第六章
「やったぁ!あたし、すご~いっ!」
「お前、今さっきの技どこで習ったんだ?」
きょとんとしてベラはグレンを見た。
そんな質問をしてくるとは思っていなかったのだ。
「お父さんに教わったんだよ」
グレンは、ぶつぶつ独り言をつぶやき始めた。
「あの技は・・・。でも、彼しか知らないはず・・・。でも、召喚魔法は彼ぐらいしか・・・。人魚の国のルアナとヘレンは知ってるかもしれない・・・」
しかし、グレンの独り言はベラの声によって打ち消された。
「あーっ!ねえ、ステンドグラスだよ!すっごくきれい!でも、ここで行き止まりだ・・・」
グレンは公爵家の跡取りである。それ故、王宮には頻繁に出入りしている。だから、このステンドグラスのトラップも知っていた。
「1,2,3で飛び込むぞ」
「えーっ?飛び込むって、どこに?まさか、ステンドグラスとか?」
「そのまさかだ。1,2,3!飛び込め!」
ベラとグレンはジャンプして、光り輝くステンドグラスに向かって飛びこんだ。
☆
「痛ーい。頭打ったぁ。ここどこ?」
「ここが謁見室だ」
「へえ、すごーい!あ、さっきのステンドグラスだ!」
ベラ達が今倒れこんでいる場所の後ろには、さっき見た美しいステンドグラスがあった。
そのステンドグラスには赤紫の大きな花と、淡い水色のドレスを着た妖精のような女性が描かれていた。
(すっごくきれいな花だなぁ。なんていう名前の花なのかな?それに隣の女の人!なんてきれいな人なんだろう!)
「この花はフラルティアという名前だ。それに、隣の女性は初代女王だ」
まるでベラの心を読んだかのようにグレンが言った。
(ふぅ~ん。フラルティアかぁ。きっと、すごく大昔からある花なんだろうなぁ。だって、初代女王がこの国の女王になったのは二千年前じゃなかったっけ?ん?あれ?こんがらがってきた・・・)
「馬鹿か。二千年前なわけないだろ」
ベラは文字通り飛び上がり、尻餅をついた。
「え、え、え、え、どうして!?何で、あたしの思ってる事分かるの!?」
グレンは冷たい目でベラを見下ろし、言った。
「お前、さっきからずっと思ってる事を口に出して言ってたぞ」
「え?そうなの?口に出してた?」
「ああ」
(あたしって、こんな子だったっけ?思ったこと口に出すような馬鹿だったっけ?でも、グレンの口調がさっきまでのよそよそしい感じじゃなくなってる・・・)
それにしても、何かがおかしい。ベラはそう感じ始めた。
さっき、グレンはここが謁見室だ、と言っていた。でも、なぜ人がいないのだろう?
その時だった。
ギ、ギ、ギ、ギ、と変な音が聞こえてきた。
さらに、ミシミシと何かが軋むような音まで聞こえてくる。
(なんか、グレンに会ってか色々とハプニングが起こってる・・・。これから、あたしの人生どうなるんだろう?)