49出会い頭に
沈黙したまま宿屋ブルーに戻った。
戻った際に、この宿のご主人様とふと廊下で出会い頭に会ってしまった。
「なぁ、ばあ・・・ご主人様、あんたは何者なんだ、何でこの島の裏事象を知っているんだ?」
「さぁな。」
わかっている。何のために、バランタインに来たか。あの名もなき村は、可愛そうだが、自分たちとは関係ない。
だが、この現実を知って、本当にそのままでいいのか。
「ふん、あの様子を見て、何もできないことに罪悪感でも感じたか。所詮そんなもんだ。口では可愛そうと思っても、この現実をどうにかすることなどできないんだ。仮にどうにかしようとしたところで、運命が変わるわけがない。いいか、この島のこと、モルトのことは放っておけ。」
そう、その通りだ。目的はモルトではない。今、何とかすべきことは、バランタインが大京国へ侵攻しているという情報の詳細を掴むことと、そして、自信の能力の昇華である。だが・・・
「えぇ、わかっています。だけど、どうしても、あのモルトを放っては置けない気がして・・・。」
「まったく、お前は、どこまでお人好しなんだ。どうせ、バランタインには魔術を習得しに来たのだろう。ならば、モルトの兵に入ればよかろう。バランタインは魔術の起源だ。ここでしばらく、魔術のいろはでも学びながら、モルトでも観察すればよい。」
「は?、バランタインが魔術の起源??」
「タリスカー、仕事を斡旋してやりな。ガーデンで兵を募集しているはずだ。募集時は試験をするが、そこで、圧倒的な戦力差で合格しな。あそこにはな、一般の募集以外に、特殊部隊という部隊があるのさ。圧倒的な力量で、その特殊部隊に入隊するんだ。力量は間違いなく、特殊部隊が最強、そこでしばらくは、その根性を鍛えるんだな。それと同時に、特殊部隊になれば、ある程度ガーデンの中を探索できる。極秘情報も得られやすくなる。ガーデンで何が計画されているのか調べてみるとよい。それにな、魔導図書館と呼ばれる極秘の機関もあるらしい。葵は、そこで、さらに魔術の鍛錬に励むといいだろ。だがな、決して禁術には手を出すなよ。」
「ま、魔導図書館・・・?き、禁術・・・?」
ここで葵は目をキラキラさせる。それとは反対に竜真はご主人様に対して、疑念を抱く。
「なぁ、ばあ・・・ご主人様、あんたは本当に何者なんだ?」
「それは、禁忌だと教わっただろ。知る必要などはない。それから、禁術には決して手をだすなよ。魔術を覚えたらとっとと自分に大京国にでも帰るんだな。」
このとき、ご主人様は、ふと葵のほうをじっと睨むのだった。