31竜真を救った者
工事中につき話数が変わってます。すいません。
「才蔵さん、命令違反です。」
声を発したのはいったい誰だろうか。
今、ここにいるのは、竜真、葵、黒装束の敵の頭と、黒装束の敵たちのはずだった。
ただ、どこか聞き覚えのある声が、その現場に響いた。才蔵というのは敵の頭の名前か。
葵は、声の方向へ顔を向けると、一人の女性が立っていた。
着物に背が高く、茶色で長い髪を後ろでまとめていて、そのうなじが美しい。
葵はふと気づいた。先日、古京で会った人とよく似た姿。竜真の剣術道場の関係の人で、たしか、天音とかいう人。
「そのまま治療を続けてください。」
天音に似た女性がそのように話す。
「あ、天音・・・?、なぜ、あんたが・・・。」
やはり、間違いない。あのとき、古京で出会った竜真と一緒にいた人、「天音」だ。
天音は、声をかけられても無表情のまま、抜刀して才蔵の刀を受け続ける。
葵は、いろいろと思うことはあるが、今は竜真の治療に専念する。
み寄る。
「トメ様の命令は情報収集です。」
「ふん、最近入った新入りが・・・。誰が新入りの命令など・・・」
「あたしの命令ではありません。トメ様の命令です。」
「んだと。」
天音は冷静に才蔵の言葉を返す。
才蔵は天音に受け止められていた刀を払い、再度、天音へと向ける。
が、その刹那のあとに、天音は視界から消え、才蔵の背後から刀の刃を才蔵の首筋へと当てた。
天音は才蔵の耳元で、冷静に囁く。
「命令違反です。」
「チッ。どこぞの馬の骨か知らぬが、うまくトメ様に取り入りおって。」
才蔵は一度身を翻して、天音から離れる。ところが、そこにいたはずの天音はいなくなっていた。
才蔵は首筋に再び冷たい感覚を感じ取り、ふと、横目で見ると、再び背後を取られていた。天音の刀が首筋に当たっている。
天音は再び無表情のまま囁く。
「才蔵さん。命令違反ですよ。」
声調はまったく変わらず、冷静な声で、無表情で通告する。
「ちっ、くそが・・・撤収だ。」
才蔵は刀をしまう。他の黒装束たちもすぐに撤収を開始した。
葵は、まだ再生の魔法リジェネを継続していた。竜真の体に空いていた穴は完全に塞がり、血も止まっていた。
天音はそんな葵のところへと近づき、様子を確認する。
突然、才蔵とかいう敵に襲われ、竜真が死にそうになり、突然、天音が現れた。しかも、天音は竜真の道場の関係者だ。単なる偶然なのか。状況がまったく呑み込めない。
「危なかったところを助けていただいたのは感謝します。ですが・・・教えて下さい。あなたは、何者ですか。才蔵とかいう人と黒装束の隠密は何者なんですか。なんで、竜真がこんな目になるの。」
「・・・。」
天音は相変わらず無表情で何も答えない。その代わり、ぼそっと一言をつぶやいた。
「城へ・・・。」
「城?古京城のこと?」