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96絶望と絶望と絶望のみの街、バランタイン
例の事件から十四日が経過した。
連日の黒い雨の影響なのだろうか。
山のふもとにいる男が手に握っていた、黒い物体が形もなく音もなく崩れ去った。
その跡には、黒い灰が人型の形をして残っていた。
山のふもとで佇むだけの男は、握るものを失い、手をダランと下げる。
バランタインは未だ一面が白と黒のモノトーンの世界。
男は握るものを失いがらも、元々街があったと思われる場所の一点を見つめるだけだった。
男はまだ生きているようである。