1黒船来航
ここは大京国という小さな島国の千砂ノ町という小さな町。
そこにある日、あの黒船がやってきた。
それは小さな千砂ノ町にとっては、歴史的な大事件。
千砂ノ町の住民たちは初めて見る光景なに、それはもう皆が、驚き、恐怖し、騒ぎ、国中が大混乱となった。
そして、国の住人たちはその船を黒船と呼んだ。
実は、この黒船、大京国のはるか大洋を隔てた国、バランタイン国からの船だったのだ。
バランタインでは近年技術水準が向上し、船の航行能力が大幅に向上したことで、大洋を横断できるようになり、新たな交易を求めて、この国へとやってきたというわけだ。
「乗ってみたい・・・。」
黒船騒ぎでざわつく港町の片隅で、黒船が沖合に停泊している風景を前にしながら、良からぬことをぽつりとつぶやく子供がいた。
この物語の主人公――竜真だ。
気が付けば、徐々に日が傾き始める時間となるが、ついに日没になり暗くなると、竜真は、わずか10歳の子供とは思えぬ、行動に移すのだ。
港に行き、放置された小さな漁船を確保する。
そう、黒船に興味をもった竜真は、黒船に乗り込もうとしたのだ。
そして、手で櫂をこぎながらも、ついに、その黒船へ潜入する。
こうして、竜真十歳の小さな冒険が始まったのだった。