プロローグ
「ソーサリオンズ!」
まだいらに
プロローグ
時は人が誕生する遥か昔。神と、かつて神であったものとの争いは千年以上続いた。かつて神であったものは邪悪なる魔物となった。やがて神は邪悪なる魔物を聖なる神具、武器にその魂を封じ込めた。そして神々もまた、自らを神具、武器へと姿を変えて永遠の眠りについた。それらはアーク(聖櫃)と呼ばれた。
のちに人間による世界が進み、邪悪なる魔物を封じ込めたアークを手にした者は悪魔となり、神々のアークを手にした者は英雄や神の化身となった。
23世紀に入ると科学は全て解明され、ついに人々は神話さえも科学で解明してしまった。アークに封印された神や精霊や魔物のエネルギーの解析に成功した。自然界には精霊が存在し、精霊達の自然エネルギーを使って火や大気や水を生み出した。それは魔法と称され、その力が万能である事から従来の科学による世界の均衡は崩壊した。人類は魔法によって最終進化を歩み出した。
こうして、世界中でさまざまな魔法実験が行われた。やがて魔法を兵器にも応用し、軍事バランスは崩れ、各国は世界に台頭しまいと争うようになった。
2350年8月、ロシアによってアメリカの核兵器が魔法により破壊された。これに怒り、脅威を感じたアメリカは、同年10月、魔法兵器による報復と制裁を開始。魔法による第三次世界大戦が始まった。
2450年8月、アメリカ、日本、イタリア、イギリス、フランス、カナダ、ドイツのG7が連合を結成、ロシアを筆頭とした各国の沈静化に成功。百年に渡る魔法大戦は終息した。
2588年12月、ドイツの魔法学者であるマルクス・ミューラーはアークが出すエネルギーを感知する事が出来る実験に成功した。この実験は非人道的かつ、失敗のリスクが高かった為、非公表とされた。しかし、ミューラーはドイツ政府を離れ、この魔法技術を各国に売ってしまった。これにより各国が世界中に散らばったアークを手に入れようと秘密裏に捜索を始めた。
ミューラーが行った実験は、アークが持つ特異なエネルギーを人間に移すことが出来るのかといった実験だった。アークを魔法によりエネルギー結晶体にまで分解し、自身の精神エネルギーと同調させた。彼はこれを、“神魔契約”と呼び、契約に成功すればソーサリオンと他のアークが共鳴出来る事が分かった。しかし驚くべき事がもう一つあった。それは契約したアーク自身に封じ込められた神や精霊、邪悪なる魔物の力を得る(使う)事が出来たのだ。人間が神に近づくのである。だが、契約が成功する事は極めて稀であり、契約に失敗した者はその命を失う。これは各国の実験により明らかになった。
神に選ばれた者は魔法使いの意を込めソーサリオンと呼ばれた。
2590年9月、マルクスの妻であるサラ・ミューラーは同じくドイツ政府で働く魔法学者であったが、アークによる第四次世界大戦が勃発する事を恐れドイツ政府機関を脱退した。脱退後すぐに、アーク狩りを止める為の組織“フライクーゲル”を設立。自ら陣頭指揮を執る事もあった。
そして26世紀。表向き世界は平和であった。魔法学者により魔法エネルギーの研究が行われ、営利目的として魔法の技術が日常的に見られるようになった。空が渋滞する時代にもなり、最近になってようやく小型の飛行艇やスカイボードに対する航空法も法整備が定着した。
しかし裏ではアークの争奪戦が繰り広げられた。
表向き世界は平和であった。