肆話 コタエノナイコクハク
お化け屋敷から出会た後も行きたいところを転々と回った。
ゴーカートに360度回転する絶叫系アトラクションのルーピングスターシップ、迷路から脱出するヘンゼルの森と色々な所を周った。
遊んでいると、悩みや罪悪感など心に重くのしかかる物は奇麗にとはいかずとも、一時でも忘れることができた。
ただ純粋にこの一時一時を楽しんでいた。
昼は軽く食べてまた遊ぶ。
そのまま日が沈み始めるまで遊び続けた。
だが、そんな夕陽を見てそろそろ締めにしようかと最後の遊具へと乗ることにした。
最後に乗る遊具は観覧車。遊園地と言えばの定番中の定番だ。
乗る組み合わせは俺と香苗、鈴音と政宗だ。
何やら仕組まれていた気もするが、まぁいい。今は楽しもう。
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これまでずっと考えてたけど、やっぱり私はどっちも欲しい。
でも、無理だよね、そんなことは。
だから私は...無理にでも結論を出すことにした。
彼からだったんだ過ちを犯したのは。あくまでも彼からなんだ。
自ら過ちを犯した罪の意識がある。繋がったことによる情もある。
もし、それらをちぎり捨てて彼女を選んだなら、私はそれまでの人間だ。
だから、彼女が彼に観覧車で告白するのは見逃そう。
その結果から、今後の事を決めよう。
もし二人が付き合ったのなら、その時は素直に引くことにしよう。きっと、それならあきらめもつくだろう。
でも答えを保留にでもしたのなら、もう諦めない。諦められない。
諦めることなんてできない。できるはずない。
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観覧車はゆっくりと上へ上へと昇っていく。
向かいに座る香苗の髪は夕日に照らされて、温かみのある明るい色に染まる。
火照った頬に潤んだ瞳。
美しい。ただそう思うだけだ。
「あ、あのさ」
妙に緊張したような声色で震える声を香苗は発す。
「ん?」
「私、清明君のことが好きです‼つ、付き合ってください!」
あぁ、緊張の理由も違和感の理由もこれか。
嫌な予感というのも、鈴音が何かを起こすのではなく。この告白のことか。
以前の俺ならば顔を真っ赤にしてすぐに答えを出すだろう。
でも、この告白を聞いてすぐに出てきたのは鈴音の姿だ。
それ以前に、この告白を嬉しいと素直に思っていない時点でこの告白を受ける資格は俺にはないだろう。
でも、この関係を壊したくもないし、香苗を悲しませたくもない。
「嬉しい。けど、返事は少し待ってくれないか」
「うん、急にごめんね。焦らなくていいから」
香苗の表情は達成感と嬉しさ。だが、その間に恐怖の感じもある。
ごめん、香苗。不安にさせてしまうだろう、全部俺の欲なんだ。
ハハッ、もう何を思っているのかもわからないな。
嬉しいわけでも悲しいわけでもない。
もう壊れ始めているんだ。
それからの観覧車の中には気まずさだけが残り、目を合わせることさえかなわなかった。
そのまま帰るまでの記憶はボンヤリとしていた。
これからどうしようか。返事は一週間、長くとも二週間以内には返さなければならないだろう。
だから諸々の事をその間までには済まさなければいけない。
まずは、鈴音からの関係から正そう。
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観覧車から出て二人を見ると、気まずそうな雰囲気を纏っていた。
頬を火照らせてはいるが、目も合わせずに悲し気な表情をしている。
雰囲気は最悪、きっと告白は失敗に終わったのだろう。
けれどもここでは何も言わない。普段空気を読めない政宗ですら空気を読んでたんだ。
けれども私は知る必要がある。知る権利がある。
夜、家の中で香苗にLIMEでチャットを送ろうか迷っている時に、香苗からLIMEが来た。
香『あのね、聞いてほしいことがあるんだ』
聞いてほしい事...今日の告白のことか。
鈴『どしたの?』
香『清明君に告白したんだけど、返事は待ってほしいって』
予想はしていたけれども、保留...私は何喜んでいるんだろう。
いや、嬉しい。うん、嬉しい。これを嬉しいと言わずして何と呼ぶか。
清明の頭の中に浮かんだのはきっと私の姿だろう。
それを思うだけでも心がどきどきと言って、嬉しい悲鳴を上げる。
香『脈ってあると思う?』
脈...きっと返事を待った時点であるんだろう。というか、彼は香苗が好きだ。
でも、それを素直に言うのはなんか嫌だ。
鈴『私、恋愛経験あんまりないから良く分からないけどあると私は思うよ』
これを打つだけでもギクシャクするけども、でも清明の意思をつぶすのはそれ以上に嫌だ。
香『そっか。ありがとう』
香『元気出たよ』
香『お休み。また明日』
鈴『うん、お休み』
明日から清明に猛アタックしよう。そう決めて布団へと潜った。




