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80貴族のパーティ再び

 

 竜真と葵はパーティー会場にいた。ガーデンに中にある大広間、前回も来たパーティ会場だ。

 会場内に設けられた円卓には、ケーキや高級そうな食事が並べられ、参加している貴族たちも、以前と同じ顔ぶれだ。


 葵とは、ガーデンの入り口付近で待ち合わせた。

 竜真は前回と同じくタキシード、男はあまり衣装の選択肢がない。

 葵はというと、今回は濃青のドレスで決めてきた。前回のようにふわっとしたドレスではなく、体形にピタっとしたドレス。それにスリットから覗く太ももと、ガラリと空いた背中がセクシーすぎる。髪型もアップスタイルで、アクセントに青い花柄の髪飾りで大人の女性を演出している。


 こうも変わると、男というのは本人だとは気づかない。葵は待ち合わせ場所にいる竜真の隣に立つも、竜真はやたらに視線を胸と、背中と、太ももへとチラチラさせながらも、気づくことはなかった。

 葵がヒールで足を蹴ってもなお、


「すいません。つい、綺麗だったので・・・。」


 と、何を謝っているのか、よくわからないが、未だ気づく様子がない。


「あたしよ!」


 と葵が言ってやっと気づく竜真だった。


 そんな前段があったが、今はパーティ会場に入り込み、貴族になりすまして、パーティを楽しむ。


 女性はみな豪華なドレスにアクセサリーで飾り、綺麗な女性が沢山いる中で、男どもは、すれ違うたびに目線がチラッと葵にいくようだった。

 今回は、空いた背中と、スリットの太ももにと、チラッとポイントが増えているわけで、男どものチラッと回数も倍増しているように見えた。


「ちょっと、竜真、今食べないと、二度と食べられないわよ。」


 と、当の本人は、ケーキに、フルーツに、余念がない様で気にしてない。


 しばらくして、宮廷音楽団が演奏を止め、トランペットがパッパパーと音を奏でる。

 国王陛下の参上だ。パーティ参加者たちが広間の奥の大階段の方へ向き直り、跪いた。

 前回は、ここで挙動不審な行動をしていたが、今回はちゃんと学習した。竜真と葵も、他の貴族と同様に跪く。


 広間の奥の大階段にある大きな扉が開かれると、国王と王女の参上だ。二人とも、前回着ていた服装と同じで、豪華絢爛な服装だ。そして、その二人の背後に立つのがモルトだ。


「皆、面をあげい。」


 パーティの参加者が顔をあげると、背後にいたモルトが前に出て挨拶を始めた。


「皆さま、本日はお越しいただき、ありがとうございます。残念なことですが、バランタイン国はサルどもの寄せ集めに敗北しました。これはバランタイン始まっての汚点でありましょう。我々は皆さまからの多大なご支持をいただいております。皆様の期待を裏切ったこと。まことに慚愧の至りでございます。ですが、このまま敗北を認めた訳ではございません。古代の魔術を研究している研究機関がございます。日々、研究を進めてましたが、まさに報復するにふわしい古代魔術の復元に成功したのです。その成果を本日、披露いたしましょう。復元した古代魔術を用いれば、バランタインからも、サルどもの国の滅びゆく様をご覧に入れるでしょう。本日は、やつらの滅びゆく様を、酒の肴として、遠征の祝杯といたしましょう。」


 周囲は拍手に沸いた。

 その中で、竜真と葵は互いにうなづく。


「大丈夫だよな?」

「えぇ、面倒だからって全部手を抜いたじゃない?」

「いや、手を抜いたんじゃなくて、わざと、間違えたんだぞ。」

「でも、ちょっと不安よね。」

「まぁ、そうだよな。手抜き・・・じゃなくて、わざと間違えたはずだけど、少し不安だな。」


 モルトの挨拶も終わり、今は歓談の時間だ。


 一応は任務ということで、二人で会場内を巡り、不審者をチェックしていく。

 その中で、ふと気づいた。

 気のせいかもしれないが、制服を着た衛兵がいつもよりも多い気がする。彼らは黒い衣装に腰に帯刀しているので、よく目立つ。


「なんか、衛兵の数が多くないか?」

「そうね、前回よりも多い気がするわね・・・。」


 竜真と葵も会話に出すも、それほど気に留めることはなかった。二人は貴族の振りをしながらも、滅多に味わえない高級料理を頬ばるのだ。


 料理を頬張りながらも、モルトの動きには注目しておく。護衛対象であるし、そもそも、モルトがどのように動くかが気になる。


「将軍閣下、これは、これは。」


 モルトが話をしているのはバランタインの将軍と思われる人物。前回のパーティにもいた。

 竜真は耳を二人の方へと集中させる。


「モルトか、それよりも、先の海戦は災難であったな。で、実際のところどうだったんだ。」

「大京国の兵士の士気は凄かったそうです。艦艇を沈めてもなお、海を泳いで艦隊の乗り込み、捨て身で攻撃してきたそうです。それと、問題はある女兵士です。私も耳を疑ったのですが、生き残った兵士たちが、全員、同じように言うのですよ。海を上を走って、全員を片づけたと。」

「はぁ?」

「その大京国のたった一人の女兵士に皆やれたそうでして・・・」


 隣では葵がケーキを爆食いしている中、竜真は冷静にモルトの話に分析していた。

 なるほど、どうやら、あれだけの魔術を放出した訳だが、生き残りが多数いたようだ。


 モルトたちは、まだ続く。


「それより、その女兵士がどのような奇術をしたかです。」

「奇術?なるほど、モルトでも知らぬ魔術を使ったということか?」

「その通りです。未知の魔術を使ったというのが、最も合理的です。」

「なるほどな。だが、あの国に、そのような魔術を使える者がおるとはな。」

「おっしゃる通りです。あの国を舐めてました。これは私の判断ミスでもあります。」

「いや、構わん。誰も、そんな者がいるとは気づかぬだろう。だが・・・出来たのだろ?」

「えぇ、その通りです。後ほど、我が復元した古代魔術をご覧入れましょう。ですが・・・」


 モルトはニヤリと笑う。


「その前にもう一つ敗因として考えていることがあるのですよ。」

「ほう、というと。」

「それも、後ほどのお楽しみに・・・」


 なるほど、どうやら、天音の常人を逸した力は未知の魔術ということで片付けられたようだ。

 実際のところ、あれは魔術でも何でもなく、体術や剣術の類なのだが、そう解釈されても仕方ない。

 それよりも、モルトの言っていたもう一つの敗因とやらが気になる。

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