表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/142

14竜真、弟子になる

「弟子よ。飯の準備はまだかね?」


 葵は椅子にふんぞり返りながら、ここぞとばかりに、弟子を使い走りにしていた。葵は、竜真を弟子として認定したのだ。


「ただいま、お持ちします。」


 と言って、竜真が準備するのは、葵から指示された保存食が入っているというツボ。中みると・・・う~ん、何というか、ほのかに臭みのあるぐちゃぐちゃしたものが入ってる。食べられるのだろうか。いや、ご主人様が保存食というので、食べられるはず。


 そんな感じで、早速、葵の奴隷、というか、弟子として夕食の準備を進める。


「えーと、その葵様、魔術の修業はいつからやりましょうか。」

「手を休めるでないぞよ。では、早速、明日から修業と行きますか。」


 こんな感じで葵が自らが師匠となり、一から魔術の手ほどきをしてもらえることになった。


「ところで、あんたは、古京の大東道場へ剣術修行に来たのではないの?そちらはどうするの?」


 それは竜真が今一番心配していたことだ。なにせ、大東道場に入門の件ですでに文を出している。

 ところが、その剣術修行へ向かう途中、異端者として捕まり、牢獄から脱走、さらに顔も見られ、とても剣術修行どころではない。


「剣術修行は、脱走の件で、今は古京には行けないですしね。」


 だが、ここで葵がまさかの発言をする。


「あなた知らないのね。顔も見られているけど、牢屋敷の役人たちは似顔絵で手配をかけるのよ。大抵、似顔絵が下手クソだから、バレないわよ。もし、言われても、『よく間違われるんです。』とか言ってれば、問題なしよ!それに大東道場の門下生となるのでしょ。大東道場の門下生と言えば、逃してくれるわよ。」


 衝撃だ。本当ですかと。

 あんだけ騒ぎを起こして、古京へ戻っても大丈夫だと、葵は言う。竜真には、そんな度胸は持ち合わせてない。


「どちらにしても、今日はボロボロだけど、隣の神社の社の中に泊まるといいわ。かと言って、毎日、そこに泊まるわけにもいかないでしょ。」


 えっ、ここの洞窟の中に泊まらせてくるのでは。初夏とはいえど、夜になれば肌寒く、風が吹けば凍えそうになる。あのボロボロの神社の社では、風をしのげそうにない。意外と洞窟の中は、気温が安定していて暖かい。


「えっ、師匠、ここに泊まらせてくれるの・・・。」


 と言い切る前に葵から言われる。


「あたし、年端もいかない女子なんですけどー。」


 はい、そうですね。竜真は今夜が凍えそうになる覚悟を決めながらも、テーブルの上に本日の夕食を準備するのだった。

 意外にも夕食はうまかった。すぐ近くにミカンの木が生えており、そこからもぎ取ったミカンと、例のツボの保存食だ。

 見た目こそ、その、あれであるが、葵が言うには、魚介物を腐らなように漬けた物らしい。古京付近の漁師たちの間では割と知名度があるらしく、日持ちするので、古京に行った際には、かならず仕入れ、このあたりの農夫や商店に売っているという。さすが、商人の娘だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ