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91絶望と絶望と絶望の街、バランタイン
例の事件から一日が経過した。
何も変わらない。
山のふもとには、黒い人型の物体を握る男が佇んでいる。
変わったのは天気だけ。
真っ黒な空からは、雨が降りはじめた。
雨粒は不思議なことに黒い色をした液体だった。
バランタインは一面が白と黒のモノトーンの世界だが、雨が一層黒色に仕立て上げた。
男はただ、ただ、黒い人型の物体の手の部分を握りしめながら、元々街があったと思われる場所の一点を見つめるだけ。
雨は男にも降りかかるが、男は微動だにしない。