第二話 -魔術師の戦い-
ありえない…なんで今日はここまでハプニング続きなんだよ…。
いつもならそう一人でつっこんでるのだが、今はそんなことしてられない。
当然だ。家の前に頭から血を流した少女が居たのだから。
とにかく血を止めなきゃ…、そう思い悠斗は少女を家の中に運んだ。
そしてすぐに包帯などを持ってきて止血などをした。
「ったく、今日の保健の授業で応急処置やっといてよかったぜ…」 いつもなら寝ている保健の授業。しかし今日は教室内の誰一人として寝ていなか
った。
それもそのはず、担当の先生が休みで鬼付先生が来ていたのだから。。
いやーな事を思い出しながら止血していって、やっと傷を塞ぎ終えた。
ふぅー、っと一息ついたのもつかの間。
少女が起きたのだった。
彼女は今いる状況がまったく理解できずにおろおろしていた。
「大丈夫か…?」と悠斗が声をかけるとビクッっと反応し、怯えた目で見ら
れた。
俺って怖いのか…?と一人で肩を落としていると、彼女の口がついに開いた。
「ここは…日本ですか?」
悠斗は質問の意味が全く理解できなかった。冗談か?冗談だろ?当然そう思った
が、彼女の目は本気で聞いていた。
「そ、そうだけど…?」とりあえず返事をすると彼女は安心したのか少し笑みを浮かべて言う。
「よかった、まちがったところに落ちたらどうしょうかと思った…。」
「はい...? 落ちる...? どこから…? まさか空とか言わないよね…?」
相手がけが人だということを忘れて質問の嵐をふっかける。
だが彼女は平然言った。
「空といいますか、正確に言えば魔力でつくった時空のひずみから落ちたんです
けど。」
魔力?時空? そんな非現実的な単語を突然並べられて悠斗は混乱していた。
そんな様子の悠斗を彼女は不思議そうに見ながら言う。
「えっと、理解出来てないみたいですけど大丈夫ですか?」
はい?、と悠斗は耳を疑った。
魔力を理解しろ?時空を理解しろ?普通の高校生にそんなこと理解できるはずも
ない。
いや、普通の人でも理解できるような内容ではない。
「お前一体なに言ってんだよ、魔力なんてあるわけ無いじゃん…」
呆れた顔で悠斗が言うと、彼女はすぐに返事をする。
「だって私はイギリスから来たんですよ?」
「い、イギリス……?」
…もう言い返す気にもならない。
ため息をついて窓の外を見てみるともう夕方になっていた。
もうそんな時間なのかと時計を見ると、針は3時を指していた。
…夕方? おい待てよ、まだ3時じゃーか…。
ではこれは一体何なのか…。
悠斗は見てすぐに理解できたのはただ一つだけ。
巨大な火の玉がこちらに向かって来ている。
「一体なんだよ…あれ…」
指を指した先を見た彼女はただ平然と言う。
「もう居場所がバレちゃいましたか…。」
ちょっと後ろに居てください、そう言うと彼女は手を前にかざし口を開いた。
「 」
おそらくどこかの国の言葉なのだろうが、なんと言ったのかは悠斗には分分からない。
しかしその一言がきっかけで何かが起きたことはわかった。
目の前まで来ていた火の玉が突然砕け散ったのだ。
その衝撃と爆風に吹き飛ばされ悠斗は頭を打ってしまった。
意識が薄くなってゆく中に彼は言った。
「お前一体何者なんだ?」
その質問に対する返事はすぐに返ってくる。
「…私は…魔術師です。」
その彼女の一言を最後に悠斗は意識を手放した。