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刀と魔術 ~ある小さな武士が魔術と出会い、自身の高みを目指す物語~  作者: Hayase
異国の地バランタイン:宿屋ブルーのご主人様との出会い
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50ザ・ガーデン 選抜試験

 

 バランタインの中心部にあるバランタイン城のことを人々はガーデンと呼ぶ。


 代々、バランタインを統治する国王が君臨し、共和制になったといえど、今も王族の居城となっている。


 共和制になってからは国の代表であるモルトの根城としても利用されている。

 白を基調といた美しい城の至るところに花が飾られ、それが庭園の池の水面に鏡面のように写し出されている。

 ガーデンという名にふわしく、正面の庭園には広い広場があり、いま、多数の人が集まっていた。


 試験は年に一度行われる。採用されれば、それなりの年俸が支給されるとあり、多くのつわものが集まっていた。

 筋肉ムキムキの兄さんや、全身に鎧を纏った者、そんなイカツイ兄ちゃん達が大半だが、竜真や葵のように、ひょろひょろ体形の者や綺麗なお姉さんに、腰の折れたじいちゃんまで、参加者は千差万別だ。


 そこに白い高級そうな服を纏った人が数人が現れ、庭園に設けられた演台に登る。試験官だろう。


「これより、試験を行う。ここにいる皆で競い合ってもらう。外へ逃げ出た者、気絶した者は失格だ。残った人数が定員になったことをもって、試験を終了する。正午の鐘を合図として試験を開始する。」


 まだ、正午までわずかな時間がある。ある者は互いが互いを見合い、牽制しあう。

 おそらく、混戦が予測される。竜真は葵を連れて端の方へ移動し、時間を待つ。


 ガーデンには背の高い時計塔がある。街中にも時計塔の尖塔があるが、多くは昔の遺物で、鐘が鳴ることはない。だが、ここガーデンにある鐘だけは毎日正午になると、鐘が鳴り響き、正午の時を知らせていた。


 ゴーン、ゴーン、ゴーン


 ガーデンの時計台にある鐘が正午を知らせる。試験開始の合図だ。


 誰もすぐには動かず、互いに牽制する。最初に動いたのは筋肉ムキムキの男。ひょろひょうろの杖を突いたおじいちゃんに向かって仕掛ける。


「おい、じいちゃん。ここはじいちゃんの来るところじゃなないぜ。出直しな!」


 と、言い終わるとおじいちゃんに向けてパンチを繰り出すが、おじいちゃんはさっと背後に回り込み、筋肉ムキムキ男の首すじに手でチョップを食らわす。筋肉ムキムキは、その場でズドンと倒れたではないか。


 それを皮切りに、参加者が次々に攻撃を始めた。基本的に皆考えることは同じ。弱そうな奴を狙って攻撃する。


 竜真と葵も見た目の分類では弱そうな奴だ。

 皆、こぞって、竜真と葵を狙ってくる。端のほうへ移動して良かった。中心にいたら、四方から狙われて大変だっただろう。


 竜真は、察知能力で華麗にかわす。葵はこないだ身につけた雷撃という魔術を、これまた器用に、殴る瞬間に雷撃を出すことで、見た目的には魔術を使ってないかのようにして、攻撃する。


「なぁ、ふと思ったんだけど、その雷撃と言うのをさ、俺の刀に付与できないかな。」


 いつしか、幼少のころに見た、蒼蓮腕、それを思い出したのだ。ダメもとで考えてみた。


「なるほどね。」


 葵は、竜真の刀にそっと手を添える。刀を持つ手にも、ビリビリ、と感触が伝わる。葵の手が刀身をそっとなでると、刀身からバチッバチッと、紫色の放電が見えた。


 そこに筋肉ムキムキ男が現れ、葵をめがけて、殴ろうとする。すかさず、竜真が峰打ちを食らわせる。すると、どうか、大男はその場で全身を震わせながらその場に倒れた。


 それだけではない。隙間もないほどの混み合っている。大男が倒れると、おのずと他の人間の体に触れてしまうが、紫色のバチバチしたものが、触れた者へと移り、その者も突然倒れる。

 そして、倒れると、別の人間の体に触れて、別の人間が倒れる。

 まるでドミノ倒しのように、次々と倒れていく。倒れた者からは、身体から、バチバチ、といいながら、紫色の静電気が放たれている。 


 これは、すごい。技名、雷鳴剣などと名付けてみよう。


 だが、一方で、やり過ぎたかもしれない。連鎖が連鎖を呼び、竜真と葵のいる場所一帯にいた者全員が、一斉に全身を震えて倒れた。


 この国の禁忌の一つ、この国では、魔術を見せてはならないのだ。ご主人様も、やるならバレずにやれ、と言われていた。


 そっと、試験官のいる方を振り向くと、じっとこちらを見ながら目を細めた。

 まずい、確実に見られたかもしれない。


「ちょっと、竜真!やりすぎ。」


 葵にも言われた。雷鳴剣は凄いが、目立ちすぎる。使うのは控えよう。


 時間が経過すると、徐々に試験の明暗が別れる。多くは、敗れ、広場の縁に座り込み、試験の行方を見守る。

 それでもなお、まだ多くの参加者が未だ広場に残り、戦いを続けている。


 もちろん、竜真と葵もその中に残っている。雷鳴剣でやらかしてからは、攻に転じるよりも、守に専念し、周りが自滅するのを待った。


 ただ、ここまで減ってくると、自分たちからも仕掛けなくてならないだろう。


「ねぇ、竜真。」


 葵もわかっているようである。竜真と葵はいつものように、背中合わせになる。


「あからさまな魔術はダメだから、雷撃を纏わせて、徒手空拳で攻撃するように見せかけるわ。」

「わかった。サポートする。」


 敵陣に突っ込む葵。そこへ攻撃をしようとする敵に、竜真が察知で、指示を出し、華麗に躱す。そこを葵が殴りつける。力は弱いが、雷撃を纏わせているので、相手はその場で気絶する。

 見た目的には、ちゃんと徒手空拳で攻撃したように見えるはず。


 竜真も敵陣に割り込む。竜真も大東一刀流でそれなりに訓練はした。察知で相手の攻撃をかわしながらも、背後を峰打ちで確実に仕留めていく。

 それは、もう、圧倒的だった。誰も二人に手を出せる者はいない。


「そこまで!」


 広場に試験官の合図が聞こえた。


 辺りを見渡すと、広場になっているものは、竜真と葵を含めて、五十人ばかしいた。


「その場に立っている者を合格とする。敗者はこの場で解散だ。その気があるなら、また、来年挑むが良いだろう。合格した者は、手続きがある。私の後についてきなさい。」

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