表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/51

重なる想い ③

 夜も更け、アリアはベッドに力なく身体を横たえる。

 二度目のキスのあと、二人はディートハルトの私室へ移動していた。

 ぼうっとするアリアのもとに、ナイトガウンを羽織ったディートハルトが水を持ってくる。


「……アリア。痛むところはないか」

「痛いところは、色々ありますが」

「すまない……」


 水を受け取りつつも、アリアは夫を恨めしそうに睨みつける。彼に肌を見られるのはまだ恥ずかしくて、一糸まとわぬ身体は毛布で隠した。

 そんな彼女をディートハルトは愛おしそうに見つめてくる。彼が隣に座り、腰を抱いて髪にキスしてきたものだから、アリアはこれ以上ないほどに全身を赤くした。


(ああ~もう! 恥ずかしい! 結婚当時の私、よく何も考えず初夜のお誘いをしたわね!?)


 あまりのことに、アリアは毛布で顔を隠す。すると、ディートハルトが苦笑するのがわかった。

 二人の結婚から、半年以上が経過している。

 精神的な繋がりは深めていたものの、これまで一度も身体を重ねていなかった。しかしこの晩、彼らは名実ともに夫婦となったのだ。


(二度目のキスのあと、旦那様に『俺の部屋に来ないか』と誘われて……。そのまま……。キスだって、数えきれないぐらいして……)


 ベッドに入ってからの彼が情熱的すぎて、もう何度キスしたかもわからない。

 一度目から二度目までは半年以上かかったというのに、三度目以降は数えられなくなるなんて思いもしなかった。

 この部屋であったことを思い出し、彼女は毛布をかぶったまま力なくベッドに倒れ込んだ。

 彼も続いて横になり、毛布の上からアリアを抱きしめてくる。労わるように腰をさすられて、アリアは「んん……」と言葉にもならない声を漏らした。


「アリア……」


 名前を呼んでくる彼の声は、蕩けるように甘い。ウブなアリアなど、それだけでどうにかなってしまいそうだった。


(も、もう無理……! 本当に無理っ……!)


 二度目のキスをして、夜をともにし、心も身体も繋げた。

 彼を愛するようになったアリアにとって、それらはとても幸せな時間だった。それでも恥ずかしいものは恥ずかしい。

 自分がどんな声を出していたのか、どんな表情をしていたのかもわからない。

 全てをさらけ出してしまった気がして、どんな顔で彼と向き合えばいいのかわからない。

 アリアは毛布にくるまったまま丸まり、芋虫のようになっていた。


「……すまない。勝手をしすぎたか」


 アリアの態度のせいか、ディートハルトが後悔を滲ませる。

 彼は騎士で、男性の中でも体力も力もある。そんな自分に付き合わせたせいで、アリアに嫌な思いをさせてしまったと思ったのだろう。

 けれど、アリアは彼にされたことを嫌だなんて思っていなかった。


「……そんなことは、ありませんが。優しかったと、思います。ただ、恥ずかしいだけで……」

「そうか」


 誤解されたままにするのも嫌で、彼女は毛布から顔だけ出す。懸命にそう伝えると、彼は安心したように微笑んだ。


(……旦那様だって、初めての夜のあとにこんな態度をとられたら不安よね)


 そう思い直したアリアは、少しだけ毛布をめくる。


「……布団、入ってきてもいいですよ」


 羞恥心が抜けずにつっけんどんな言い方になってしまったが、ディートハルトはそんなこと気にせず毛布の中に入ってきてくれた。

 今度は、彼の手がアリアの素肌に触れる。先ほどまでのことを思い出してむずむずするけれど、心地いい。

 そうして抱き合い、静かな時間が流れた。アリアがまどろみ始めた頃、ディートハルトが口を開く。


「アリア。俺たちに付き合ってくれて、ありがとう。さっきは弱気なことを言ったが、呪いを解くことをまだ諦めてはいない。それに……もしも解呪できなくても、俺は今と変わらず、きみとルカとともに暮らしていきたいと思っている」

「旦那様……」


 そう言ってくれるのは嬉しい。でも、アリアは「解呪できなくても」という彼の言葉に頷くことはできなかった。


「旦那様。やっぱり、マルガレーテ様に解呪をお願いしてみてはどうでしょうか」

「だが、俺はきみに……」

「わかっています。でも……」


 アリアは少し考えてから、自分の望みを彼に伝えた。


「私は、ステラさんの気持ちを大事にするあなたのことが好きです。そういう優しさや誠実さを尊敬しています。……でも、あなたとルカが触れ合い、笑い合う姿も見たいのです」

「……」


 アリアは今、ディートハルトとは違う考えを口にしている。それでも彼は何も言わずに耳を傾けてくれた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ