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95絶望と絶望と絶望しかない街、バランタイン
例の事件から十日が経過した。
黒い雨は上がった。
ただ、それだけである。
ただのそれだけであって、何も変わることはない。
山のふもとには、黒い人型の物体をただ握るだけの男が佇んでいる。
男がただ一点を見つめる先には、一面の白と黒のモノトーンの世界が広がっている。
ただ、それだけ。
雨があがっただけで、何か変わることはなかった。
男は今日も黒い人型の物体の手の部分を握りしめながら、元々街があった場所、ただ一点を見つめる。