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刀と魔術 ~ある小さな武士が魔術と出会い、自身の高みを目指す物語~  作者: Hayase
異国の地バランタイン:宿屋ブルーのご主人様との出会い
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58禁書庫へ

 モルトのデモンストレーションでの大戦力を見せつけられ、竜真は戦意喪失していた。

 モルトはあの超大なまでの魔術を西国侵攻に利用すると言った。つまりは、大京国だ。

 大京国にあの魔術に対抗するだけの力はあるか?いや、ない。

 勝ち目のない戦になる未来に戦意を喪失したのだった。


 一方の葵はというと・・・あの大魔術を見せられ呆然としていたが、今は、何事もなかったかのようにパーティの余り物をおいしそうに頬ばっていた。貴族らしからぬ。


「普段、こんなもの食べられないのよ!」


 気持ちの切り替えが早すぎるのか、いや、それとも何も考えてないのか。


 その後、無事パーティは終わった。終わったということは護衛の任務も終わったのだ。

 戻ろうとしたところで、葵から、


「よし、行くわよ!」


 と言われて、今に至る。


 今、葵と一緒に来たのは魔導図書館だ。魔導図書館はガーデンの地下の洞窟にあるので、ドレスのようなひらひらした衣装だと汚れてしまうが、ドレスが汚れるのすら気にかけず、葵に真っすぐに手を引っ張られてここに来た。


「おい、葵、何もパーティの終わりに来なくてもいいだろ?」

「はぁ?何言ってるの?あんた見たでしょ。あの大魔術。」

「見たけど、何か関係があるの?」

「何言ってるのよ!あのすごい魔術、身につけたいじゃない。グレンさんが言ってたでしょ。やばい魔術は禁書庫に蔵書しているって。」

「おい、禁書庫はまずいだろ。宿屋ブルーのご主人様も禁術には手を付けるなと言っていたし、そもそも、禁書庫は封印されてるぞ。」


 そのな会話をしている間にも、葵は赤いドレス姿のまま、づかづかと一階奥の重厚そうな鉄の扉まで近づく。

 禁書庫を守る鉄の扉だ。扉には鎖が何重にもなされ、鍵がかかり、グレンが言うには、魔術で封印されてるそうだ。


「ねぇ、竜真、この鎖、ちょっと刀で切断してよ。」

「おい、俺を便利道具のように呼ぶんじゃない。それに、こんなもの切ったら刃こぼれするぞ。」

「何よ、しょうがないわね。」


 葵は、鎖のところに手を当てる。気を集中し始めると、手を当てた部分がほんのりと淡く光り始める。


「なるほど、こうなっているのね。」


 といって、数秒後、ガシャンと音を立てて鎖が床に落ちた。


「おい、鍵を開ける魔術でも覚えたのか?」

「まぁ、そんなもんね。天才魔術師にでもなれば、余裕よ!」


 だったら、最初からその魔術を使えよ、と思った竜真だが、何も言わないでおく。


 早速、重厚そうな扉を開けた。

 宿屋ブルーのご主人様からは、禁術には手をつけるな、と言われていたが、もう、こうなっては、仕方がない。


 部屋の中は魔導図書館の中と違い、照明がない。気温が一段と低く寒さを感じる。

 小さな部屋で、埃がつもり、至る所に蜘蛛の巣がある。木製の朽ちた棚が数台並び、古い埃を被った本が並ぶ。

 そして、それは部屋の隅の角にあった。


「えっ、どういうこと?」


 竜真と葵は部屋の隅の角に佇んでいたそれに近づく。それは、白骨化した遺体だった。

 バランタインの紋章のついたローブを纏っていることから、昔の魔術兵なのだろう。


「きっと、封印されたこの部屋を守っていたのでしょうね。」


 葵は白骨化した遺体の前にしゃがみ、手を合わせた。そして、立ち上がり、本棚へと向かう。


「さて、漁るわよ!」

「おい。」

「なによ。彼には残念だけど、彼が守ったものは、あたしの魔術の一部として有効活用させてもらうわ。」


 といって、葵は古い本を手に取り、埃を手で払うと、パラパラと本を眺め始めた。


「ねぇ、竜真、見てこれ、すごいわ。物を呼び寄せる魔術ですって。隕石すら呼び寄せるらしいわ。メテオと呼ばれる魔術のようね。昔、この魔術を使って、ガーデンの北側に隕石を落としたらしいわね。この魔術、すごい量の気がいるそうで、当時、万単位の魔術兵全員で気を集めてようやく魔術を発現したらしいわよ。」


 葵は、竜真をよそに、禁書庫を本を漁っている。

 なるほど、先日、ガーデンの北側に行ったが、確かに不自然に窪んだ地形をしていた。あれが、魔術のメテオの痕跡か。


「ねぇ、竜真、これすごいわ。複数人で気を集める方法が書かれてるの。単に人集めればいい訳じゃないみたいね。気の波を同調させる必要があるんだって。人の配置も重要そうだわ。それでさっきのメテオを発現させるのね。なるほど。」


 一度、葵は魔導書を読み始めると、止まらない。次に次にと禁書庫の魔導書を手する。


「ねぇ、竜真、これ物に魔術を付与する方法だって。こないだの魔銃剣じゃない?これ見ると、剣だけじゃなくて、いろんな物や人に付与することもできるみたいね。」

「ねぇ、竜真、これすごいわ。転移する魔術ですって。でも結構な気を使うのね。一人では無理そうね。」

「ねぇ、竜真、これもすごいわ。時間遡行の魔術ですって。すごくない?あら、この魔術だけ説明がないわね。」


 禁術と呼ばれる魔術が記載された古い魔術書に葵ははしゃいでいる。

 禁術になると、とても人一人が保有する気では発現できず、多くは集団で大量の気を集めて発現するようだ。禁術は発現が稀なせいか、いつどこでどのような状況で発現された記録まで残っていた。


 竜真は気になって、葵が読み漁った魔術書に目を留める。ちょうど、時間遡行の魔術が記載されているが、その魔術だけは詳細が記載されてない。


 その日は、夜遅くまで禁書庫で魔術書を読み漁る葵に付き合わされた。

 夜遅くになって眠くなり、退散することになったが、埃と蜘蛛の巣まみれの禁書庫から出ると、葵は全身埃まみれで、蜘蛛の巣を頭から被っていた。せっかく赤いドレスが台無しだ。


 どこにいたのか、禁書庫から出る瞬間、「チュウ」といって、ネズミが扉の上から落ち、葵の頭に命中した。頭の上にネズミを載せる葵、ちょっとかわいい、思わず笑ってしまう。本人は「ちょっと、もう。」といってネズミの尻尾を掴んでどこかに放り投げていた。


 途中、道すがら地下の通路でグレンと出会った。


「こんな、夜遅くまで何やってたんだ。しかも、全身、埃まみれじゃないか。」


 と言われた。当然、禁書庫にいたと言えるはずもなく、


「いや、ちょっと葵と魔術の練習をしてまして、ついつい熱くなりすぎました。」


 と誤魔化した。


「ドレス姿でか?」


 と怪訝そうな顔をされたが、たぶん、問題ない。

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