55貴族のパーティー
今、二人がいるのはガーデンのなかにある大広間。
天井には大きなシャンデリアいくつも輝き、床にはレッドカーペットが敷かれ、豪華なケーキ、フルーツ、高級そうな料理が並んでいる。
広間の奥ではバランタインの宮廷音楽団が音楽を流している。
男性は白や銀色のタキシード、女性は色とりどりのドレスを身にまとい、食事や飲み物を嗜んでいた。
そこに銀色のタキシードを纏った竜真がいる。髪をオールバックにして、意外とカッコいいかもしれない。
彼の前へ赤いドレスを身にまとった女性が現れる。
竜真は、綺麗な女性だなと思いながら、そのまま通り過ぎようとしてふと気づく。
(えっ、葵??)
と言いそうになって、改めて、顔をよく確認するが、よ~く見ると葵の面影が残っている。髪型が変わり、化粧をされると、ほぼ別人だ。
「これは、葵お嬢様ですね。ごきげん麗しゅう。」
と跪き、手の甲に軽く唇を寄せる。
「これは、竜真男爵、ごきげんよう。」
と答えるのは葵お嬢様だ。
設定としては、竜真は王家の男爵、葵は王家の子爵の娘という設定で、二人は親同氏が決めた許嫁ということになった。
葵はくるっと身を半回転程すると、それに合わせて、ふわっとスカートが広がり、生地には一面に花柄のレースが刺繍されている。背中はガラ空きで、胸を包む布地からは豊満な胸と谷間がのぞけ、大人の女性の艶やかさが現れる。
髪は巻き髪みにし、大きな花の髪飾り、顔には淡い化粧され、美しさを際立たせていた。身を半回転させる動作に少し遅れて、花を連想されるようにほのかないい匂いが香る。
竜真はいつもとは違いすぎる葵の姿に、目線が全身に行くが、最後は胸に止まる。葵はそこそこいい感じに胸がでかい。
そんな竜真の目線に気づき、葵はジト目で竜真の頬をつねるのだ。
「ちょっと、どこ見てるのよ!貴族ならもっと紳士的になりなさいよ。」
と言うが、周囲にいる貴族の男どもは皆、実は葵の胸に釘付けだった。男どもは豊満な胸が好きなのだ。
だが、そこは貴族、貴族の男どもは紳士的に振舞わなければならない。なので、ふと視線を移す際などに皆、一瞬チラッと葵の胸をチラ見するが、連れに女性に気づかれ足をヒールの踵で踏まれたりしていた。
さて、今はまだ、パーティ開始時間前だ。
ぞくぞくとバランタインの貴族たちや、隣国たちの王族たちが集まりつつある。
一応、というか、竜真と葵には護衛という役割がある。貴族になりすましながら普段は滅多に口にできない豪華な食事に手を付けつつ、警戒を怠らない振りをしていた。そもそも、竜真には察知能力があるので、誰かが不審な行動をすればすぐにわかる・・・はず。
宮廷音楽団が演奏していた音楽が止まる。トランペットがパッパパーと音を奏でると、他の楽器もそれに合わせて、音を一斉に出し始めた。
突然、パーティ参加者が広間の奥の大階段の方へ向き直り、跪いた。
竜真と葵も、思わずその場に立ち尽くも、周りをキョロキョロと見渡し、焦って周りと同じように跪く。
広間の奥の大階段の上に大きな扉が設けられ、その両脇にいる門番が、その大きな扉を開けた。
扉が開けられた先には二人の男女が立つ。男は豪華絢爛な飾りの上衣に王冠、女もまた豪華絢爛なドレスに、ダイヤが散りばめられたティアラだ。
この二人こそ、バランタイン共和国の国王と王妃。
国王と王妃は二人並んで階段を下りる。そして、階段に途中に設けられたテラスに進み、テラスに設けられたテーブルの前に立った。
「皆、面をあげい。」
といって、パーティの参加者隊が顔をあげると、国王、王妃と並んで、その横に並ぶ男がいる。
少し前に広場で見た顔。民に対して演説をしていた男、モルトだ。
このモルトも、国王ほどではないものの、高級そうな装飾をあしらったタキシードを身に着けていた。
モルトは一歩前に進み、挨拶を始める。