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97絶望と絶望と絶望に浸る街、バランタイン
例の事件から三十日が経過した。
何も変わらない。
何も変わることのない日々。
山のふもとには、今日も佇むだけの男がいる。
ただ、ひたすらに、動くこともなく、ただただ佇むだけ。
雨は上がり、風もない。動くものもないので、音は何もしない。
無音・・・それがただ佇むだけの男を包み込んでいた。
バランタインは未だ一面が白と黒のモノトーンの世界。
無音に包まれながらも、今日も、山のふもとに男は佇み、元々街があったと思われる場所の一点を見つめるだけ。