第四章
「ああ・・・出口!?やったー!あたし天才!」
出口が見えてきて、ベラは嬉しくなった。
(これであたしも英雄の仲間入り~)
「待て、バカが。出口が見えたからって、有頂天になってたら罠に嵌まる」
「え~、そんな事ないって!ほら見て・・・ってぎゃー!!」
ベラが一歩踏み出した場所を皮切りに、通路全体に長さが5メートル程の落とし穴が現れた。
「ねえ、助けてよ」
「悪い。取り込み中だ」
ちなみに、ベラは今、落とし穴の淵に両手だけかけているとげいう状態だった。
しかし、落とし穴はつるつるで、足をかけられそうなでっぱりもない。
仕方がないので、ベラは両手に体重をかけて足を持ち上げた。
「ちょっとは助けてよ」
やっとの事でベラは穴から這い上がった。
「お前、ジャンプであそこの淵までいけるか?」
落とし穴は通路全体に、長さが五メートルぐらいはあるのだ。
「ジャンプでいけるなんて、ありえない!もうそれ、絶対に人間じゃない!」
「じゃ、魔法使うしかないか」
それから真っ黒な杖を取り出し、なにやら唱え始めた。
(こんな言葉、聞いた事ない!それとも、早口なだけ?)
ベラが見ていると、どこからともなく風が吹いてきている気がした。
ラズベリー色の長い髪が一筋、宙を舞う。
「え?風?」
そう呟いた時、何かが壊れた。そして押さえ込んでいたものが一気に流れる。
「うわっ!ちょっと、グレン!飛ばされるよ~」
押さえ込まれていたのは、風だったのだ。
「それが目的だ。合図をするから、そのタイミングで飛べ」
グレンが目を閉じる。
そうしている間にも、風はどんどん強くなっていく。
「今だ!」
ベラは足に力を込め、跳んだ。体が見る見るうちに宙に浮き、向こうの淵まで飛ばされた。
しかし、風は止まりそうにない。
「止まらないんだけど!」
「ああ。お前には出来ないのか。術の解除」
「あたし、術かけた人じゃないし。そもそも、杖も出せないし・・・って落ちるー!」
ベラは三メートル程の所から、墜落した。
原因は、グレンがきまぐれに風を止めたからだ。
「ねえ、ちょっと!なんか言う事あるでしょ!?」
「もうすぐ出口だな」
「待ってよ!話題変えないでよ・・・・。わあ、すごい!」
ベラ達が出たのは、巨大なホールだった。そこらじゅうの壁に、黄色とオレンジの六角形があしらってある。ホールの中心には、金髪のくるくるの巻き毛の少年が立っている。
「ようこそ。蜂の間へ。このトレビア~ンな僕とのバトルをお楽しみくださぁい」
「え?トレビア~ンなバトルって?」
ベラは発音を真似して言った。
「ベラ、いちいち真似しなくてもいい」
すると今度は少年の方が目をぱちくりさせた。
「えぇ?この僕とのトレビア~ンなバトル、何でするか知らないの?」
大袈裟に聞いてみせる。
ベラとグレンは無言で頷いた。
(あー、むかつく。こいつは一体何者なの!?)
少年が言った。
「選抜テストの一種だよ。僕に勝てば、先に進める」