60艦隊へ
竜真は目を疑った。
艦隊に配属とは聞いていたが、目の前には、海を埋め尽くさんとするほどの黒船の大艦隊だった。
どこまでも続く黒船の集団。小さな島であれば、飲み込んでしまいそうなほどにその黒い船の集団は広がっていた。
竜真たちはその中の母艦に通される。案内されたのは、大艦隊の中の母艦の操舵室だった。
髭を伸ばした青年が偉そうに座していた。いかにも海賊のような井出立ちで、小柄な黒髪の青年だ。
「おう、あんたらがバランタインからの兵士か。おれは今回の遠征隊の大艦隊長、バランタイン海軍、大将軍のダニエルだ。よろしくな。」
もっと偉い人の長い話をされるのかと思ったが、意外にも気さくで陽気な人だった。
「あとで説明するが、うちらの大艦隊は北艦隊、南艦隊の編成でいく。そんで北艦隊の隊長だが、あいつは今は便所だ。あいつの便所は長いんだ。臭っても黙っててくれ。あいつは図体はでかいが、気が小さい。」
周りの海兵からは「くすっ」っていう笑い声が聞こえた。どうもダニエルは皆の心を掴むのがうまいらしい。
「それから、こっちが南艦隊の隊長のバルブレア将軍だ。」
ダニエルはすぐ隣に白髪の青年の背中と叩く。トンという感じじゃない。ズドンという感じで、前のめりになる。
「バルブレアです。よろしく。」
バルブレア将軍は一言だけ喋って後退する。
「まぁ、バルブレア将軍は口数は少ないが、悪くない奴だ。魔術のことならこいつに聞くといいだろう。まぁ、みんな仲良くしてやってくれ。」
なるほど、どうやら北艦隊は武力、南艦隊が魔術で攻めるという作戦だろう。ふと隣で竜真の肩を掴んだままへばっていたが葵だが、『魔術』という言葉が聞こえた瞬間に、反応してビンと立ち上がる。どれだけ魔術が好きなんだ。
その後は各艦隊に別れた。竜真と葵の配属は、南艦隊だ。南艦隊と聞いた瞬間、葵はガッズポーズをする。
「お、君たちがバランタインからの兵かい。ずいぶんと若いんね。ほら、一杯どうだ。」
と艦に就くや否や、酒のお誘いがやってきた。どうやら歓迎会をやっているらしい。
「そ、その、まだ、会は始まってないようですし・・・。」
と断ってみるのだが、
「いいか、南艦隊はあの超がつくほど真面目なバルブレア将軍さ。将軍なんざ待っていたら終わっちまうぜ。」
「そ、そうですか、」
と半ば強引に酒を飲まされて会が始まる。
艦についた瞬間から歓迎会モードだ。
とにかく、にぎやかだった。
ここまでにぎやかなのも大東道場のとき以来だろう。大東道場には住み込みの、まだ育ち盛りの門下たちが沢山いたので、夕飯の取り合いやら、喧嘩やらで、まるで動物園のように毎日が騒がしかった。
あの頃が懐かしい。




