2黒船潜入
「広い!」
竜真が立ったのは、あの黒船の甲板の上。
竜真はついに、黒船の潜入に成功してしまった。
夜とはいっても、日が沈んだばかりなので、西の空はほんのりと明るい。三日月と黒船の甲板に備えられたランプに照らされながら、甲板の上は等間隔に並んだ砲台とおぼしきもの照らし出されている。
竜真は広い甲板の上を何も考えず散策するが、齢10歳の竜馬には見張りというものを知らなかったのだろう。
ゴン!
何かに顔面をぶつけ、見上げるが、なんとそこにいたのは、金髪で紺色の制服を着た若い見張りの男だ。
竜真はまだまだ身長が低いので見張りの海兵のお腹付近に顔をぶつけてしまったのだ。
そして、お互いに顔を見合わせるが・・・、
「*><+*%$#!」
当然、見張りの男に大声で叫ばれる。
言葉は大京国の言葉ではないので、なんと言ってるかわからない。仲間でも呼んだのだろう。
もろバレだ。
普通に考えれば、バレないほうがおかしいわけだが、まだ小さな竜真には、頭が回らなかった。
「こ、こんにちは!」
竜馬はとりあえず、挨拶をするが、当然、通じるわけがない。
見張りの男は持っていた笛を吹く。
ピーッピーッピーッ、ピーッピーッピーッ、ピーッピーッピーッ、
すぐにバタバタと足音が聞こえ、竜真の目の前の多数の海兵に囲んでしまう。
「##$%&’()’&%$。$%#&’+(- -)/#$”(’」
皆、何かを話しかけるが、当然、異国の言葉、何を言っているのか、さっぱりわからない。
海兵たちも、最初はピリピリと緊張した雰囲気だが、どうやら子供一人とわかると、むしろ、どうすればいいのかと、扱いに困るような雰囲気になってきた。
そんなとき、海兵たちが突如、道を開けると、青い高級そうなローブのまとった初老の兵士が歩いてきた。
他の海兵とは上級感が出ていて、明らかに雰囲気が違う。
青いロープを着た初老の兵士はゆっくりと竜真のところまで近づくと、しゃがんで背丈のまだ小さな竜真と目線を合わせた。齢にして六十ぐらいだろうか、竜真の目を見つめ、そのおじさんは、そっと話しかける。
「こんにちは。私の言葉はわかるかな?」
おじさんの言葉は流暢な大京国の言葉だ。竜真にとっては一安心だろう。
「はい。わかります!」
「君は、何をしにここに来たのかな?」
「黒船を見にきました。」
「どうやってここまで来たんだ?」
「船を漕いできました。」
「なに、ではこの船を見たくて、たった一人でここまで来たのか。」
「はい、そうです。」
「ふむ。」
青いローブのおじさんは竜真を舐め回すように見ながら、まわりを一周する。怪しんでいるのだろうか。
「わははは、面白い!ならば、儂が船を案内してやろう。」