77長距離魔導飛行破壊兵器の正体
早速、ガーデン地下の魔導図書館に出向く二人。所望の魔導回路に関する書物はすぐに見つかった。
「ふむふむ。」
と興味津々で本を読みふける葵の隣で、竜真は待ちぼうけである。
「何かわかったか?」
「えぇ、とても興味深いわね。」
葵の話によると、魔導回路にもいろいろとあるらしく、反射する。溜める、そのまま流す、分散させる、分ける、といったことが可能だそうだ。
「なるどほ、グレンの指示によると、あの魔法陣を島の至る所に設置するようだけど、つまり・・・」
「まぁ、長距離魔導飛行破壊兵器とか言ってるぐらいだからねぇ。魔術を集めて、特定の場所に集める。そして一気に放出するとか、かしら。」
「ありえるかもな。」
「でも、確かに魔導回路について記録はあるけれど、基本的な動作しか書かれてないわね・・・。おばあちゃんの話だと、もっと昔から研究されていた、という話だけど・・・。」
ふと、葵の目線は禁書庫を向いていた。
「葵、まじか、あそこに行くのか?」
葵は周囲をキョロキョロと確認する。
「大丈夫、今なら誰も見てないわ。」
「誰も見てないじゃないって。」
禁書庫の扉は鎖で厳重に施錠されている。
葵は、扉の前にまで来ると、周囲に誰もいないことを再確認して容易に開錠してしまい、中に入ってしまった。
「ちょっと・・・」
竜真は葵の跡を追うように禁書庫へと入る。
禁書庫の中は、以前にも一度来たが、薄暗く、気温がすこし冷たく感じる。
部屋の隅には、相変わらず彼がいた。前回、禁書庫を訪れたときにもいた白骨化した遺体だ。こちらに目線が向けられているので、とても気になるが、葵は、一切気にせずに書庫の本を漁っていた。
「あったわ。」
葵は、一冊の古びた本を手に取りパラパラとめくる。
「すごい、魔導回路だけど、見て。他にも、気を濃縮するとか、周囲から奪取する、ですって。遥か昔は、こんなこともできたのね。」
「なぁ、それって、もしかしてだけど、魔法陣を使って、島に住んでいる人から気を吸い上げて、濃縮して、集めて、たくさんの気を魔術を発動させる気なんじゃないか。」
「ありえるわね。それがモルトがいう兵器の正体かしらね。」
「モルトが言うには、ここから海をこえて魔術を放つんだろ。そんな古代魔術の記載とかないのか。」
「うん、そうねぇ、ちょこちょこ禁書庫で古代魔術を調べていたんだけど、意外と攻撃をする魔術について書かれた書物って少ないのよね。空間転移とか、時間遡行とかはあるのだけど。」
「おい、お前、一人でここに来てたのか!?」
「えぇ、もちろん。こんな魔術の宝庫、無駄にはできないじゃない。」
なんと、葵は一人で禁書庫に来ていたらしい。びっくりだ。
葵は、なおも、古い魔導書を手に取り、パラパラと眺めていた。
「あら、これ。」
「何か見つけたか?」
「これ、絶魔終滅魔術ですって。」
竜真は、葵の開いている本を覗き込み、一緒に内容を読みふける。
そこにはこのように書かれている。
『多くの気を集め、濃縮した気を一度に放出し、目標地点に甚大な破壊をもたらし、すべてを終滅させる魔術。
まるで、神が一撃をくだしかのように、目標地点は破壊されるため、地方によっては神撃や、ゴッドブローなどと呼ばれることがある。魔術を発動するだけでも大多数の有能な魔術師の気を必要とする。必要とされる気の量が膨大であるが、はるかに離れた土地からでも発動することが可能である。ただし、過去の大戦を見返しても、その必要とされる気の多さから、使用された例は数例にしかなく、その詳細は残っていない。』
「竜真?」
「葵?」
「これだ!」「これだ!」
思わず、二人は抱き合った。
「まって、まだ続きがあるわ。」
『あまりの多くを気を用いることから、集団魔術として発動させることは必須である他、放出する気については、気を濃縮する魔術や、重ね合わせる魔術など、別の魔術を組み合わせることによって、気を集約することが通常である。』
「なるほど、この別の魔術を組み合わせる、というところがあの魔法陣のわけね。」
「つまり、あの魔法陣をいじって無効化してしまえば、防げるというわけだな。」
「そして、うちらは、あまりに複写するのが大変だから、すでに手抜きしている。」
「というはことは、発動することは、ないっていうことだな。」
「竜真、お主、悪よのぉ。」
「当たり前だろ。一応、うちらは、大京国側だからな。」
「大京国の諜報というより、手抜きしたかっただけでしょ。でも、これで解決できそうね。」
その日は、それで魔導図書館を後にした。
その後も魔法陣を島内に設置するという任務は定期的にやってきた。
その度に、二人は魔法陣を設置する『ふり』をした。決して、魔法陣を複写するのが大変だからというわけではない。これも大京国のための行動だ。




