中間試験
中間試験
まったく気にしていないとはいえ、受けないわけにもいかないのが学生である。
カロスタークであっても、だ。
筆記試験は『まぁまぁ』できたとホッとした矢先、木剣持って実技に入る。
「だよねー」
力を抜いて天を仰いだ。
真正面の青空がまぶしい。
剣部門一回戦。
史上まれにみる勝負の末、カロスタークは闘技場で倒れていた。
仰向けなのは・・・。
「マジ?」
静まり返っていた観客席から声が上がる。
直後、割れんばかりの爆笑が天に噴き上がった。
主審の『開始』の合図で、斬りかかってきた相手の剣先を避けたカロスターク。
体をのけぞらせた形のままタタラを踏んで、尻もちをついた。
そこへ、次の一手を突いてきていた相手がつまずいて転んだのだ。
押し倒される形で倒れたので、仰向けなのである。
これが、女性剣士相手なら新たなロマンスが産まれもしようが・・・。
「チッ、なんなんだよ!」
起き上がったのは平均的な感じの、よくいる男子生徒だった。
文句を言いながらもカロスタークに手を貸してもくれて・・・。
なにごともなく別れることになる。
開始から五秒。
カロスターク・レッドルアの中間試験は、こうして幕を閉じた。
「見事な負けっぷりだったね」
早々に終わったので観客席に移ると、ギョームが笑いかけてくれた。
個人戦は明日からなので、余裕そうだ。
「お疲れ様です」
タオルと水を差しだしてくれるのは丁稚のトマである。
「こっちはどんな感じ?」
タオルで顔を拭き、水を口に含む合間で聞いた。
「順調に勝っているよ」
『三対三制』。
三人ずつでパーティを組んで戦う方式である。
基本は剣や槍の前衛職。
守りを固める盾の壁役。
弓ないし魔法の遠距離職。
これで戦い、優劣を決めるのだ。
クルールたちは、その中で勝ち続けていた。
細剣を手に、華麗に舞うセザール。
相手の攻撃を剣であれ、魔法であれ全て弾くリシャール。
その壁に守られて必殺の一撃、氷の礫を撃ち出すクルール。
見事にバランスの取れた連携が、他を寄せ付けない。
カロスタークのような素人が見ても、強いのが分かるほどだった。
「なぁ・・・」
クルールたちが準決勝にまで勝ち上がったところで、カロスタークがギョームに声をかける。
「どうした? なんか顔が暗いぞ。腹痛か?」
「違う!」
子供か!
お約束のツッコミをしたあとで、カロスタークは真顔になった。
「すごく嫌な予感がするんだけど。どう思う? って、これじゃわかんねーよな」
「当たってると思うよ」
「は?」
かなり抽象的な問いかけをしたつもりのカロスタークは、驚いてギョームの顔をまじまじと見た。
「オレが何のことを言っているかわかるのか?」
「クレールが企んでるっていうか、嵌めてるって話でしょ?」
「やっぱ、そうなのかな?」
「彼女らしくないとこが多すぎるからね」
「平穏無事に終わってほしいよぉぉぉぉ」
よよよよよっ、と泣く真似をするカロスターク。
「やめてください。キモ過ぎます」
呆れ顔で身を引くギョーム。
「カロスターク様、お茶をお淹れしました」
淡々とお茶を入れるトマ。
一時、彼等の周囲はカオスだった。
中間試験実技『三対三制』の部もいよいよ決勝。
「とうとう来たか」
出てもいない額の汗を拭うカロスターク。
「来ちゃったねぇ」
仮面のような微笑を崩さないギョーム。
「お茶のお替りいりますか?」
お茶の心配をするトマ。
ことは佳境へと進んでいる。
評価いただけると続編を書く意欲に直結します