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3黒船見学ツアー

 兵士に見つかった竜真。一時はどうなるかと思ったが、今は青いローブの初老のおじさんに連れられて、黒船の見学ツアーをさせてもらっていた。


 最初に、連れてこられたのは船の操舵室。

 この国の常識で言えば、船といえば、帆を風になびかせて航行するもの。ところが、この船には謎の機械が所せましと並んでいる。

 なにもかも初めての竜真は、きょろきょろしながら挙動不審な行動。それにもお構いなしで、おじさんは部屋の中央にやってきて、あるものを見せるのだ。


「見たことあるか?」


 机の上にあるのは、大人の背丈ぐらいある巨大な地図。


「見な、ここがお前の国だ。というか、島だ。」


 まだ十歳の竜真でも、それが地図であることはわかる。地図には、手書きの線や、黒色の線、赤色の線など、いろいろな線が書かれている。航行に使った線だろうか。

 巨大な島も書かれているが、おじさんが指さすのは、小さな小さな島だ。


 竜真は困惑した顔をする。なぜか?


「いいか、これがお前の国、大京国だ。」


 竜真の頭の中には、自分の国、大京国は広大な国という思いがあった。

 それが、この竜真の背丈ぐらいもある大きな地図に、竜真の国は点でしか表現されないのだ。


「えっ、こんなに小さい。」

「そうだ、お前の国はこんなに小さいんだ。世界というのは、信じられないぐらい広いんだ。どうだ、すごいだろ。」


 おじさんはわずか十歳の子供相手に、随分と自慢げに言ってくる。きっとそういう人なのだ。


「お前は地球を知ってるか?」

「地球??」


 おじさんは、竜真に見せた大きな地図を持ちながら、部屋の隅に移動する。そこには、大人の背丈ぐらいの大きな球体の飾りが置かれている。球の中心を棒が突き刺しており、少し黄ばんだ白色の球体には模様のようなものが描かれている。


「いいか、世界はな、こうなっているんだ。」


 そういうと、手にとった大きな地図で球体を包み込んだ。

 竜真には一瞬、何をしているのかすぐには理解できなかった。あまりの不思議な行動に突然ボケ老人にでもなったのかとも思った。だが、地図の形と球に書かれた模様が一致している。


 なるほど、竜真も言いたいことは理解できたようだ。

 その球体に描かれた模様のようなものが地図であり、世界は球体になっていると言いたいのか。


 竜真は理解した。理解はしたが、ここで新たな謎が生まれる。だとしたら、球体の下のほうに住んでいる人たちは落ちるんじゃないのか?と思ったのだ。

 だが、ちょっとおじさんの自慢がめんどそうなのでやめておく。


 おじさんは球体をくるくる回し、反対側の大きな大陸の西側の海岸線上の一点を指さした。


「いいか、俺たちはな、ここから来たんだ。バランタインという。」


 おじさんは、一息置いて、竜真の顔を見ながら言う。


「どうだ、すごいだろ。」


 竜真もここで少し気づく。このおじさん、若干、面倒だと。ようは、自慢をしたいのだろう。

 でも、竜真にとっては見るも、聞くも、すべてが初めて。竜真にとってはすべてがすごかったのだ。


「すごい!」


 竜真はとりあえず、そう答えると、おじさんはニヤニヤして話を続ける。


 その後も、そのおじさんは、竜真を連れまわしては、ペンや、羅針盤、望遠鏡、それに砲台や、機関室などを見せては、「すごいだろ。」と自慢する。


 おじさんは自慢をしたいだけなのだ。

 でも、自分の国のことしか知らなかった竜真にとっては、すべて新しく、すごいと思ったのは本心だった。


「小僧、もっと凄いものを見せてやろう。」

「凄いもの?」

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