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34天音との再びの手合わせ


 その場は一度解散となった。下女の案内で古京城を後にしたが、すでに遅い時間であるため、葵も竜真と天音さんとともに道場に向かって一泊することになった。


 古京城を出たころには、すでに西の空にまだ赤紫色が残っていたが、すでに真っ暗だ。

 三人は道場の前まで来た。


 夜ということもあり、やや肌寒い。かがり火の光が葵の横顔を照らす。

 竜真は前から思っていたが、葵はかなり美人だ。火に照らし出された葵の横顔が美しい。


「何よ。」


 ずっと、葵の顔を見ていたのがバレた。


「い、いや、別に。さて、行きましょう。」


 道場の扉を空ける。夜遅くなったためか、いつもは自主練習している門下生たちは誰もいない。


「あの、天音さん、今から手合わせをお願いできませんか?」


 竜真本人もよくわからないが、なんだか無性に手合わせをしたくなった。

 バランタインに行くこと、天音さんが実は武帝だったと聞かされたこと、どれも現実味が欠けている。

 そんなことを聞かされて、なんかむしゃくしゃした気分だったのか、突然に天音に手合わせお願いしたくなった。


 天音さんは何も言わずに頷き、木刀を手に取る。竜真も木刀を手に取り、天音さんと対峙する。


 気を集中させ、相手を見つめる。

 全身には感じたことがないような寒気を感じるが、この体全体から感じる危険信号こそ、大京国 武帝であり、そして、大東一刀流 皆伝、天音。

 柚多さんと手合わせすることはあったが、明らかに相手から感じ取れる気の迫力が違う。目の前に立つだけで、目の前の相手が自分の力量のはるか上であることが伺える。


 以前、天音と手合わせし、察知能力で攻撃を読み取っても、以前は速度に体がまったく追いつかなかった。

 だが、今は察知能力も向上し、さらに剣術も向上した。それでも、いざ、対峙すると、目の前の相手が凍てつくの氷壁のごとく、立ちふさがるように見えた。


 まず、冷静になって次の攻撃がどこから来るかを判断するが、天音からの動きはまだない。


「うぉーーーー!」


 ゆすりを与えるため、掛け声と共に、竜真自ら一直線に突きを狙いにいく。

 だが、当然のごとく躱される。まるで、流水のごとく。気づけばいつの間にか、背後を取られるが、そこは察知で完全に予測し、振り返りって木刀ではじき返す。


 だが、天音は瞬時に視界から消えた。

 そして、次の察知。背後上空からの面打ち。

 いつもなら、察知しても、体が追いつけず、間に合わない。だが、今は違う。

 確実に攻撃を捉えてはじき、はじいた瞬間に生じるを隙を狙って攻に転じる。

 それは、確かに天音を捉えてものだが、一瞬のうちに天音は視界から消える。

 すぐに右側面からの横薙ぎを察知して、竜真が木刀で受けとめ、すぐさま、次の察知を行う。

 次は背後、すぐに振り返りざまに攻撃を弾きつつ、その隙を狙い、懐に攻め入るが、すでに天音は視界にはおらず、側面から天音からの攻撃と、剣戟を受け続ける。


 竜真は、天音からの剣戟をはじき返したところで、指先に気を集中させる。

 指先が淡く光り始める。

 天音からの激しい連撃も一瞬だが止まった。竜真は、そのわずかな一瞬の隙を逃さない。竜真はまだ魔術を使うことは出来ない。だが、気を集中させる程度であればなんとか出来た。気を集中することで、魔術を発動させると見せかけて天音を牽制させて隙を作らせた。


 だが、結果としては天音には全く通用しなかった。

 わずかに空いた隙を突き、その懐に潜り込んだはずだったが、直後に背後から氷壁とも思える大きな冷気を察知した。天音はわざと懐に潜り込ませて、その背後をとったのだ。


 とてつもなく素早い身の振り、天音こそができる脅威の素早さだ。

 竜真も負けてはいない。瞬時に身を翻し、防御態勢を取る。強烈な一撃を何とか受け止め、次に攻撃を察知して、瞬時に防御する。


 このやり取りが連続して続く。目にも見えない速さで攻をなす天音と、一方的に防となる竜真。激しく木刀が撃ち合う音が、道場内に鳴り響く。


 一進一退の攻防の最中に、葵が一喝する。


「竜真、とっととやっちまいなさいよ!」


 葵から一喝を受けて、渾身の一撃を繰り出す竜真。だが、天音に受け流され、背後を狙われる。

 背後から攻撃が来ることは察知できる。だが、体が付いていけない。体力を消耗して、体が瞬間的に反応できない。かろうじて、刀身で受けるが、息が切れる。


 だが、意外な形で決着はついた。

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