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look at this・・・002 玉が揺れる音

 「けん玉が揺れるとき、自分の心も揺れるんだよ」

そう言ったのは隣の席の結人だった。


無口でクール誰ともかかわらない、彼が珍しく話しかけてきた。


朝のけん玉タイム、今朝も皿の上で何度も逃げた。

昨日は成功したのに、ちょっと悔しい。

(気持ちが外れているとき、もしかして、玉、乗らないのかな)


結人は玉を引き上げ、トンと大皿に乗せた。皿が玉に引き寄せられるように・・・。


 「上手・・・すごいよぉ」

 「んーっ、これだけはね、小さい時じいちゃんと、毎日やってたんだぁ・・・・」

結人が言った。

 「何もしゃべらない無言な時間が、好きだった、理由はないけど・・・」


その一言が瑞希の中に残った。

"しゃべらなくてもいい時間"

空気と一体になる時。無言でも何かを発見できる時間。

 その日のことづてに、瑞希は、《心の声、聞いてみる》そう、書いた。


午後、学活の時間

テーマは「挑戦と失敗」についての意見交流があった。


クラスの一人が言った。

 「成功しないと意味がないじゃないの? 失敗って、ただの無駄な時間」

その言葉が瑞希の胸に、何かぶつけられた感じを覚えた。自分に言われている気がしたからだ。


 「違うと思う」手を挙げて発言したのは結人だった。

 「失敗って、"今"を感じるざいりょうなんだよ、できない時の自分を成長させるためのものだと僕は思う」


 教室は一瞬シーンと静まり返ったあと、拍手で歓迎された。

瑞希も胸を熱くした中の一人だ。


その日瑞希のけん玉は成功しなかった。

玉が揺れる時自分の呼吸の音が聞こえた。

 《ゆっくりとした時間、長く感じた》とことづてに書いた。



次の朝結人の書いたことづてが目に留まった。《聞こえたよ》

声にしていない言葉が誰かに届いていた。



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