卒業式
新しいの書いてみました。
3/1改稿
代々優秀な魔導師を輩出してきた名門、リーゼンギフト家。
私、ライザ・リーゼンギフトはその末に生まれました。ですが、私には魔導師としての才能がなかったのです。
魔導の要たる魔法陣はうまく書けず、魔導書は開くと暴発しました。
魔力が普通の倍以上あったから魔導学校に入学することは出来ましたが、成績は目も当てられない状態。
その上、兄様は優秀な魔導師です。
兄と比較され、酷く貶されることは日常茶飯事でした。
でも、そんな日々は今日で終わりです。
今日は魔導学校の卒業式。
…「アルバート・ライカンギフト!」 「ベアトリス・レーザーフォン!」 「カーランド・リンドギフト!」…
次々と同じ学年の生徒の名が呼ばれ、卒業証書と記念の魔導書が渡されていきます。
この国では、魔導学校卒業時にそれぞれにあった魔導書を渡される事になっています。
学んだことをその先の生活に役立たせるため、だそうです。
ここに並ぶ生徒は皆、自分がどのような魔導書を貰えるのかが一番楽しみなのです。
それは私も例外ではありません。
どんなに魔導が下手でも、これだけは楽しみなのです。
「ライザ・リーゼンギフト!」
ぼんやりと考え事をしているうちに、自分の順番になっていたようですね。
私は椅子から立ち上がり、中央の通路に敷かれた赤い絨毯の上を歩き出しました。
それを終わりまで歩けば、私の魔導学園生活は終わりを告げます。
口元がゆるむのを抑えるのが大変です。さすがにここで笑う訳にはいきませんから。
私はさらに数歩進み、壇上で卒業証書と魔導書の入った包みを受け取りました。
*
卒業式が終わり、私は忙しい両親の代わりに来ていた兄様と合流しました。
兄様の名前はクリストファー・リーゼンギフト。
≪金の閃光≫の二つ名を持つ優秀な魔導師なのです。私など足元にも及びません。
そのうえ、妹の私から見ても格好良いのです。
言い寄ってくる女性は昔より少なくなりました。それでも誕生日には部屋一つが花やらお菓子やらのプレゼントで埋まってしまいます。
今日もどこから聞きつけたのか駆けつけてきた女性達のせいで、門の外に止めていた馬車にたどり着くのに苦労しました。
「今更だけど、おめでとう。ライザ。」
家に向かう馬車に乗り込んだ後、兄様が言いました。
「ありがとう、兄様。」
「そうだ。ライザ、まだどんな魔導書をもらったのか見ていないんだろう?開けてみたらどうだい?」
兄様は私の膝の上に置かれた包みを指して言いました。
先程のごたごたのせいで、一番楽しみだったことをすっかり忘れていましたね。
私が包みにまかれたリボンを解き、包装紙をはがして出てきたのは、一冊の古い本でした。使われている紙も黄ばんでいますから、ずいぶん古いものなのでしょう。
「ライザ、それちょっと貸して?」
私が本を取り出すのを眺めていた兄様が言いました。
何か気になるところでもあったのでしょうか。
本を手渡すと、彼はページをパラパラとめくり始めました。
「これ…魔導書じゃないよ。」
読んでくださってありがとうございます。
魔導師と魔法使い(魔女含む)の違いの説明だけさせてください。
魔導師:魔導書を使い、魔法陣を媒介にして魔導を発動。魔法より時間はかかるが、威力が強い。長い杖を使う(魔法陣書く用)
魔法使い:呪文集を使い、呪文を媒介にして魔法を発動。速射できるが、魔導よりも威力が弱い。
似たようなものですが、向き不向きがあるようです。(ライザちゃん然り)
それだからこそ同族嫌悪で対立してます。
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