90絶望と絶望と絶望と・・・
ここからは絶望の章です。
葵を失い絶望する竜真、そこから日に日に立ち上がる姿を、街の復興と合わせて描きます。
文章は短いですが、わざとそうすることで何も変わらない絶望感を出してみました。
「今日は、竜真、お主、にとって運命の日、決して抗うことできない悲劇が起きるだろう。」
宿屋ブルーのご主人様が言っていた言葉だ。
そして、これが、宿屋ブルーのご主人様が言っていた、悲劇というものだった。
だが、今の竜真にそれを考える思考は動いてなかった。
ガーデンのあった山のふもと、そこにモルトの放った絶魔終滅魔術により、ガーデンにあった宮殿の残骸が積もっていた。
積もっていたといっても、それは残骸のようで、残骸ではなかった。
魔術によって、消失を免れた残骸が溶け、再び凝固した物。まるで灰色のクリームが、固まった形状をしている。
その上に、黒い人型の物体と、一人の男が佇んでいた。
男のほうは、黒い人型の物体の、手に相当する部分を握りしめながらも、そのまま動くことはなかった。
男は思考が止まっていた。
ただ、ただ、黒い人型の物体の手の部分を握りしめ、元々街があったと思われる場所の一点を見つめるだけ。
山のふもととはいえ、高台にある。
眺めはとても良いが、今は何もない。黒い雲が覆う空に、黒い焼け野原と街の残骸が溶けて灰色に固まったものが残るだけ。
それは、白と黒のモノトーンの風景の色のない世界が見えるだけだった。