それより大丈夫?また追いかけられるんじゃない?お家は?ママは?」

男の子は首をぶんぶんと左右に振った。

「ママもパパもいないよ。ボクはボクなんだ。」

「…そう。ごめんなさいね。辛いこと聞いちゃった。」

男の子はまた首をぶんぶんと左右に振った。

「違うんだ。ボクには最初からパパもママもいないんだ。」

「????」

私たちは顔を見合わせた。

「ボクは琴座のオルフェウス。ローマ軍がボクとの契約に失敗して、竪琴を壊しちゃったんだ。残ったアークのエネルギーだけをボクというホムンクルス(人造人間)の器に移したんだよ。だからボクにはママもパパもいないんだ。」

この男の子は何を言っているのか私たちはワケが分からなかった。

「え、えっと、じゃあキミは帰る家も無いの?どうして追いかけられていたの?」

「キミじゃなくてボクはオルフェウス。オルフェと呼んでね、お姉ちゃん!」

「あ、じゃあオルフェはどうして逃げていたの?」

「ボクの力はあいつらみたいな悪いヤツには渡さないんだ。あいつらはボクの力を利用して世界の均衡を崩そうとしている。だからボクは逃げたんだ。」

「か、カナちゃん…。」

「とりあえず、ホテルの部屋に連れて行こっか。それで先生に相談しましょ。」

私たちはオルフェをホテルの部屋に連れて行った。もうすぐ夕食の時間だったので、ついでに先生に相談しようと思った。

「オルフェはここで待っててね。」

「うん!」

私たちはオルフェを置いてホテルのレストランに向かった。

「先生、遅れました!すみません!」

「あら。遅いわよ、あなた達。」

私たちは先生にこの、よく分からない事情を説明した。

「…その子は今、部屋にいるのね?」

以外にも先生は真剣な顔で私たちを見た。

「は、はい。」

「…あなた達は遅刻したバツで食事はお預けです。今からその子に会いに行きます。付いて来なさい。」

「そ、そんなぁ。」

私たちは鳴るお腹を押さえながら先生と部屋に戻った。ドアを開けると、オルフェはベッドに座っていた。

「…やぁ。これはこれは…。久しぶりだね、叔母さん。」

オルフェは先生を叔母さんと呼んだ。えっと…どういう事?

「…オルフェウス。信じられないけど、まさかローマにいるとはね。あなたどうするつもり?」

先生はオルフェに整然と話した。え?え?知り合いなの?私たちはワケが分からないまま棒立ちだった。

「時が過ぎ、人間は神への領域に近づきすぎた。出来ることならボクは永遠に眠っていたかったんだけどね。愚かな人間に使われるくらいなら、このままラグナロクが訪れるまで世界を見届けてやるさ。」

「…分かったわ。ただ、貴方がこの地にいるのは危険よね。良かったら一緒に来ない?私のもとにいれば、とりあえずは安全よ。」

「せっかくだけどお断り。ボクは一人また歌でも歌いながら旅に出るよ。」

「…そう。気をつけてね。…あ、あと私たちがいる間はこの部屋にいなさいな。気に入ったんでしょ?」

私たちはハッとなった。余りに理解できなさすぎて呆然としていた。

「よろしくね、お姉ちゃん!」

先生は後は宜しくと言わんばかりに私の肩をポンと一回叩いて出て行った。

「よ、よろしくねオルフェ。」

オルフェはニコっと笑った。その後、一緒にお風呂に連れて行ったが終始顔を赤くしてジッとしていた。こんな小さい男の子でも、やっぱり恥ずかしいのかな?こうして初日からバタバタした一日が終わった。

翌日、オルフェを連れて観光のバスに乗り込んだ。同級生には先生の甥という事で説明し、コロッセオなど観光名所を巡った。オルフェは大人しく付いて回り、同級生から良い子良い子とチヤホヤされていた。夕方は明日の演奏の最終練習をする為、演奏ホールに入った。

「へぇ。お姉ちゃん、音楽やってるんだ。」

オルフェは妙に小生意気な顔で私に言った。

「えぇ、バイオリンよ。明日は有名なオペラ歌手の後ろで演奏するの。凄く緊張しているわ。」

「…見てていい?」

「もちろんいいわよ!」

私はみんなと合同演奏の練習を一時間ほどやり、特に緊張感なく独奏も完璧にやり終えた。

「うまいよ、お姉ちゃん。それなら明日は絶対大丈夫だよ!」

「ありがとう、オルフェ。」

私はオルフェに褒められて嬉しくなった。良く分からなかったけど、妙に自信が付いた。二日目は緊張感も無くなりグッスリ眠れた。

ついに三日目。今日は一日自由行動なので、カナちゃんと一緒に街ブラに出かけた。オルフェは疲れたのか、ホテルから出たがらなかったので部屋に置いてきた。今日はバチカンにあるサンピエトロ大聖堂に向かった。膨大な芸術品と装飾が飾られ、私達は夢中で歩き回った。巨大なオベリスクの前に来た時、カナちゃんとはぐれてしまった。私達は迷子になったら入口に集合と決めていたので、私は入口まで足早に戻った。しかし一時間ほど待ってもカナちゃんは来なかった。私は携帯電話を持っていなかったので、待ち続けるしかなかった。

二時間が過ぎようとした時、軍服を着た男が私の前に立った。

「小娘、ガキはどこだ?」

「!!あなた、あの時の兵隊さん!」

男はオルフェを追い回していた兵隊だった。ヤバい…。

「ガキを連れてこい。お友達と引き換えにしてやる。」

私は心臓が大きくドクンと鳴ったのを感じた。

「か、カナちゃん…。カナちゃんを返してよ!!」

「ふん、騒ぐな。ガキと引き換えだ。つまらない手間をかけさせやがって!すぐにガキを連れてパンテオン神殿まで来い。」

男はそう言って去っていった。どうしよう!私はカナちゃんが心配で怖くて怖くてボロボロと泣いた。走ってホテルに戻り、寝てるオルフェに抱きついた。

「え?え?ちょ、ちょっと?お姉ちゃん??」

「オルフェ、どうしよう!カナちゃんが、カナちゃんが死んじゃう!わ、私、カナちゃんの身に何かあったらと思うと…う、うわぁぁぁぁぁん!!!」

私はオルフェを抱きしめたまま大声で泣いた。恐怖で心臓が締め付けられた。

「お姉ちゃん落ちついて!とりあえず一緒に神殿に行こう!カナちゃんはきっと大丈夫だ。ボクがなんとかする!」

私は普段ならこんな子供の言うことなんて絶対にアテにしないのだが、オルフェの言葉は力強く、目は勇気で溢れていた。

「行こう!」

オルフェに引っ張られ、私は強引に外に連れ出された。神殿までグイグイと引っ張られ、最初に彼に出会った時とは全く逆になっていた。

「ふふ。なんだかなー。冥界を思い出すよ。あの時ボクは勇気が足りなかった。今度は、お姉ちゃんはボクが守ってあげるよ!」

言っている事は良く分からなかったが、私は不安と嬉しさで涙が止まらなかった。

神殿に着くと“本日立ち入り禁止”となっていた。私達は構わず神殿内へ入っていった。神殿は美しい石造りで、奥の封鎖された広間にカナちゃんはいた。

「カナちゃん!!」

「ハンネちゃん!ごめん、わ、わたし、わたし…!」

奥から兵隊が数名出てきた。隊長らしき男がカナちゃんの髪の毛を掴んだ。

「ガキをよこせ!さもなくば、この女は殺す。」

男がカナちゃんに銃口を向けた。

「その子を離せ!ボクはもう逃げない!」

「お、オルフェ…。」

「お姉ちゃん、大丈夫。ボクが行けばお姉ちゃん達は解放されるよ。」

私は行かないで!と言おうとしたが、声が出なかった。オルフェはスタスタと男の前まで来た。

「ほら。その子を離せよ。」

「ふん、その子だと?お前の体で言うと何か可笑しいぜ。…ホラよ!」

男はオルフェの髪を掴み、カナちゃんを突き飛ばした。

「ハンネちゃん…。」

カナちゃんはフラつきながら私の元へ歩いた。しかし、


ガァン!


「カナちゃぁん!!!!」

カナちゃんは背後から胸を銃で撃たれ、音と共にゆっくりと倒れた。その姿がとてもスローモーションに見えた。

「おい!てめぇら!話が違うじゃねぇかよ!!」

オルフェは男達を怒鳴った。私は声にならない叫びをあげた。

「馬鹿かお前?こいつらを生かしておくわけないだろう。おい、お前ら。もう一人の小娘も殺せ。」

男達が私に向かって近づいてくる。私はもう何も考えられなかった。ただ目の前で友人を撃たれ胸は悲しみでいっぱいだった。

「…ふぅ。いつの時代もお前達の様な人間がいるんだな。クズめ!」

「ふん、黙れ。お前はすぐに小僧の体を廃棄してやるわ。」

ふと、頭の中に声が聞こえてきた。

それは間違いなくオルフェの声だった。

(お姉ちゃん、聞こえるかい?カナちゃんはまだ生きている。まだ終わってない!諦めちゃ駄目だ。)

(でもオルフェ。もう駄目だよ…。私もすぐに撃たれて死ぬ。希望は、見つからないよ…。)

(お姉ちゃん。希望はキミ自身だ!!)

(わ、私が希望…?)

(そう。ボクと契約しよう。ボクの全てをお姉ちゃんが受け入れるんだ。そうすれば、カナちゃんはまだ助かる!)

(契約…?)

(その代わりお姉ちゃんはもう普通の人生は歩めない。おそらくこれから今よりももっと辛い運命が待っている。その覚悟が必要なんだ!)

(…オルフェウス。私、貴方と契約するわ!それで、それで…カナちゃんを救って、こんなヤツらやっつけてやる!!)

(ありがとう。良く言ってくれたね、お姉ちゃん。…出会った時からキミの精神エネルギーはボクと完全に同調していた。キミはキミが思っているよりも魂は強く、エネルギーは常人よりも遥かに大きいんだ!)

(私が、そんな…。私は普通の女の子よ…。)

(さぁ、契約しよう…。ボクの名前はオルフェウス。神をも殺す旋律と歌声を貴女に授け、共に生きよう。)

(はい!私の名前は霧島万音!オルフェウス、貴方の力を私にくださいっ!)

その瞬間、オルフェウスの身体は光となって私の身体に吸収された。

「ば、馬鹿な!!こんな小娘が契約だと!?…おい!早く撃ち殺せ!」

男達が撃った弾丸は私の身体をすり抜けた。何発撃っても同じだった。

「あ、当たらないっ!」

「…お前達は許さない!!」

私…いえ、私たちの前に巨大な竪琴の形をした光が現れた。私たちは竪琴を弾き、歌った。その音色と歌声に魅了され男達は動けなかった。

「これが神をも涙する、オルフェウスの竪琴だ。」

突如、目の前に無数の楽器が現れ、私は歌い、楽器達は演奏を始めた。

「悪魔のレクイエム。」

歌声と楽器が奏でるオーケストラを聞いた彼等は肉体も魂もこの世から消え去った。

「灰は灰に…。塵は塵に…。土は土に還れ…。お前達の魂は天界にも行かず、転生を得る事も無い。魂のまま冥界を永遠に彷徨い続けるがいい。」

私は命が尽きようとしているカナの身体を楽器達と一緒に取り囲んだ。

「聴いて…。癒しのワルツを。」

楽器達は演奏を始め、私は歌った。カナの傷口はみるみる癒され、銃痕は完全に消えた。心臓は…動いている!

(お姉ちゃん、ボク達は彼女の記憶を消さないといけない。ボク達の力は知らない方が良いんだ。)

(…そうね、オルフェ。)

私は忘却の力を使い、カナちゃんのオルフェに関する記憶を消した。



《同時刻 ホテルにて》

「ママ、南の方角で強い共鳴…!」

「…えぇ。この共鳴はおそらくスーパーアーク…。」

「行かなきゃ!」

「待ちなさいアリサ。私が様子を伺います。」

「…分かった。気をつけてね、帰って来てね。」

「えぇ。約束よ。」

サラはホテルを出ると南のパンテオン神殿まで空高く飛んで行った。上空から見えるのは無数の光輝く楽器と少女。取り囲んでいた兵士達は塵になっていく。

(霧島さん…?)

霧島万音が同級生を治癒している背後に隠れていた狙撃兵が二人を狙っていた。サラは兵士が引き金を引くよりも早く兵士を狙撃する。サラの撃った弾丸は弾倉から発射される前に狙撃兵のこめかみを撃ち抜いた。



カナちゃんをホテルのベッドに運び、先生に事情を全て話した。

「…分かったわ。…霧島さん、あなたはオルフェウスのアークを持つソーサリオンよ。」

「?アーク?ソーサリオン?」

「詳しい事はまた説明するわ。」

「…はい。」

「あなたは私の組織にいらっしゃい。この世界の現実とこれからの世界の運命を知ってもらうわ。」

「…わかりました!」

「とりあえず部屋に戻りなさい。これから演奏があるんでしょ?」

「演奏は、もう大丈夫です!私はもう一人じゃないもの。」

先生はコクリと頷き、私は部屋に戻って、寝ているカナちゃんを起こさないように気をつけた。



協会を貸し切って演奏会が始まった。私はもう緊張感は全く感じなかった。独奏の場面になると、力強く、音楽に魂を込めて演奏した。その場にいる全ての観客が涙を流し、歌手もスタッフも全ての人が感動に包まれて泣いた。演奏会は大成功となった。

後でオペラ歌手やスタッフ達にスカウトの声をかけられたが、私は丁重に断った。みんなには理解出来ない!と怒られたが、私は…もう普通の生活が出来ない事が分かっていた。


(改めてよろしくね、お姉ちゃん!)

(えぇ、こちらこそ!…ところでコレからお風呂に入るけど?)

(…………ぼ、ボクは目をつむってるよ。)

(ふふふ。馬鹿ね、コレからずっと一緒じゃない。)

(……………………。)

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