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刀と魔術 ~ある小さな武士が魔術と出会い、自身の高みを目指す物語~  作者: Hayase
異国の地バランタイン:宿屋ブルーのご主人様との出会い
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48ガーデンのゴミ捨て場

 翌日だ。

 バサッと、布団をはぎ取られ、竜真は何があったのかとベッドから飛び起きる。

 そこには、見知らぬ少女が立っており、背後に、眠そうな顔をした葵が立っていた。

 白めのワンピースに赤い羽織、背は低めで銀髪、紅い目の瞳、そして、極めつけはツインテールときた。


「だ、誰?」

「あ、あたしだっ!、タリスカーだ。」

「・・・。」


 今まではメイド姿のタリスカーしか見てなかったが、これが、普段着だろうか、思わす、じっと見てしまった。それよりも、なぜ、ツインテール?


「な、なんだ?」

「そ、その、いつもと雰囲気が違うので、タリスカーさんとは気づかなかった・・・です。」


 タリスカーもじっと見つめられて、ほんのり、顔が赤らめている。


「そ、そ、そか、それで、行くのだろ、国の北側へ。」

「え、今からですか!?」


 北側に行くこと許可は下りたはずだったが、まさか、昨日の今日とは思ってなかった。


「あ、あ、当たり前だろ。すぐに準備しろ、しなさい。」


 タリスカーの口調がなんかおかしい。いつものメイド口調と、怒ったときの口調が混ざっているようだ。


「あの・・・タリスカーさん、言葉遣い。無理しないでいいですよ。」

「・・・うるさい!」


 察知で、タリスカーの俊足の蹴りを察知し、何とかかわす竜真だった。


 外には馬車が置いてあり街で借りてきたと言う。タリスカーが馬車の手綱をとり、道を進んでいく。

 街中から、郊外へ。農村などの田園風景が続き、森の中へと入っていく。街中はさすがというべきか、至る所に花が散りばめられ、音楽や歌を歌う声が至る所から聞こえる。


 なんとも彩に満ちた国だ。


 やがて小屋のようなところに出る。


「この先には、守衛がいるので、山から回り込みます。一度休憩としましょう。」

「守衛?」

「えぇ、この先は誰も入れないように、ガーデンの衛兵が監視しているのです。」


 その後は、守衛を避けるため山道を進んでいく。山道といっても獣道のような道、そのうち道すらなくなり、欝蒼と茂る森の中をタリスカーの後をつけていく。


 そんな時に、葵がタリスカーに話しかけた。


「あのタリスカーさん、タリスカーさんって、何であそこで働いているの?」


 貴様に聞く権利ない、この豚が!と言われると思ったが、意外にも素直な返答が得られた。


「あたしは国の北側の出身。そこで、今のご主人様に拾われた。行く当てのないはあたしは、ご主人様の下で働くようになったという感じです。」


 やがて、視界が開けた。

 出た場所は崖の上のようだ。眼下には崖下に広がる村が見えた。それは、一見、村に見えた。

 けども、村というよりも瓦礫の散乱した場所に、ビニールを張っただけのテント、そんなのが寄り集まり、集落を成していた。


 視線をずらすと、頭上には、ガーデンと呼ばれる島の中心部に聳える城。至る所を花で飾られた美しい城だ。

 だが、その城からは、黒緑色の液体が絶えず流れ続け、崖下の村へと流れていた。

 城からは次々と、ゴミが投げ捨てられ、崖下の村に山を作っていた。遠目から見ても、大量の羽虫が湧いており、お世辞にも衛生環境がいいとは言えない。


「これは!?」

「名もなき村、ガーデンのゴミ捨て場ね。崖下へ下りましょう。」


 バランタインの北側の名もなき村。人はいるが人々みな死んだ目をしていた。

 そこには、花どころか、草木さえ一つも生えてない。


「うぅ・・・えぇ・・・うぉ・・・」


 そこから、聞こえるのは音楽ではなく、付近から住人のうめき声だった。


「歌歌い病です。不衛生な食事を取り続けると発症する、この村独自の風土病です。うめき声が歌を歌っているように聞こえることから、この名がついたとか。」

「皮肉だわ。」

「ここは元奴隷の村。奴隷といっても、あなたたちが想像する奴隷とは違って、家主と奴隷が良好な関係だった。モルトが現れてから変わったのよ。海外から注目を浴びるために、モルトは農奴解放令を世界に先駆けて、宣言した。これまで家主からの賄で生計を建てていた奴隷たちは、突然、家主を失い、路頭に迷った。農園を作って自立を目論んだけども、奴隷が作った農作物など食えるかと、誰も買わなかった。

 モルトはさらに島の改革を行いました。彼はこの島を幸せの島にするといって、至る所に、花を植え、音楽を推奨し、広場や、ステージを作ったのです。それは成功し、見ての通りの街に成長した。人々が集まり、活気あふれる街になった。けど、その街から出されるゴミや排水はどこに行くと思う?

 最初は人は多くなかった。だから、問題にならなかったけど、人々が集まるようになって無視できないほどの問題になった。わかると思うけど、見ての通りです。モルトは、この元奴隷の村に汚いものをすべて押し付けた。そして、汚物に蓋をするように、この村への道を封鎖し、村の出入りを制限した。

 これが、この島の禁忌。モルトが隠そうとした、本来あってはいけないはずの村。」


 竜真はそこに並べ手られていた野菜を手にとり、一人の村民に聞く。


「いくらだ?」


 村民は怪訝そうな顔で顔をこちらを見るが、反応はない。

 こちらの生活である程度の金銭感覚はわかる。この程度の農作物であれば、銅貨五枚ぐらいだ。手元から銅貨を手に取り、農作物のすぐ隣に置いた。


 野菜を手に取り、そのまま口に入れる。

 うまい。普通にうまい。市場で出回っているものと何らそん色はない。


「無駄ですよ。この集落に貨幣という文化はないわ。それにやめたほうがいいです。この村の土壌は汚染されている。作物もね。」


 ふと見知らぬ男の子が現れる。


「ねぇ、お姉さん、どっから来たの?」

「あたしは、あっちのほうから来たのよ。」

「ふ~ん、僕ね、大きくなったら、あの城に行こうと思うんだ。」


 子供は無邪気な笑顔を葵に見せる。そして、そのまま楽しそうに走り去っていった。

 葵は、その後ろ姿をじっと見つめていた。


「いいわね、子供は。現実を知って失望する大人に比べて、何も知らず無邪気に遊んでいられる。」

「無駄です。小さい子は何も知らないだけ。だから、非現実的なことも平気で言える。けど、いずれ気づくのよ。成長するつれて、この村から出られることなどできないと。」


 竜真と葵は、この村の状況を目の当たりにしながら、何も言えなかった。

 そのまま帰路についた。行きもあまり話すことはなかったが、帰りは行き以上に静かだった。

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